■ひろたりあん通信バックナンバー
 ▼2004年10月号 
地名推理ファイル歴史探偵 高丸の地名推理ファイル」
ファイル12 鴨志田(後編) 

いっちょ、カモろうぜ!
 川面を泳ぐ鳥を見てカワモからカモの名が付いたという説は確かにある。また、亀と同じように鴨も「神」の転だとも言われている。鴨志田は「神の下」つまり、神社の下の集落を表す。古代には占いに使われ、長寿の象徴として神聖視された亀が神になるのは分かりマンネン。せやけど、神様をカモにするのはどうだろうか?

 1973年のアカデミー賞受賞作、ポール・ニューマン主演の映画に「スティング」と言うのがあった。イカサマ詐欺師の話だが、この映画のキャッチコピーは「いっちょ、カモろうぜ!」だ。ギャンブルや詐欺などで相手を食いものにすることをカモると言うが、昔から食用にされている野生の鳥類の中で、鴨が一番捕まえやすいところから来ていると言う。また、タイ語のカモーイ(盗む・泥棒)の訳が(金をまきあげられた)と、逆の意味になったのだと言う話も耳にした。

カモイはカムイ
 全国に分布する鴨地名だが、同じ鶴見川流域には「鴨居」がある。日本家屋の引き戸、ふすま、障子などを取り付けるための溝のついた横木を鴨居と言うが、これは神社の鳥居と同じ意味があるそうだ。鳥居の語源については横木の上に鳥が止まっていたから、人が「通り入る」から、など諸説あって定かではない。鳥から鴨になったのは、水鳥である鴨が木造建築にたいする(火除け)の願いが込められているそうだ。

 いずれにしても、地名の鴨居とどう結びつくのかまったく分からない。
 カモイの地名を地図ソフトで検索してみると、北海道に「神威」と書いてカモイと言う地名が見つかった。(おっ、神と書いてカモと読むのか!でも待てよ。北海道だから、これはアイヌ語のカムイだろう・・・)積丹半島には神威岬があるが、こちらはカムイと読む、アイヌ語の(カムイ・エトゥ=神の鼻または嘴で端の意味)。また、旭川の神居古潭(カムイ・コタン=神の集落)は神が居る所である。

 三浦半島の横須賀市にも鴨居と言う町がある。浦賀から観音崎に向う途中の港町で、このカモイもアイヌ語(カムイ)ではないかと言われている。

 前回のウタリにつづき、またまたアイヌ語登場である。東北や北海道以外のアイヌ語地名には賛否両論、意見が分かれるところだが、アイヌ民族と沖縄の人々との遺伝的近縁性や文化、価値観の相似性を考えると、アイヌ民族が日本列島の先住民だった可能性は否定できない。

神のゆりかご
 文字を持たないアイヌ民族には「ユーカラ」と言う叙事詩(神話や英雄物語。節をつけて歌う物語と言うよりも詞曲に近い)が伝えられている。金成マツと言うアイヌの夫人が書き表し、アイヌ語研究の第一人者である言語学者の金田一京助が訳したものだ。

 その「ユーカラ」の中にシンタと言う言葉がある。アイヌ語で「ゆりかご」の意味だが、ユーカラでは、カムイモシリ(神の世界)からアイヌモシリ(人間世界)へカンナカムイ(雷神・竜神)がシンタ(空を飛ぶ乗り物)に乗って降りてくると描かれている。(まさにUFO!カンナカムイは宇宙人か?)

 もう、お解りだろう。カムイが乗るシンタ。カムイシンタ、カモイシンタ、カモシンタ、カモシタ。鴨志田はUFOの発着基地だったのである!(そんなオチかよ〜!)

鴨族と金山衆
 冗談はさておき、カモ地名は鴨、賀茂、加茂、と表記されるが、「葵祭り」で有名な京都の賀茂神社に由来するものが多い。(鴨川の上流を上賀茂、下流を下鴨、二つあわせて賀茂神社)下鴨神社の祭神である賀茂建角身命(かものたけつぬみ)は神武天皇が大和に入るときに熊野を道案内したと言われる人物で、別名を「八咫烏(やたがらす)」。日本サッカー協会のシンボルマークでお馴染み三本足のカラスなのです。

 烏が鴨とは奇怪だが、八咫烏は太陽神の使いと言うことから、鴨はやはり神と同義なのではないだろうか。もしかすると鴨一族は先住民アイヌの神かも知れない。(ちなみにこの八咫烏の末裔と言われているのが、鎌倉初期の歌人、鴨長明であり、江戸時代の国学者、賀茂真淵である)

 さて、鴨が神なら志田は何か。シダは志田、信田、志多、志段などと全国に分布する。シダク(荒れる)やシダル(垂れ下がる)の意味があるそうだが、羊歯類の植物の意味も考えられる。シダは金山草とも言われ、金鉱脈を探す目印であった。武田信玄の金山衆の旗印が「ムカデ」だったのは、シダがムカデに似ているからだと言われている。鴨族には川から砂鉄や砂金を採る一族だったとの説もあり、このシダの意味は非常に興味深い。

因みに、ご存知「徳川家康」は三河の国鴨郷の松平出身であるが、

 甲神社の拝殿で手を合わせながら、この珍しい苗字の鴨志田一族の謎に思いを馳せる。と、それまで晴れていた空が、一転にわかにかき曇り、雷鳴が轟きわたった。寺家町の山の向こう、鶴見川の上空からカンナカムイがシンタに乗って降りてくるのが見えた。


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