■ひろたりあん通信バックナンバー
▼2006年7月号
地名推理ファイル歴史探偵 高丸の地名推理ファイル」
■番外編 街道を往く 鎌倉街道 18

 川上小学校から下ってきた道は、バス通りの一本手前の路地を左折し、250メートルほど平行して歩き、再びバス通りと合流する。通りには、スナックや焼肉店が軒を連ねている。そのまま左折して、しばらく行くと「秋葉三叉路」というバス停が見えてきた。

On the Radio
 ひょんなことから、若き演歌歌手と一緒に鎌倉道を歩くことになった。彼、千葉山貴公(たかひろ)君は、現在二十七歳。これまでに二枚のCDをリリース。音楽活動のかたわら、伊豆熱海(FM熱海湯河原)と埼玉県入間市(FM茶笛・ちゃっぴーと読む)でラジオのパーソナリティもしている。

 「なるほどラジオのパーソナリティをね〜。その馴れ馴れしさ…い、いや、もとい。人懐っこさと、旺盛な好奇心の理由がわかったよ。それにしても、熱海と埼玉県の入間(いるま)じゃ遠くて大変だね〜」

 「いえいえ。僕なんか大したこと無いですよ。青森の弘前と熱海をかけもちしている女性パーソナリティもいますから」

 「弘前!そりゃすごい。というか、ある意味羨ましい」

 バス通りは左にカーブしながら東海道線の上を秋葉大橋で越える。我々はその手前の信号を右に折れ、下の歩道を進む。

 線路手前の柏尾川を渡ると、右手に「カップヌードル」の大きな看板が見えてきた。日清食品の工場だ。

「なんだか腹減ってきたな〜」

「あっ、だったら線路の向こうに、お蕎麦屋さんがあったはずですよ」

「おっ!蕎麦か。いいね〜」

 東海道本線と横須賀線の線路を跨線橋で渡る。

「高丸さん、階段踏み外さないでくださいね」

「ちょっと待ってよ、そんな歳じゃないから…」

「そういう意味じゃないです。この橋の名前、人道橋っていうんです。つまり、『人道を踏み外しちゃいけねぇよ』ってね(笑)」

「なんじゃそりゃ?」

「すいません。時代劇が好きなもので…つい」

「時代劇?」

「番組でも時代劇の主題歌を紹介するコーナーをやっているんですよ。もうかれこれ200曲くらい紹介したんじゃないですかね〜」

「200曲。それはスゴイ。私も時代劇はうるさいよ〜。そうか。それじゃ、蕎麦でも手繰(たぐ)りながら、その話し聞かせてもらいやしょうか?」

「へぇ、よござんす!」

 線路を越えると、すぐに国道1号線に出る。その道路沿いの蕎麦屋で昼食をとることにした。

★               ★

「いかん、いかん。時代劇の話で盛り上がって、つい長居をしてしまった〜」

「すいません…」

 国道1号線を戸塚駅方面に向かう。柏尾(かしお)のバス停のところに山崎製パンの工場がある。その工場の向かい側、柏尾郵便局の見える路地を左折する。ここから先、曲がりくねった集落を進んでいく。

 この路地が分かりづらい。途中、何度か道に迷い立ち止まる。鎌倉道探索の本はもちろん、地図にもこの集落の細かい路地は描かれていない。とりあえず上柏尾町と柏尾町の境境界線に沿って坂を上っていくことにした。

「あれっ、ここ駐車場ですよ。行き止まりじゃないですか?」

「えっ、嘘?」

だれかが風の中で…
 坂を上りきったところには数軒の民家。奥にはコンクリートに囲まれた駐車場があり、その向こうは鬱蒼とした雑木林で行き止まりになっていた。

「う〜ん…。あっ!そうか!」

「ど、どうしたんですか?急に」

「なるほど、ここだったんだ〜。ほらっ、そこ。出口があるだろ」

「えっ?あっ、本当ですね」

「読者の方からメールで情報をいただいていたんだよ。斜面に建つ集落の急坂を登りつめると、一見、行き止まりのようだが、コンクリート壁の一部が開いていて、そこから木立の中に道が続いているって…」

 まさにその通り、コンクリートの壁は1メートルほど開いていた。その入り口から雑木林の中に足を踏み入れる。

「いま一瞬、ドラエモンの『どこでもドアー』を体験しましたよ。いかにも鎌倉古道っていう感じで、雰囲気ありますね〜」

 千葉山君の言うとおり。人が一人通れるくらいの細い道は、両側の樹木が覆いかぶさるように迫っていて、古道の雰囲気を漂わせている。時代劇の話をしていたせいかもしれないが、別の時代に迷い込んだような不思議な錯覚を覚えた。

「あの木漏れ日の中を渡世人が歩いてきそうですね」

「うん、確かに。と、くれば、木枯らし紋次郎かな。ど〜こかで〜、だ〜れかが〜♪き〜っと、待ぁって〜、いてくれる〜♪」

「雲は焼け、道は乾き〜、陽はいつまでも沈まない〜♪」

「ここ〜ろは、むか〜し死んだ〜♪」

 二人の渡世人は、歌いながら木立の中を歩き出した。

 しかし、時代劇の主人公でいられたのも、わずか数分。百メートルほど行くと、左側にフェンスが現れた。フェンスの向こうは崖状になっていて、その下には、新しい住宅が建ち並んでいる。

 右手に雑木林、左手に住宅地を見ながら、さらに進む。

「ワオッ!高丸さん、見てくださいよ!」

『下永谷市民の森』と書かれた道標のところで、千葉山君が叫んだ。   つづく        


                                                            

  ※情報をお寄せいただいた柴久様、有難うございました。                                                     


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