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 ☆Topics-2005年9月
ローマKYOGEN一座公演 「ブラーヴィ!」

「ブラーヴォ!」 「疲れた?」

 舞台を終え、楽屋から出てきたサルバトーレ・マッラさんに声をかけると、「だいじょうぶ」と、日本語で返ってきた。成し遂げた充実感と達成感に笑顔も輝いている。6人の若きイタリア人は完璧に役を演じ、日本人以上に日本人になりきっていた。

 8月号「夢の吹く丘」で紹介した「ローマKYOGEN一座」の公演が九月二十六日(月)、青葉公会堂で上演された。(翻案・演出、早稲田大学国際教養学術院・関根勝教授) 

 一座のメンバーは、ローマ大学ラ・サピエンツァ日本研究科の学生。フランチェスコ・デ・ドミニチスさん、ルーカ・モレッティさん、サルバトーレ・マッラさん、アレッサンドロ・パンドルフィさんの男性四人とシルヴィア・テッローニさん、マリーナ・デ・ニーシさんの女性二人の日本が大好きな六人のイタリア人学生。去年に引き続き二度目の来日公演となる。

 演目の「酔っ払いの仕返し」と「恋の骨折り」は、どちらもシェイクスピアの古典喜劇「十二夜」が下敷きになっている。シェイクスピアといえば「ロミオとジュリエット」や「マクベス」「リア王」など悲劇のイメージが強いのだが、なかなかどうして喜劇も味わいがある。なかでも、「十二夜」は映画にもなった名作。この名作が狂言として、どのように生まれ変わるのか。また、イタリア人の学生が演じる狂言とはどんなものか。興味津々。久しぶりにワクワクしながら開演を待った。

 最初は「酔っ払いの仕返し」舞台には大きな松が描かれた背景(松羽目というそうです)。他には何もありません。そこへ「山城守(やましろのかみ)」と「能登守(のとのかみ)」という二人の酔っ払った武士が登場します。小道具といえば、腰に差した刀と酒瓶だけ。まずは、この二人の酔っ払いの掛け合いに場内は爆笑に包まれた。

 「能登の守」役のルーカさんは、日本のテレビ番組ビートたけしの「風雲たけし城」を観て日本が好きになったというだけに、笑いのツボを心得ている。日本好きはルーカさんだけではない。全員が日本のアニメ大好き人間で、主題歌を空で何曲でも歌えるそうだ(何を隠そう、私もアニメ主題歌なら負けない。機会があったら、カラオケで対決したいものだ)。

 酒盛りをして大騒ぎする三人(女中のかえでも加わる)。そこへ「木下大膳(だいぜん)」という納戸役の真面目な武士が現れ、彼らをのら犬呼ばわりしたあげく、門の外に締め出してしまう。そのことを逆恨みした三人が、大膳に仕返しをしようと企む。

「何か知恵は無いか?」と聞く山城守に「無いことは無い」とかえで。「無いことは無いということは、有るということか?」と能登守。この単純なやりとりも可笑しい。ニセの手紙を使って、大膳が心を寄せる鮎姫の前で恥をかかせて、仕返しは成功するものの、最後に嘘がばれてしまう。

 「お許しくだされ、お許しくだされ」と、謝る三人。「やるまいぞ、やるまいぞ」追う大膳。幕の内に追い込んでいく。ここで拍手・・・と、思いきや。しばらく間が空いて、とまどったような拍手が起こった。実は「やるまいぞ」は狂言の曲を納める決めゼリフだったのだ。狂言に馴染みのないせいか、私も含め、少々拍手のタイミングがずれてしまったようだ。

 「恋の骨折り」は、言ってみればラブコメディ。「鮎姫」に思いを寄せ、結婚したがっている「鈴木大全」と「松山義家」という二人の大名。役立たずの家来「太郎冠者(たろうかじゃ)」。鈴木大全を恋するあまり、男装して大全の家来になった「次郎冠者(じろうかじゃ)」こと椿姫。町の様子が知りたくて百姓に変装して町に出てしまうおてんばな「鮎姫」。個性的なキャラクターが繰り広げる珍騒動。しかし、伏線が効いていて、作品の完成度はこちらの方が断然いい。前作以上に笑わせてくれた。

 「十二夜」に出てくる貴族トービー卿や生真面目な執事マルボーリオなどを、日本の武士社会に置き換え、それぞれのキャラクターの個性が見事に描き出されている。時おりコントのようなギャグが出てくるが、決して下品にならず、狂言の様式も崩していない。まさに西洋と東洋の融合。能の家元に生まれ、イギリスで二十五年を過ごした関根教授ならではなしえない二作品でした。

 関根教授の翻案の見事さもさることながら、何といっても六人の演技だろう。絶妙な間の取り方、足の運び、特にセリフの上手さには驚く。自然でよどみなく、ハッキリと分かりやすい。その完成度の高さにはセリフ回しだけに、大いに舌を巻いた。「もしかして舞台に立っているのはイタリア人じゃなく日本人?」そんな幻惑にかられるほど違和感がない。これが、たった六週間(酔っ払い〜は四週間)という短期間の稽古で完成されたものとは信じ難い。

 残念ながら、このメンバーでの公演は今回限りとのこと。

 しかし、関根教授の夢はつきません。私の大好きなあの名作「欲望という名の電車」を今度は「能」のような「表現」で舞台化するそうです。

 1+1が7や8どころか10、いや100へと、大きく飛躍することを期待します。

「ローマKYOGEN一座」

                                          (宮澤)

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