| ■ひろたりあん通信バックナンバー |
| ▼2005年11月号 |
| 地名推理ファイル歴史探偵 高丸の地名推理ファイル」 |
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■番外編 街道を往く 鎌倉街道 10
「中白根農園」の畑の道を抜けると、そのまま住宅地に入った。住所は旭区白根町。白根の地名は「シラ」は平坦地を表し、「ネ」は「嶺(ミネ)」。つまり、山の上の平坦地だ。中山から上ってきた坂は、ここからゆるやかな下り坂になる。 忌部サミット 「女優の水野真紀が昨年結婚したのは知ってるね」 「あっ、あの後藤ナントカという自民党のイケメン議員でしょ。知ってますよ、ワイドショーで見ました」 「後藤田正純さんね。カミソリ後藤田、この間亡くなった後藤田正晴氏は大叔父にあたる。で、その二人が結婚式をあげたのが徳島県の忌部神社なんだよ」 「へっ、そうなんですか〜」 「あれっ、驚かないね?」 「神社で式をあげるのは、当たり前じゃないですか。お寺だったらビックリするけど。忌部神社だって地元の神社だからでしょ。とっておきってその話ですか?」 「いや、ミーハーの岡ちゃんなら喜ぶかなと思って言ってみただけ。六月に全国各地から忌部の末裔という人たちが集まる(全国忌部サミット)というのが、徳島県で行われたんだけど、県や市、各新聞社が後援するほど大々的なものだったらしいよ」 「そっちのほうが驚き。忌部氏の末裔って、全国にいるんですか?だって古代の・・・ズーッと大昔の一族でしょ?」 「な〜に言ってんだよ。それをいうならライバルの中臣氏。つまり藤原氏なんて、ずーっと歴史の表舞台に立っていて、明治維新以降も、華族として残っているでしょ。総理大臣にもなってるし」 「そうですか?藤原って苗字の総理大臣?いたかな〜?」 「西園寺公望とか、近衛文麿とか。因みに近衛文麿の孫は、君も知っている細川元総理だ。それに藤原は苗字じゃなくて姓氏!天皇から下賜されたものなの。だから藤原氏の末裔に、藤原という苗字の人はいない」 「じゃ、藤原紀香や藤原竜也は?」 「ちが〜う!学校で何習ってたんだよ」 「ふん!藤原氏は学校で習ったかもしれないけど、忌部氏なんて知りませんよ」
「後藤田さんは忌部氏の末裔だという話を聞いたことがある。まっ、忌部氏に限らず、蘇我氏や物部(もののべ)氏。はたまた秦(はた)氏も、その血は後世に受け継がれて、今もその末裔はどこかにいるはずさ」
下ってきた道は、T字路にぶつかった。右には旭台中央公園がある。左折して10メートルくらいでバス通りに出る。東急ストアが旭台のバス停留所になっている。つまり、右折してバス通りに沿って進めば、黙っていても鶴ヶ峰の駅まで行けるという寸法だ。 「忌部サミットって、ただ忌部氏の末裔が集まるだけの大会なんですか?」 「地域の発展、活性化や観光産業の振興を目的とはしているんだけど、阿波忌部の歴史を研究発表することによって、住民が郷土に愛着や誇りを持ってもらおうという意味もあるんだね」
「地元の歴史に誇りを持てるというのはいいですね。今まで歩いてきた住宅街やこのバス通りもそうですけど、義経や弁慶なんていう鎧武者が大勢馬で駆けていったなんて、想像するだけでワクワクしますもんね。車に乗っている人も住んでいる人も誰も気づかないけど、歴史は繋がっているんだなって感じますよ」 「おおっ、いいこと言うね〜。だけど現実はね・・・。住んでいる人にとっては歴史や文化なんて二の次なのさ。阿波忌部もそう。さっき話した阿波忌部の拠点だった麻植郡(おえぐん)という地名だって消されてしまったからね」 麻の価値 「住民の意見を無視するなんて…、ただ、オエというのがいやだったんじゃないですか〜。いや、いや、冗談ですよ〜。川崎にも麻生とかありますよね。やっぱり麻を植えていたんですかね」 「だから、千葉の安房にいた忌部氏が、海を渡って鶴見川流域を北上して、落ち着いた土地に麻を植えた。それが麻生で、杉山神社はその名残だという説があるんだ」 「あっ、そこにいくんですか」 「あくまでも説だよ。麻生の場合(サ)という鉄を表す古語に(ア)という接頭語をつけた。製鉄関連の地名だという説もあるから」 「麻じゃなくて鉄・・・?またですか?好きですね鉄が・・・」 「好きなんじゃなくて、歴史を調べていくとブチ当るのよ。忌部氏が麻でなく鉄を求めて鶴見川を遡ったなら、剱神社の神官が忌部氏だったということにも結びつくだろう?」 「なるほど。でも仮説なんでしょ?思い込んだら何とでも解釈できますからね」 「当たり前さ。だから歴史は面白いんだよ♪」 「エヘヘッ、なんとなく分かってきました」 「鉄の話はともかく、麻っていうのはスゴイんだぜ。繊維は衣服や丈夫な縄になり、種は油として食用や灯油に、茎は上質な紙や建材に、といった具合に古代から昭和の初めまで日本では重要な産業だったんだ。それに生命力が強いから無農薬で環境に優しいときたもんだ。石油が無くなりつつあるこれからの時代、麻は産業的利用価値の高い植物なんだよ」 「でも、麻って大麻でしょ。麻薬じゃなかったですか?」 「大麻は麻薬じゃないよ。戦後規制されたのには理由があってね・・・石油資本の・・・、あっ、郵便局があるから、ここを左折だ」 バス通りを下ってくると、白根小学校入り口のT字路の交差点に出た。右に郵便局がある。バスの路線は左に向う。 つづく
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