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「宮澤さんって、説教魔だったんですね」小田原の地球博物館を一緒に取材した勝野担当が、私にぼやく。「どういうことだ?」「地球博物館の近くに、地ビールを飲ませる『箱根ビール蔵』っていうところがあって、取材の帰りに寄ったんですよ」想像するに、無類の酒好きである宮澤“呑兵衛”高廣は、美味い地ビールを次々に飲み干し、酔いにまかせて勝野担当に噛みついたのだろう。
そういえば、以前、酒場で、現役バリバリの俳優H氏に対し、演劇論をふっかけて大顰蹙を浴びたという噂も聞いたことがある(本人は唯一、小学校の学芸会での桜だか松だかの「木」の役しか経験がないというから呆れる)。
「それで何をグダグダと言われたんだ?」「僕の書く文章はつまらないって…」うーん、確かに当たっている。「僕の文章はひとりよがりで他人には理解できないって…」うーん、これも確かに一理ある。「そんなことないですよねえ、前に書いたときも、結構評判よかったですよね」それは、彼が書き上げるのに要した時間と同じくらいの時間をかけて、私が手直ししたからである。「こんないわれもない中傷を受けて、不愉快な思いをさせられたんですから、ビール蔵での飲み代、経費でいいですよね」「ダメだ!宮ちゃんにでも払ってもらいな」やれやれ、勝野担当の思考にはついていけない。今回の彼の記事の手直しは、宮澤担当に押しつけよう。
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猛暑、台風、地震。そして締めくくりの大晦日は二十一年ぶりの雪(元旦の配達は大変でした)。去年の日本は天変地異のオンパレード。いや、日本だけではない。暮れに起きた「スマトラ島沖地震」は未曾有の大災害となってしまいました。いったい地球はどうなってしまったのか?
「人類が大自然をあまりにもないがしろにしてきたため、地球が怒ってしっぺ返しをしているんじゃないかな」
あざみ野から新百合ヶ丘に向うバスの中。そんな私のつぶやきに、
「そうかもしれないですね。自然の怖さをなめている…と言うか、地球のこと知らなさ過ぎですよね」と弱冠二十歳の伊藤将幸も頷く。
「そう!地球を知ることが大事なんだよ。地球を知る。それは愛を知ること。愛・地球博は愛知県。愛知万博は三月二十五日より開催!」と名古屋人の宮澤氏がはしゃぐ。
「なに自分の出身地の宣伝しているんですか」
「だって、三十五年ぶりだぜ。大阪万博は子供ながら感動したな〜」
「僕は生まれていませんから」と伊藤担当。
「今度の取材は、その地球のことを知ることがテーマだけど、万博じゃありませんから。残念」
そうです。今回たまプラーザ店の私、勝野と伊藤、そして宮澤氏の三人が向かったのは地球博は地球博でも、箱根にある「神奈川県立、生命の星・地球博物館」なんです。
新百合ヶ丘にも停まり便利になった小田急ロマンスカー「さがみ」に乗りこみ、まずは小田原へ。小田原で「箱根登山鉄道」に乗り換えます。
「知ってる?線路が三本あるだろ。あれは箱根湯元まで乗り入れている小田急線のゲージ(軌間・レールの幅)が登山鉄道のゲージより狭いからなんだよ。秋田・山形新幹線と同じだね。ハッハハ」と、先頭車両の一番前に陣取って得意気な宮澤氏。
「はぁ〜あ。(どうでもいいけどヘンな人)」と、とまどい顔の伊藤担当。
小田原駅から三つ目、いよいよ地球博物館のある入生田(いりうだ)駅に到着です。ちっちゃな踏切を渡り、反対のホームにある改札で切符を手渡す。情緒ある細い路地はどこか鎌倉に似ていて、レトロな電車といい、旅情感が漂います。
博物館は駅から歩いて三分のところにありました。SF映画に出てくるようなその外観にビックリ。「おっ、地球防衛軍の本部みたいだ!」とは宮澤氏の弁。中に入るとエントランスホールには巨大な恐竜の骨がお待ちかね。その恐竜を見上げると天井には広大な宇宙空間と水の惑星・地球が描かれています。その大きさに圧倒されながら、我々が最初に向ったのは、『+2℃の世界』〜縄文時代に見る地球温暖化〜という企画展。2月27日までの開催なので今しか見ることができません。
地球温暖化を知ろう
四十六億年の歴史をもつ地球は、これまでに寒くなる氷期と暖かくなる間氷期を、一定の周期で繰り返してきたそうです。気温の変化は、同時に海面の変化につながります。寒ければ低く、暖かければ高く。約六千年前、急激な温暖化により海面は上昇しました。
「ちょっと足の下を見てごらん」宮澤氏に言われて足元を見ると、床の上には六千年前の神奈川県の海岸線が、大きな地図で描かれていました。なんと川崎、横浜、横須賀、鎌倉、茅ヶ崎、小田原などが海に底に沈んでいるではありませんか。
(わが青葉区・都筑区はどうだろう?)
