あなたはあ「厚木に総合防災センターという施設があって、いろいろな防災体験ができるんだそうです。一月十七日はあの阪神・淡路大震災が起こった日でもありますから、
ここを取材したいんですが」編集会議の席での勝野担当の提案は、満場一致で了承された。また冬は火災の発生しやすい時期でもある。以前、消防士の知人に聞いた話だが、彼の職場に「消防うどん」なる名物料理があって、特に真冬の夜勤の際に食すそうだ。お湯を張った鍋に、うどん、さつまあげ、タマネギ、ニラの他、あり合わせの野菜を入れ、煮上がったらおろし生姜を落としたつゆにつけてすすり込む。「消防うどん」というネーミングに、防災関係者の願いが込められていて、芯から温まった身体は、緊急連絡に間髪を入れず反応することだろう。そんな彼らの使命感によって、市民である私たちの安全は守られている。でも、頼ってばかりではいけない、防災のために自分たちでできることは何か?「消防うどん」を食べながら考えてみようかと思う。
★ ★ ★
一九九五年一月十七日に兵庫県南部を襲った阪神・淡路大震災、その犠牲者の多さと、衝撃的な映像によって、今なお忘れられない光景となって脳裏に焼きついている人も多いと思う。しかし一方であの災害を教訓として、災害に備えている人は少ないのではないだろうか。
かくして今回、本石、勝野、私原田の三担当と、「おもしろそう」といういささか不謹慎な理由で飛び入り参加した佐々木、田代両名のあわせて五名は、こうした災害を擬似的に体験できる神奈川県総合防災センターを訪れたのであった。
総合防災センターは、東名高速厚木ICを降りて直ぐの畑のど真ん中で、威容を誇る立派な建物である(消防学校が併設されている)。入場するとインフォメーションカウンターがあり、綺麗なおねえさんが我々入場者を案内してくれることになっている。エントランスホールの吹き抜けには「スペースオアシス・小惑星かながわ」と名づけられた近未来的なシンボルオブジェが中空に浮かび、何かよくわからないけれども、なんとなく「やるなあ」という感じがする。一通りのガイダンス用の映像を見た後はいよいよ体験コーナーである。
地震体験コーナー
最初に案内されたのは、こういう類の施設では最もポピュラーな地震体験コーナーであった。六畳ほどの部屋の中で関東大震災や阪神大震災などとほぼ同じ揺れが体験できるようになっている。揺られるだけでは能が無いので揺れている間にドアを開ける、ガスコンロを消す、湯沸し器の種火を消す等の作業を行わなければならない。簡単そうだが、揺れを感じたら素早く行動しなければならないのでなめてかかると、我々のようにドアを開けられずに子供に笑われる羽目になる。というのも揺れがいきなり強くなり震度五以上は本当に立てないからである(阪神大震災のときはテレビが一メートルくらい飛び上がったという)。
風水害体験コーナー
次の体験コーナーが、台風上陸の際のお天気リポーターよろしく、強烈な雨と風に晒される風水害体験コーナーである(今回は風のみ)。正面を向くと本当に息が出来ない程の風が吹き付けてくるので、(こんな風が自然界で有り得るのかと思う程)
台風が来ると外に出たがる子どもに、その危険性を教えるには丁度良いかもしれない。但し怖くて泣いてしまう子もいると思うので気を付けていただきたい。
防災シアター
体験コーナーの最後に防災シアターで「宇宙から来た友達」という題のシュールな映画を鑑賞する。地震・台風・津波・火事などの災害を一度に体験し、かつ子ども用に仕上げなくてはならないという、かなり無理のある設定を、宇宙人の出現という裏技で見事解決してみせた怪作(?)である。「勇気」と「助け合い」という、災害時に一番必要なキーワードを使って子どもたちに訴えかけるこの作品は、ぜひ親子で見てほしいと思う。
(この項 原田)
続きまして、私、本石がご案内します。
煙避難体験コーナー
まず、美人のおねえさんから、「建物の中で火事にあったらどうすればいいのか?」「煙の中を安全に避難する方法は?」についての説明がありました。要するに、落ち着いた行動がいかに大事かということです。

