■ひろたりあん通信バックナンバー
▼2004年3月号  
夢の吹く丘 〜都筑の丘のすばらしき人々〜
■伊吹 吾郎さん
俳優
 「この紋所が目に入らぬか!」
ご存じ国民的時代劇である「水戸黄門」の決めゼリフ。「格さん」と言えばこの御方、伊吹吾郎さんです。
 小学生の頃からの時代劇ファンである私にとっては、印籠を見せられた悪代官のように「ははーっ」とひれ伏すほど、畏れ多い俳優さんであらせられます。その伊吹さんに今回、失礼にもインタビューをお願いしました。

大河ドラマ
 伊吹さんは現在あざみ野に奥様と二人で住まわれています。 

 「もうかれこれ6、7年になるかな。水戸黄門に出ていた頃は、17年間ほとんど京都だったからね、だから、この界隈を知るようになったのはここ三年位だね。北海道の出身なので、ゴミゴミした都会が合わないんですよ。青葉区は自然も多いし、人間らしさが残ってますね」

  三代目格さんを17年間演じられて、そのイメージが強い伊吹さんですが、今までに五本の大河ドラマにも出演されています。

『新・平家物語(47年)』(源)鎮西八郎為朝や『徳川家康(58年)』の加藤清正と言った豪勇無双な武将の役が伊吹さんのイメージに合っているように思えるのですが,、ご本人としては、どの役が印象に残ってい るのでしょう?

  「初めて出た(樅の木は残った・45年)の伊東七十郎(主人公原田甲斐の無二の親友)の役はやはり印象に残っているんだけどね。役柄的には(国盗り物語・48年)の細川幽斎の方 かな。面白さと言う意味では演じていて楽しかったね」

 現在放映中の大河ドラマ「新撰組!」にこの3月から伊吹さんが登場されます。最近の大河は、若い役者さんやタレントが多くキャスティングされていて、昔からの大河ファンからは不満 や批判の声をよく耳にします。伊吹さんのようなベテランから見て、今回共演される若い役者さんはどのように映っているのでしょう?

「NHKの大河ドラマと言うのは、役者さんにとってはひとつの大きな登竜門と言うか、名誉なんだよね。若い人も役が決まったときから一人一人が自覚しているんですよ。だから非常に一生懸命です。セリフなんかもきっちり覚えてくるしね。NGも一度も出さない。大したもんだよ」

 確かに、そういった若い役者さんがこれからの大河、いや日本の時代劇を担っていくわけです。大河ファンの皆さん、もどかしい所も多々あるでしょうが、暖かく見守っていきましょう。

「ただね、時代劇には時代劇の所作(しょさ)、時代劇の喋り方、こういったものがあるんです。例えば、責任を取るとは言わない。責めを負う。どのような理由(りゆう)と言っちゃいけない。どのような理由(わけ)とかね。こう言った知識を若い人は知らないから、教えてあげなくちゃいけない」

  そんな若い役者の多い中に颯爽と登場するのが、伊吹さん演じる「粕谷新五郎」。近藤勇、土方歳三らと共に浪士組に参加する浪士組では芹沢鴨も一目置くという年配の剣客の役どころです。(格さんと同じ水戸出身というのが面白い。因みに黄門様と格さんが編纂した「大日本史」は後に幕末の志士達に大きな影響を与えました。)

 この号が発行される日には、お茶の間に二度目の登場となるはずです。伊吹さんが加わることでドラマ自体が引き締まるのではないでしょうか。

偉大な監督との出会い
 昭和44年、当時少年マガジンに連載されて「巨人の星」とともに人気を呼んだ劇画「無用ノ介」(さいとうたかお原作)がドラマ化されました。劇画のテレビドラマ化も初めてなら、時代劇初のカラー作品と言うことでも記念すべき作品です。主題歌は美空ひばりさんが歌っていました。伊吹さんは一万人の書類選考と100人を超す面接を勝ち抜いてオーディションで選ばれ、主役としてデビューしたのです。
   (平成16年3月現在、 「無用ノ介」はCSデジタル放送で放映中です)

  「大学時代に役者をやってみようと思ったのがきっかけでね。東宝のニューフェースの試験を受け、その後、6ヶ月の養成期間。最初は舞台志望だったんだけど舞台じゃ食っていけないんでね。テレビに移って、お昼のメロドラマとか特別機動捜査隊とかのチョイ役もやりました。そして、44年に無用ノ介でデビューしたんですよ」

 この頃、無用ノ介のロケで麻生区の王禅寺にはよく来られていたそうです。

 「飢餓海峡」や「宮本武蔵シリーズ」で有名な内田吐夢監督がこの無用ノ介でテレビ初監修をされました。

  「内田監督と出会ったことは僕にとっては宝ですね。いろんな事を教わりました。その後の役者として、まさにラッキーでした」

  「仁義なき戦い」の深作欣二監督も名監督だったと伊吹さんは振り返ります。「よ〜しカット!OK!素晴らしい。でも微妙に違っているんだな〜。もう一回やってみようか(笑)深作さんは役者を絶対に傷つけない。人の使い方に長けているんだね。ああいう監督にもっと長生きしてもらって、 まだまだ映画を作り続けて欲しかったね」

  テレビの時代劇も最近はグッと減ってきました。

  「日本の文化でもあるし、皆さんに時代劇をもっと知って欲しいね。知れば知るほど面白くなる。役作りの深みって言うのかな。作る方も演る方も夢がある。無くなって欲しくないね。最近はテレビもバラエティばかりで、人を馬鹿にして笑ったり、怒ったり、いかに日本が幸せかってことだね」

実に寂しいかぎりです。

ギターの名手
 
「これからは舞台を多くやってみたいと思ってます。僕は舞台もすごく好きですしね。映像はあとになって反響がくるけど、舞台は演じていてすぐにお客さんの反応がある。それは楽しいよ」

 去年、一昨年とミュージカルにも初めて挑戦されました(キス・ミー・ケイト)。音楽と言えば、伊吹さんはフラメンコギターも弾かれます。テレビで拝聴しましたが、哀愁の漂う素晴らしい演奏に感動しました。

  堂々とした風格、一見こわもての印象を受けますが、ユーモアがあって、本当に気さくな方でした。NHKの収録後でお疲れにもかかわらず、快くインタビューに応じていただき、本当に有り難うございました。
                                               (宮澤)

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