「最近、長さんの出番が少ないですね」読者の方から最近よく聞かれる。
私の首を狙って下克上すら企てているという噂のあった彼が「最近スランプなんですよ。
全然書けないんですよ」少しスネたような顔で気弱なことをのたまう。
それなら年がら年中スランプの私の立場はどうなるのだ。そんな彼が久しぶりに企画を提出した。
「市営地下鉄のセンター北駅のそばに、国の史跡にも指定されている遺跡があるんですよ」
そこを取材したいという。「漫才は好きですか?」唐突にそんなことを言う。
「実は同行する原田君との、掛け合い漫才風に記事を仕立ててみたいんですよ」
こういうおかしなことを考え出すのは、ようやく元気が出てきた証拠だろうか。
「面白くない漫才は嫌いだ」そう答えておいたが、アイデア倒れにならないことを祈るばかりだ。
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横浜市は知る人ぞ知る古墳・遺跡の出土地帯である。古き世界を偲ばせる数多くの『証拠』が発掘されており、今なお調査は進んでいる。なかでも港北ニュータウンの大塚・歳勝土遺跡は弥生時代中期の特徴である方形周溝墓と環濠集落が、日本で初めてセットで出てきた歴史的価値の高いものである。そこに着目したひろたりあん通信取材班は本格的な調査を開始した。以下はその忠実な記録である。
長-原田君、よかったな。編集会議でオレたちのアイデアが無事通って。それもこれも会議で熱弁を振るったオレのおかげだぞ。
原田-なにを言ってるんですか。オレたちって、もともとボクのアイデアですよ。それを会議の直前にボクの調べてきた資料をいきなりひったくって。ひどいですよ!
長-コラコラ、そんなに怒るとまた尿酸値が上がるぞ。
原田-怒らせてるのはそっちじゃないですか!
…このとき、原田の尿酸値、脈拍、血圧、いずれも急激に上昇していた。
さて、大塚・歳勝土遺跡は横浜市歴史博物館に隣接しており、入館料を払ってお願いすれば、ガイドボランティアの方が遺跡を案内してくれる。それを聞いた長は、なぜかそわそわしはじめた。この取材のためにいろいろ準備をしてきた原田もまた、興奮を隠しきれなかった。ただ二人の興奮には歴然たる質の相違があった。
長-よし、インタビューはオレにまかせろ。はい、カメラ。
原田-いいですか、方形周溝墓と環濠集落、インタビューするならここを重点的に聞いてくださいよ。
長-なにそれ?オレはこれからガイドさんと愛を語り合うんだよ。
原田-あなた何をしに来てるんですか。会議で熱心にアピールしていたでしょ?『方形周溝墓はこれ以降の古墳時代の巨大な前方後円墳よりもはるかに小さく、ほぼ正方形の墓が密集していますが、その形状自体がひとつの社会形態を物語っていると考えられます。環濠集落についても同様で、集落に濠を巡らしているということは外敵に備えている証拠であり、集落間の緊張状態を表していると言えます。』その口で言ったんですよ。
長 -事件は会議室で起きてるんじゃない、現場で起きてんだ!
原田-またわけの分からないことを…。
長 -(目をキラキラさせて)ね、ガイドさんどんな人かな?受付のキレイなお姉さんから想像すると…。
原田-(目をキラキラさせて)それはもう、遺跡について熱く語ってくれる人ですよ!
(ガイドボランティアの藤田さん登場)
藤田-ようこそ。今日はよろしくお願いしますね。
長 - ……
原田-こちらこそよろしくお願いします!
長 -いかん、もうこんな時間か。原田君、あとは頼むぞ。
原田-(話を全然聞いていない原田)さっ、行きますよ!カメラ係!
長 -…この野郎…!
肌寒い冬曇りの空の下、遺跡のあちこちで原田とガイドの藤田さんの熱い語らいは続いた。長はなぜかふてくされていた。