さあ、いよいよ実体験にうつりますが、ドアを開け一歩踏み出すと、そこは暗くて迷路になっています。その中を白い煙が立ち込め、余計視界を悪くしています。今回の取材に「ぜひ、連れてって」と飛び入り参加した、謎の黒い顔の佐々木氏が、果敢にも飛び込んでいきました。廣田新聞店でも五本の指に入る大声自慢の佐々木氏、自慢の大きな声で「苦しいー!」その彼に「ちゃんと写真を撮ってよ」と、冷静に指示するクールな勝野担当でしたが、いざ自分の番になると、
潤んだ目を上目遣いにして、すがるような視線を向けてくるのですから、あまりカッコいいとは言えません。もちろん体験コーナーですので、今回使われた煙は、身体に無害のサラダ油によるものですが、実際の火事での煙は一酸化炭素を含んだ有毒ガスで、少なくともこの二人の狼狽ぶりを見ると、哀れ間違いなく命を落としてしまったことでしょう。
係のおねえさんの説明によると、煙は建物内の上部により充満しやすいそうで、ハンカチなどで口を押さえながら、姿勢を低くして前進避難するのが正しい方法だということです。煙の中での反応は人それぞれですが、実際の火事に直面したら、もっともっと、あわてふためくに違いないでしょう。そのためにも、この体験は貴重なのだと思います。
消化体験コーナー
本物の消火器を使った体験です。「皆さんは実際に火事に出会った時に、消火器を使用することができますか?」という問いかけから、体験コーナーはスタートします。いざ火の手が上がってから、消火器の使用説明を読んでいては、たちまち手がつけられなくなります。初期消火が、火事災害防止の唯一無比の方策で、いざという時に、あわてずに行動できるためにトレーニングは必要です。
ここでは、煙コーナーでますます顔の黒くなった佐々木氏が、またしても果敢にチャレンジしました。モニター画面上に、家の台所が映し出されます。「ああ、台所から炎が上がっています」そこからいかに敏速に、消火器を操るかが勝負となります。後始末が大変だからでしょうか、ここでは消化液ではなく、水のみを使用します。ピンを抜き、モニター画面にホースを向けると水が放出され、佐々木氏、見事に一発消火!本人はその黒い顔を輝かせての得意満面でしたが、一緒にチャレンジした子どもたちもみんな一発で鎮火させていましたので、あんまり喜びすぎるのも大人げないかな、といささか思った次第です。
通報体験コーナー
モニターの前に本物の電話機が置いてあり、一見テレビ電話のようです。まず最初にガイダンスに沿って、「マンションの火事」とか「急病人」とかの、シチュエーションを選択して、いよいよ開始です。モニターに映る人の問いかけに、一つ一つ受話器ごしに答えます。住所はどこか、状況はどうなのか等、はっきり大きな声で答えていきます。最後に消防車や救急車がやって来ればクリアです(ゲームみたいな言い方ですが)。実際に現場にいたらあわてふためいてしまうのでしょうが、この体験で少し自信が持てました。
神奈川総合防災センターには、体験コーナー以外に、防災情報コーナーがあって、見学者の防災意識を高める工夫をしています。
「防災Q&A」
パソコンを使って、防災に関する問題に挑戦!子どもたちに大人気でした。
「防災用品コーナー」
災害時に必要な持ち出し品を展示しています。
「消防用具発達の歴史コーナー」
各時代の消防用具が、解説付きで展示してあり、消防の歴史が楽しく理解できます。
「家庭防災の知恵コーナー」
家庭内での事故や、自然災害による被害を、模型で再現しています。また応急手当の方法が学べます。
「神奈川県の災害コーナー」
過去の大規模災害と、県の防災対策を紹介しています。
★ ★ ★
防災に対する体験というと、少しかた苦しいイメージがありますが、このように一種のゲーム感覚を取り入れて、楽しく体験させてくれるこの施設は、防災に携わる方たちの熱い情熱とアイデアが融合した、テーマパークのようだと言ったら語弊があるでしょうか?無料で、しかも学べることが多く、子ども連れには最適です。
あの悲惨だった阪神・淡路大震災を過去のものにしないように、あるいは他人事にしないように、皆様もぜひ防災体験をしてみてください。
(この項 本石)

●開館時間:9:00〜17:00
●休館日:毎週月曜 毎月第3火曜(土日に当たる場合は開館)
12/28〜1/4
●入館料:無料 団体(10名以上)のご利用は要事前予約
●問合せ:総合防災センター 046-227-1700
●所在地:厚木市下津古久280 駐車場あり
|
|