| ■ひろたりあん通信バックナンバー |
| ▼2006年3月号 |
| 地名推理ファイル歴史探偵 高丸の地名推理ファイル」 |
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■番外編 街道を往く 鎌倉街道 14
保土ヶ谷バイパスを渡り、細い古道を下って、寿々○園芸の看板を左折。南本宿自治会の掲示板の前を通って、まっすぐ進むとバス通りに出る。出るとすぐに「桐ヶ作下」というバス停がある。そのバス通りを横断して、そのまま弁当屋さんの路地を入っていく。道は左方向にゆるやかな上り坂。右側は谷になっている。 ヒョットコの秘密 「ホドは火の床、または火の処で、竃(かまど)や囲炉裏(いろり)の火を焚く所もそう呼ぶんだ。それと、火といえば踏鞴(タタラ)製鉄。砂鉄を溶かす炉のことも火処(ほど)という」 「出た!ひさびさの産鉄族。わかった!保土ヶ谷のホドは、そのタタラ製鉄のあった谷だと言いたいんですね?」 「うんにゃ、そんなこと一言も言ってないだろ。ただ、ホドが出てきたから、ついでに説明しただけ」 「な〜んだ、つまんない」
「ばっかだな〜。ここからがつまるんだよ。そのホド穴から砂鉄の熔け具合を見る責任者のことを村の下と書いて(むらげ)というんだ。ま、工場長といえばいいかな。その人は、いつも片目でホド穴を覗くから、片方の目が悪くなってしまう。一種の職業病だね…」 「職業病ねぇ?それで?」 「神社のお神楽なんかで、ヒョットコのお面をつけて踊るだろ。あのヒョットコのお面は、片方の目が小さいんだよ。岡ちゃん知ってた?」 「えっ、そう?そうだったかな〜?じゃあ、ヒョットコは、その工場長のことだっていうんですか?」 「そのとおり。ヒョットコは火を扱う火男なのさ」 「火男?ひおとこ。ひよとこ。ひょっとこ。ウヒョ〜!なるほど!そういうことですか」 「まだある。火を燃やすために炉に空気を送り込む装置のことを鞴(ふいご)というんだけど、タタラは(踏む鞴)と書く。ようするにタタラとは、本来大きな送風器のことなんだ。ほら『もののけ姫』というアニメの中で女の人たちが紐にぶら下がって板を踏んでいただろう?」 「…そ、そうでした…っけ?」 「タタラを踏むという言葉があるだろ。勢いあまってつんのめること。足踏みするように…」 「あっ、お芝居とかでありますね。『えいっ!』って切りかかったら、かわされちゃって、オットットって…。えっ、あのタタラはこのタタラなんですか?」 「タタラを踏む人たちのことを番子(ばんこ)と呼ぶ。タタラ製鉄は三日三晩火を燃やしつづけなければいけないから、何人もの番子が交替しながら行う。番子が替わる。だから…」 「おお〜!替わりばんこ。子どもの頃、言われましたね〜」 「他にも、『地団駄を踏む』の(ダダ)も(ジダタラ)からきているんだ。『駄々をこねる』の(ダダ)もそう。タタラ製鉄っていうのは、昔の人々の生活にこんなに影響を与えてんだよ」 「面白いですね〜。でも…ホドホドにしないと、鎌倉街道からドンドン話がずれていっちゃいますよ」 大山道と鎌倉道 (みやした園芸)の看板を右に曲がると、すぐにT字路に出る。突き当たった向こうは、樹木の生い茂った公園だった。 「あっ、ここ。万騎が原の『こども自然公園』じゃないですか」 「なんだよ。岡ちゃん知ってんの?」 「子供の頃よく遊びに来ましたよ。大きな池があって、それから動物園もあるんですよ〜。懐かしいな〜。なるほど、ここに出るんですね」 公園の小さな入り口の所に「鎌倉道と大山道の分れ道」と書かれた案内板があった。
案内板によると、この道を東、つまり今通って来た道を戻れば、今井街道を経て旧東海道の保土ヶ谷宿に通じるとある。反対に西(公園に向かって右)は、大池・長昌寺・現在の東希望ヶ丘小学校を経て、大山の阿不利(あふり・雨降)神社に通じている。つまり大山街道だ。 「鎌倉に通ず、ですって。ちゃんと合ってましたね」 「あったり前だろ!」 「カントリークラブって、ゴルフ場ですよ。その中を通って行くんですか?」 「あのね〜。そんなことしたら危ないだろ。あっちこっちからファ〜ファ〜って、ヘルメットでも被るか?ちゃんと道路があるに決まってんだろ」 「だって、中を通り抜けて、って書いてあったんだもん…。あっ、ちょっとトイレ行ってきます!」 公園のトイレから戻ってきた岡ちゃん。心なしかびっこを引いているような…。 「大丈夫?足痛そうだよ」 「うん。マメができたみたい。でも全然平気!さぁ、頑張って歩きましょう。陽もだいぶかたむいてきたから」 公園の東側の舗装道を南に向かう。ときおり車が行き交うが、さすがに静かだ。公園の敷地からゴルフ場の敷地へ坂道を上っていく。 「この辺りが、旭区から戸塚区の堺になるはずだ。いよいよ、武蔵の国ともお別れだな」 ゴルフ場の南。相模の国の空には真っ赤な夕日が輝いていた。 つづく |