原田-この大塚・歳勝土遺跡は国指定の史跡ですよね?このあたりには他にも遺跡はたくさん発見されているのに県指定だったりする。どうしてなんでしょう?
藤田-それはなんと言っても、環濠集落と方形周溝墓がいっぺんに発見されたからです。これは日本で初めてです。しかも、集落が墓地を持っているとはっきり特定できる。それがほぼ完全な形で出土する。これは大変まれなことなんです。
原田-大塚遺跡はほぼ同時代の吉野ヶ里遺跡などと比べると規模も小さいですね。
藤田-よくご存じですね。佐賀県の吉野ヶ里、福岡の板付遺跡など、他の環濠集落と比較すると規模も小さく、集落として成立していたのも50年くらいだろうと言われています。
長 -…さっきからまるで見てきたかのように言ってますけど、この藁葺きの家だってあとから作ったわけでしょ?言ってみれば捏造ですよ、今はやりの…。
原田- 長さん!

藤田- いいんですよ、大変重要な質問です。集落の家々を再現するにあたってはこの場所から出土した銅鏡に描かれていた絵を参考にしました。実際に再現していく行程では出来る限り当時使える道具での再現を試みています。
長 -(コロッと変わって)最初からそう思ってました。
原田 -(長をにらみながら)ボクがいちばん疑問に思っているのは集落内の人間の関わり方です。お墓はみなほぼ同じ大きさであり、集落は周りを濠で囲んでいる。これは一種の思想性を持った平等社会なんじゃないかと…。
藤田 -(しばらく考え込んでから)…おそらくそういうことではないと思います。先ほども申し上げたように、西の方の遺跡と比べると大塚・歳勝土は規模が小さい。これは稲作ができる土地を求めて東へ東へ移動してきた結果だと思います。いわばここは開拓者の最前線基地であり、生活していた人はフロンティアだった。とにかく食べていくために必死で、後の古墳時代のような階級社会を作り上げる余裕などなかったのではないでしょうか。
原田・長- …。
藤田 -(地面を指さして)この1m下に古代の人々の生活の跡が埋まっています。
原田・長- …。
二人は大塚・歳勝土遺跡を後にした。表情は二人とも満足そうであった。
長 - なんとなく立ち去りがたいな…。
原田 - (ニコニコして)来てみて良かったでしょ?
長 - 受付のお姉さんの写真、もう一枚撮ってこようかな…。
原田 - ホントに、あんたは何しに来たんだっ!
このとき、原田の血糖値は急激に上昇した…。
(担当 長・原田)
横浜市歴史博物館
【企画展 古墳からのメッセージT】
2001.1/27−3/11
横浜市にある90基余と100ケ所余の横穴墓群から出土した主要な遺物を中心に紹介します。
●観覧料:一般 500円(企画展のみ200円)
高・大 250円(企画展のみ100円)
小・中 100円(企画展のみ50円)
●開館時間:9:00〜17:00
●休館日:月曜(祝日の場合は翌日)
●所在地:都筑区中川中央1−18−1 пF045−912−7777
●交通:市営地下鉄センター北駅下車5分
●駐車場あり(2時間400円)
大塚・歳勝土遺跡公園DATE
【主な屋外展示】
●大塚遺跡(集落を巡る環濠・土塁・木柵・木橋・弥生期の竪穴住居7棟・高床倉庫1棟の復元地)
●歳勝土遺跡(弥生期の方形周溝墓5基の復元)
●型どり遺溝
●大型地形模型
●都筑民家園
●所在地:都筑区大棚西(歴史博物館の向かい)
●入園無料
●休園日なし(但し大塚遺跡と都筑民家園のみ、歴史博物館の開館日時と同じ)
●遺跡ガイド:約60分・無料 予約は歴史博物館総務企画課まで пF912−7777
当日の場合は博物館2階受付にて
まだまだある近隣の遺跡
【稲荷前古墳群】

4〜7世紀の歴代の首長たちの墓らしい。
昭和42年に発見され、現在は前方後円墳を含む3基の古墳が
公園として保存されている。(青・大場町155番地付近)
【市ヶ尾横穴墓群】

6〜7世紀に作られた19基の墓で、有力農民のものらしい。
横穴の内部の作り方にいろいろな形式が見られ、興味深い。
(青・市ヶ尾町1632番地付近)
【赤田2号墳】

6世紀後半に築かれた横穴式石室を復元したもの。
本来は現在地より東に410m北へ310mにあったものを
赤田西公園に移動した。(青・あざみ野南3−2付近)
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