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年末・年始といえば忘年会、新年会。仲間うちのそれを私が皆勤するのは、社会人としての常識、礼節をわきまえている証左であり、酒が飲める場所であれば、万難を排して駆けつける、編集部の「呑兵衛侍」こと宮澤担当とは大いに異なる。しかし宴席で、ウーロン茶片手にひとり沈黙していれば、せっかくの盛り上がりに水を注すから、社会人として協調性をもわきまえている私は、他からの献杯を決して拒まない。その結果、やむを得ず…あくまでもやむを得ず…酩酊する。先日の新年会の二次会は、カラオケであった。中高年グループが、カラオケで盛り上がると、会場内に「ハッスル、ハッスル!」「フィーバー、フィーバー!」など、現代では「死語」と化した歓声が飛び交う。「今年は何年だ?」「サルだ、『エテ公』年だ!」エテ公とは猿の異名だが、これももちろん死語である。昔、江藤浩二という同級生が、その名前を省略され「えとこう」転じて「エテ公」という不名誉なあだ名を頂戴してしまった。そのせいもあるのか、彼の性格までサルのように「軽挙妄動」だった。今回編集部一の「軽挙妄動」者、尾川担当が、申年にちなみ、サルもいる高尾山の取材を提案した。深く考えもせずに承諾したのは、二日酔のせいだったが、後になって私が頭を抱えたのは、決して二日酔のせいではない。
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「高尾山がいいと思います」
一月号の特集記事を決める会議の席。荏田店は、というより僕、尾川の出した企画は「高尾山を紹介したい」というもの。すかさず、他の部員から 「この寒いのに高尾山?何か特別なことがあるの?」 と、いぶかしげな反応が返ってきた。
「来年の干支は申(さる)ですよね、高尾山には猿園と猿回しの芸が見られる施設があるんですよ!」
「なるほど、申年の新年号だから猿回しね」
ところが、同じことを考える人はいるもので、
「さる年だから猿回し、だったら日光でしょう。日光猿軍団は有名じゃないですか」 と中川店も似た企画を出してきた。こういうのを世間では「猿真似」と言います。
しかし、日光は遠い。同じ首都圏の観光地と言っても、ヒロタリアンの「近場の紹介記事」を、というのからは離れすぎている。それに日光猿軍団は有名すぎて「今さら取り上げなくてもいいでしょう」と会議室の空気はわが方に有利。
「それに尾川君なら猿も警戒しないで取材に応じてくれるだろうしね」
と、編集キャップ。
「別に猿にインタビューするわけじゃないですよ」
しかし、今の発言でますます風向きがこっちに向いてきた。
「そう言えば、いま高尾山が舞台のドラマやってるよね。ほら深キョン(深田恭子)と飯島直子のやつ。そのロケ地も取り上げれば面白いんじゃない」
と誰かが発言すれば、ミーハーな部員たちが大きくうなずく。それが追い風となって一気のがぶり寄りで高尾山に軍配があがった。
というわけで荏田店の僕、尾川が猿を訪ねて高尾山まで行ってきました。 いざ、高尾山へ
師走の風が凍てつく十二月の半ば、朝方小雨がぱらつくあいにくの天気に、自宅を出て駅に向かう道すがら、僕は少し後悔をしていた。やっぱり、季節を選べばよかった。四国は愛媛出身の僕には、関東の寒さはこたえます。
長津田から横浜線で八王子駅まで約四十分。八王子からはJR中央線に乗り換えて高尾駅へ、この頃には雨もやんで、日が差してきました。でも寒い。
高尾駅のホームには高さ2.4メートルもある大きな天狗がお出迎えです。高尾山には数多くの「天狗伝説」があることから、この駅に鎮座ましましているそうです。
JR高尾駅から歩いて京王線の高尾駅に向かい、もう一度乗り換えてひと駅目が高尾山の玄関口、高尾山口駅です。駅を出ると、醤油のこげた香ばしい匂いが漂ってきました。匂いにつられて歩いていくと、売店で美味しそうな串焼きだんごを、焼いているではありませんか。さっそく一本買ってかぶりつく。「うまい!」一本三百円ですが、串を返すと十円戻ってきました。
駅でもらった『散策ルートマップ』を右手に高尾山口駅から賑やかな通りを歩いて清滝というところへ向かいます。「あっ、酒まんじゅうに手焼せんべいも売っている。帰りに買おう」
日本一のケーブルカー
高尾山に登るには全部で七つのルートがあるそうです。清滝から徒歩で直接高尾山に登るコースと途中までケーブルカーやリフトを使って高尾山駅まで行き、そこから歩くお気軽コース。山登りが大好きな方なら迷わず稲荷山コースをお勧めします。清滝から約90分かけて登るこのコースは、あまり混んでなく静かに散策ができて、眺めも最高だそうです。八月号でクライミングの腕を披露して体力にも自信のある、筋肉マンの僕はもちろん。迷ったあげく、今回はケーブルカーにしました。情けないなんて言わないでください。だって、ケーブルカーに乗りたかったんですもん。本当は日本一の長さを誇る、恐怖のリフトに乗りたかったのですが、あいにく年末の定期検査の期間にぶつかってしまい乗ることが出来ませんでした。残念。
でも、今回乗ったケーブルカーも迫力は満点。やはり、日本一を誇る急勾配は最大31度18分。下りの時は一番前に乗ったのですが、もしもケーブルが切れたらこのまま山を滑り落ちていくのじゃないかと想像して、脇の下に汗をかいてしまうほどでした。
ショック!ドラマの舞台が・・・
