■ひろたりあん通信バックナンバー
▼2007年11月号
夢の吹く丘 〜都筑の丘のすばらしき人々〜
ささらプロダクション
 代表取締役 小倉 美惠子 さん
  と監督 由井 英(すぐる)さん

オオカミの護符
 ここに一枚の御札がある。「武蔵国 御嶽山 大口真神」の文字、その下に描かれた、牙をむいた一匹の犬のような動物。

 「家の土蔵の扉に貼ってあったんですよ。御嶽講(みたけこう)という講を通して、青梅の御嶽神社からもらって来るということは知っていたんですけど。ただ、御嶽講というものがどういうものであるかってことはまったく知らなかったんです」

 川崎市土橋(つちはし)で生まれ育った小倉美惠子さんは、子供の頃から見慣れた、この御札に興味を魅かれ、土橋で今も続く御嶽講の行事に参加されました。

 「私の村で、少なくとも256年以上続いてきたもので、あの図柄はオオカミだということがわかったんです。これは凄いなと、それで監督に話したら、監督も興味をもってくれて、それでは映像として残しておこうということになったんです」

 ドキュメンタリー映画「オオカミの護符」は、こうして生まれました。

 「ここに住んでいると、どうしても東京の方に目が向きがちなんですけど、
お百姓さんの視点は、山に向かっているんですね。この辺の土地の皆さんて、御嶽講とか、大山講とか、榛名講とか、お山の方に向かって講を組んで、村から人が詣でているんですよ。それは、何だろうなと思った時に、ふと地図を広げてみると、あれあれっと、今まで富士山だったら富士山、大山だったら大山って、独立した一つの山って考えていたんですけど、お山って全部繋がっているんですよ。大山も、御嶽山も、榛名山も、全部大きな山の世界に入っていく入口にあるんですね」

 いわゆる関東大山塊、その大きな山の世界の入口が、人びとに崇められた山々だったのです。大山は雨乞い、榛名山は雹(ひょう)や嵐除けと、関東のお百姓さんは、山を見て暮らしてきたのです。

 「武蔵国とか信濃国とか、各国ごとに御嶽はあるんですよ。国御嶽(くにみたけ)っていうんですけど、大山は相模の国の国御嶽なんです」

 監督の由井さんの話を聞いて納得。かつて、山伝いに日本全国を移動する人々、山の民がいました。オオカミは彼らにとって、最も近い存在だったのです。

 「最終的には、山に暮らしていた人たちの中に、オオカミをものすごく有り難がる信仰があって、それがお札とされて、それが里の人たちにも広まっていったんです。それによって、山の人たちと里の人たちの交流があり、お互い助け合っていたんだなということに行きついたんですよ。結局、その信仰が何であったのかというのは、映画を見てからのお楽しみにしていただきたいんですけど(笑)」

 信仰を広めて歩く「御師(おし)」と里人との交流。鹿の骨を焼いて、そのヒビで天候を占い、その年の作付けに役立てる「太占(ふとまに)作況表」の存在など、映画への興味はつきません。映画は、来年3月「宮前市民館」にて上映されます。

 「当然地元の方々は護符の絵を見ただけで、何かを感じるものがあるでしょう。新しく来た方には、この土地が湛えてるもの、土地の力というものを感じてほしいですね」と監督の由井さん。

秩父とのつながり
 関東各地に残るのは、御嶽講だけではありません。板碑もそうです。

 「オオカミの本拠地・秩父の、ある場所からしか採れない緑泥片岩(りょくでいへんがん)を何故わざわざ取り寄せて供養塔(青石塔婆)にしたのか?どういう経路で川崎や横浜まで来たかは、よく分かっていないんですよ。当時の単なる流行ではなく、秩父を背負った何か因縁のようなものが、この土地にはあるんじゃないかと感じたんですよ」

 ちょうど地名推理の最終回(次ページ)を書き終えたばかりだったので、この話は暗示的でした。しかも、御嶽山の宝物殿には、畠山重忠の「赤糸威大鎧(あかいとおどしのおおよろい)」という国宝の鎧があるとのこと。

 「御嶽の山頂に行くと、筑波山から日光連山、房総から江ノ島まで見えるんです。すごい景観ですよ。頼朝も、武田も、家康も、みんなあの山が欲しかったんでしょうね」

 たぶん、昔は軍事上の要所だったのでしょう。地元を知るには、秩父や御嶽山とのつながりを考える必要があるようです。

 

食が命と絆を支える
 『ささらプロダクション』は、昨年6月に設立されました。

 「ささら」は、鉄(くろがね)や牛込の獅子舞にも使われているように、庶民が伝えてきた古い楽器です。村々を言祝ぎ、神々と人びとの心を繋いで回った芸能者のように、映像制作を通じて、人との出会い、信頼関係を築いていきたいという思いが込められています。プロダクションでは人と人との絆をつなぐ、出会いと学びを育む場として『食を囲んでの上映会』を企画しています。

 「すでに『幻灯しばや』っていう名前を付けているんですけど(笑)芝居のことを芝屋というんですね。昔の村芝居のように、地域の人たちに協力してもらい、一緒に食事を楽しみながら、映画を観る場ですね。映像制作だけでなく、映画を観る場を作りたいと思っています」

 村芝居ではないですが、子どもの頃、近所の公園や神社で行われた野外の上映会を思い出しました。弁当を食べたり、お菓子を食べたり、そのときのワクワクした思いは、映像とともに今でも心に残っています。

 「見終わったあと、アンケート書いてくださいって用紙配るよりは、一緒に食事をしながら意見を聞くほうが率直な言葉が出てくるような気がするんです。地域に根ざした映像をひとつずつ作っていき、地域の皆さんと一緒に、和気あいあいと食事をしながら映画を観る。壮大な夢ですけどね(笑)」

「オオカミの護符」

〜里びとと山びとのあわいに〜

宮前市民館 大ホール

平成20年3月19日(水)

午後6時開場  午後6時半上映開始

個人・法人、協賛金を募ってます。

興味のある方、上映会の希望等

下記にお問合せ下さい。

 

ささらプロダクション

電話 044-982-7233

E-mai  sasala-pro@nifty.com
 


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