■ひろたりあん通信バックナンバー
▼2004年12月号
地名推理ファイル歴史探偵 高丸の地名推理ファイル」
■ファイル13 大場町(後編)

大河ファンの嘆き
「新選組!」が最終回をむかえた。視聴率もあまり芳しくなかったようだが、私は結構気に入って毎週楽しみにしていた。取材で出演者の方と関わりを持ったせいだけでなく、演出も配役も中々面白く、若干「それは無いだろう」と思う場面もあったが、それなりに良かったと思う。 

 しか〜し。来年の大河は「義経」である。「何度目だ?義経」鎌倉時代を描くのに他の人物は考えられないものか。もっとも、アイドルタレントを主役に起用することが大前提にあるらしいから仕方ないが「これでは、ますます大河ファンが離れていってしまうぞ!NHK」

「熱くなっていますね。来年の大河ダメですか?」とSさん。

「いや、まだ見てないから何とも言えないですけど、大体想像つきますね」

「本当はお前、タッキー(義経役)が嫌いなんだろう?」ニヤニヤしながらヒロシが言う。

「アホか。誰がやっても一緒だよ」

「じゃあ、宮澤さんなら、どんなドラマにしたいですか?」

「そうですね。鎌倉幕府の成立をあんまり源平の合戦や義経の悲劇だけで描いて欲しくないですね。関東武士団の一人一人を、オムニバスで取り上げるなんて面白いと思うけどなあ」

「ほぉ、オムニバス。数種類の話をまとめて構成するわけですね」

「ええ、畠山重忠を始め、大庭兄弟、梶原景時など、今まで脇役だった人の視線から武士政権の誕生を描く。あれは元々、源氏と平家の権力争いと言うよりも、関東武士団の独立戦争。言ってみればクーデターですから」

「そうなんですか?」

関東武士団と大庭氏の先祖
「僕の『地名推理』で何度も登場した畠山氏や、今回取り上げている大庭氏、頼朝の奥さん政子の北条氏、和田氏や三浦氏といった、頼朝を担いで平氏を破った一族の、ほとんどが平氏なんですよ」

「ほぉ〜」

「つまり、関東八平氏や武蔵七党の流れを組む武蔵・相模の豪族が、自分たちの開発した領地は自分たちのモノ。中央になんで搾取されなきゃいけないんだ!
って反乱を起こしたんですね。全てじゃないですけど」

「なるほど、一生懸命自分たちで耕した土地なのに、何にもしていないお公家さん達に、税を払うのが馬鹿馬鹿しくなったってわけかぁ」

「一生懸命は本来、一所懸命なんですよ。平安時代の貴族や寺社が私的に領有した土地を、武士が管理して守ってきたんですけど、守るために蓄えた資金や軍事力で、貴族に使われてきた武士が次第に力をつけていったんです」

「荘園というヤツですね」

「大庭氏の先祖は桓武平氏の流れをくむ土豪で、鎌倉権五郎景政(ごんごろうかげまさ)という人がいます」

「ああ、歌舞伎十八番の『暫(しばらく)』の主人公」

「そうです。義経と対立した梶原景時の先祖でもあるんですけど。彼は相模川から藤沢にかけての自分が開墾した土地を、伊勢神宮に寄進したんです。こういった土地を御厨(みくりや)と言います。厨(くりや)とは神様に供える食物を調理する所のことで、伊勢神宮の御厨だから神の前。つまりオオバ、大庭御厨。だから大庭という苗字を名乗ったんです」

神の前は稲荷前
「それなら、大場町はどうなの?大場御厨の可能性は?」

「無いですね。大場町の場合にはそういった記述はありません。神の前と言うなら、古墳のある『稲荷前』の字名がやはり気になりますね」

「稲荷神社の前っていう意味だよね」

「稲荷神社は全国で約3万2千社、4万社の八幡神社と合わせて日本の神社の半分を占めています」

「農家の庭や会社のビルの屋上にも、お稲荷さんがあるよね。それも含めたらすごい数だ」

「そうなんです。そのお稲荷さんの総本社は…。どこにあるか知ってるかヒロシ?」

「おぉ!いきなり振るなよ。知ってるよ!そんなの。当たり前田のクラッカー(古)。俺は男前だけどイッシッシ。ズバリ、愛知の豊川稲荷!」

「ブーッ。京都の伏見稲荷だよ」

「そうか〜?だけど豊川稲荷の門前のいなり寿司は旨いぜ。特にきしめんセットは最高」

「確かに旨い!いなり寿司の発祥の地だと言われているからな。(参拝のおりにはぜひ。関係者ではありませんけど) でも、日本三大稲荷のひとつ「豊川稲荷」は神社じゃなくて、正式には円福山妙厳寺と言う曹洞宗のお寺なんだよ。」

「あっ、お寺なんですか。稲荷って神社だけじゃないんだ。でも農耕の神様でしょ?」

「稲荷は元々、稲生(いねなり)。稲の生長を願った農耕の神様ですって、どこの稲荷神社でも書いているけど、元々は伊奈利なんですよ。だからイナリという言葉が先にあって、それに好字二字を当てて稲荷にしたんでしょうね。稲荷神社では毎年十一月に『火焚祭り(ふいご祭り)』が行われていて、鍛冶師や鋳物師。製鉄会社の関係者も集まることから(鋳成り)で製鉄の神様という説もあるんです」
                                               つづく


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