乗ってから約5、6分でケーブルカーの終点「高尾山駅」に着きました。ここから歩いて猿園に向かいます。途中、例のドラマで深田恭子と飯島直子の実家である「十一丁目茶屋」と言うお店があるというので寄ってみることにしました。ドラマはつい最近終了したばかりなので深キョンに会えるわけでは無いのですが、ドラマの題名「ハコイリムスメ」の名が付いた饅頭も売っていると聞いたので、みんなに買っていってやろうと勇んで行ってみると、な、なんと「本日休業」の看板。ショック! リフトと言い、来る前にちゃんと調べておけばよかった。
仕方が無い本来の目的である猿園に専念するか〜。と立ち直りも早い。
 
猿園はこの茶屋のすぐ隣にありました。この十月にリニューアルオープンしたばかりで、猿山の中に観覧席があって、座りながら猿を観察できます。猿は現在、約30頭いるそうです。猿のしぐさも可愛くて見ていて飽きないのですが、飼育係の人の説明がまた面白くて時間のたつのも忘れてしまいました。猿社会には厳しいルールがあり、秩序もしっかりと守られているそうです。だんだん秩序の無くなってきた人間社会。猿真似ならぬ人間真似で見習わなければいけないことが沢山あるかもしれません。
猿に教わりました。
うちの編集部でも「下剋上」をたくらんで、キャップを追い落とそうとする、秩序を乱すM澤さんというスタッフがいますが、彼には猿の爪のアカでも煎じて飲ませなければいけません(キャップ、言ってやりましたよ)。
またこの猿山の猿たちは、名前を呼ぶと独特の声でちゃんと返事をします。小猿が餌をねだったりする姿には、思わず自分をダブらせてしまいました(今じゃないですよ、子供の頃の話です)
蛸杉と天狗
猿山を出て、薬王院というお寺に向かうと、参道には樹齢何百年の杉の木が沢山あります。中でもひときわ目を引くのが「蛸杉」と呼ばれている木です。ドラマにも度々登場していました。 さっき、高尾山には天狗の伝説があると書きましたが、この「蛸杉」にも天狗にまつわる話が残っています。高尾山が開山された頃、山道はまだまだ険しく一般の人たちには難儀な山だったそうです。そこで山に住む天狗達が集まり、相談の結果、道普請をしようと言うことになりました。
天狗の神通力で道はあっという間に完成したのですが、一ヶ所だけ大きな杉の木が根を張って道をふさいでいたそうです。天狗達は困ったあげく、切り倒そうとしたところ、ビビッた杉の木は「切り倒されてはかなわん」と道の邪魔にならないように、その根をクルクルと巻いて
、道をあけたそうです。おかげで参道は完成し、以来、この蛸杉は「道を開く」ということから開運のご利益があるといわれています。この道を通る人たちが「開運」を願って触っていくので根っこはつるつるになり、ますます蛸に似てきたといいます。もちろん、僕もしっかり触ってきました。
見所いっぱい高尾山
高尾山は山伏や修験者の修行の山でもあることから、山中の琵琶滝と蛇滝という二つの滝が、極寒気の滝修行の場となっています。一般の希望者も「滝修行入門コース」があるので体験してみてはいかがでしょう。僕は絶対しませんけど。また、高尾山には他にも「東京都高尾自然科学博物館」があり、入館無料で花や木、鳥や昆虫、ナウマン象の化石や標本、ジオラマなどが見られます。また、季節に応じた催し物などがあるので、親子で参加してみるのも良いのではないでしょうか。
標高599メートルの高尾山の山頂からは富士山も見えるそうですが、今回は残念ながら曇っていて見ることは出来ませんでした。
でも自然の中で食べた山菜キノコ入りの蕎麦や帰りに買った酒まんじゅうは絶品でした。今度は暖かい春にもう一度来たいと思います。今度はしっかり下調べをし
て、ガッカリしないように、ね。
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「あれ〜、猿回しはどうなったの?」
編集部に原稿と写真を持っていくと、それを見ながら、かの下剋上男のM澤さんが一言。(ギクッ!)
「それが…その〜…」と、しどろもどろ、実は「ラッキー猿まわし」と言う、高尾山の猿回しは常に高尾山でやっているのではなくて、イベントや祭りなどに出張して各地で営業しているわけなんです。高尾山に行けばいつでも見られると思ったのは、僕の大きな勘違いでした。
「はぁ〜。尾川君らしいよ」
「すいません。そ、そうだ、M澤さん申年って、なんで申って書いてサルって読むんですか?」
と、とにかく話をはぐらかしてしまえ。
「それはね。申年の申って字は動物の猿の意味じゃないんだよ。そもそも、十二支の子、丑、寅って言う字は、動物のネズミとか牛と言う意味ではないのだよ。 中国の古代天文学で、一年十二ヶ月の季節の循環を
(支)というもので表していて、その性質やイメージに近い動物を、それに当てはめて一般の人にも分かりやすくしたって言う訳なの。わかる?」
「はあ?」
「だから、申年は猿のような性格ってこと。もしかして尾川君は申年生まれ?」
「違いますけど、なんでですか?」
「猿は才気煥発で、進んで新しいことをしようとする行動的な所があるんだよな」
「あっ、それなら僕と同じですね」
「でも、軽挙妄動が多いんだよ」
「なんですか?」
「深く考えずに行動する。つまり、オッチョコチョイってこと」
「ひ、ひどい!当たっているだけに」
申の字は本来、雷を表しているそうです。また「のびる」と言う意味もあると言うことを教わりました。申年の今年が、僕にとっても、皆さんにとってもぐんぐんと躍進する年でありますように、お祈り申し上げます。蛸杉のご利益を信じて・・・ (尾川)
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