滑車の付いた大きなレンズで確認すると、かろうじて陸地でした。しかし中川の辺りまで、早淵川に沿って海が押し寄せている。そう言えば、港北NTには貝塚があるって聞いたぞ。う〜ん「縄文海進」恐るべし)。
この時代は現在よりも平均海水温が約2℃、海面が約四メートル高かったそうです。
ここには縄文時代の地層や貝塚、動物の骨などの標本によって、当時の海岸線の移動の様子が、分かりやすく展示してあります。私が興味を引いたのは、川崎駅アゼリアの地下工事で発見された、六千年前の地層のはぎとり標本です。ここからは水深十メートルに棲む貝が出てきたそうです。このあいだ私が祈りを込めて買いに行った、あの宝くじ売り場の名所が、昔は海の底だったなんて…。(よ〜し、これも何かの縁。拝んでおこう。どうか3億円が当たりますように!)
「勝野さん。なんで標本に手を合わせてるんですか?」気がつくと、伊藤担当が不思議な顔で見ています。
「えっ、いや…。これが六千年前の地層かと思うと地球の神秘と言うか…神聖な気持ちになってね。エヘヘ」 「ふーん。(ヘンな人)」
縄文時代の房総半島沖には、今よりもはるかに大規模で立派なサンゴ礁が、形成されていたそうです。逆に氷期には、現在は北海道にだけ棲むヒグマが本州にもいました。その後の温暖化で、本州では絶滅したようです。立山で棲息する、国の特別天然記念物『雷鳥』(実は夏に立山で運良く親子連れを見ることができたんです)も氷期の生き残りです。さらに、十三万年前には日本各地あちこちにナウマンゾウがかっ歩し、北海道にはマンモスもいました。これは逆に氷期の時に海面が下がり、日本列島が大陸と地続きだったからなのです。
このように縄文時代に起こった温暖化は陸の形を変え、様々な生物に影響を及ぼしました。しかし、この温暖化は何千年規模の自然のリズムです。現在、世界的に大きな問題になっている地球温暖化は、CO2やメタンなどの温室効果ガスの濃度の上昇が原因。つまり、私たち人間が引き起こしているのです。縄文時代に起きた温暖化の様子を知ることによって、将来の温暖化をどうすればいいのか…この企画展で深く考えさせられました。
久しぶりに(?)頭を使ったので疲れました。ちょっと一休みと言うことで売店横の喫茶へ。私は小田原の牧場アイスを、伊藤担当は迷わずミルクを注文。
「あれ?ところで宮澤氏は?」
「売店で何か探していますよ」
見ると真剣な顔でおもちゃを見ています。「ここのお土産を、読者の皆さんにプレゼントにしようと思うんだ」と宮澤氏。それじゃあということで、三人で探しました。何になったかは、プレゼントコーナー(本紙6頁)を見てのお楽しみ。
地球の神秘を知ろう
いよいよ常設展。まずは「地球展示室」です。本当に広い!まず目に飛び込んだのが巨大岩石の壁。まるでクライミングパークだ。入り口近くには巨大な地球儀とスクリーン。地球の内部や大地のしくみ。火山の成り立ちがアニメーションで分かりやすく説明されています。続く地球上の様々な鉱物の標本には目を奪われました。色とりどりに輝くその姿は加工された宝石など色あせる美しさです。ガラスケースの中にキラキラと輝く紫色の水晶。この澄んだ紫色は、まるでガラス職人が緻密につくり上げた芸術のよう。
「これが自然にできるんだから地球は凄いな」と宮澤氏。蛍石は、ボーっと光ってなんとも幻想的です。
「これをひろたりあんプレゼントにしましょうか?」と純粋とも無謀ともいえる伊藤担当の提案。でもほんと、その気持ちわかります。
さらに進むと電気石を発見。「何で、どうして電気石?」すかさず宮澤氏が「君のような人間が座ると電気が流れるんだよ。フフッ、それは電気椅子だろ!」と一人ボケツッコミ。さ、寒ぅ…。
電気石は別名トルマリンとも呼ばれ、熱を加えると帯電する性質があるそうです。
他にも茶色い飴みたいで、とってもおいしそうなコハク(針葉樹の樹脂が石化したもの)や、怪獣の背みたいな石、樹木やコケのような模様をきれいに作る、版画で押したような、とてもユニークなデンドライトと言うドイツの石など、見学者を飽きさせません。
次は「化石ラボ」です。最も古いのは、何と三十五億年前のものなのです。この中からバクテリアが見つかったそうです。また五億年前の化石には、三葉虫やクラゲ類、ウミサソリなどが入っていて、生命が着実に進化したことを感じさせます。「アンモナイトの壁」はまるで彫刻家の作品のようです。
しばし、感動に浸っていると、隣で小さい子供達が「アーモンド、アーモンド」と騒いでいます。「?」その方を見て思わず笑ってしまいました。それはアーモンドならぬ、アンモナイトの化石でした。
「何笑っているの?何かオモシロイ物あった?」と伊藤担当。「いや、ナンモナイト」「…」
次は「生命展示室」です。「おおっと、あの光り輝くブルーは」やはりそうだ"現在公開中の映画『天国の青い蝶』で見た、地上で最も美しい蝶。生きた宝石モルフォ蝶だ。森の中をキラキラと青く光りながら飛ぶ様は、本当に幻想的でした。ここには蝶だけでなく、今まで見たこともないような、変わった形の昆虫の標本が展示してあります。「昆虫というよりエイリアンだな。そのままショッカーの怪人になりそうだ」と宮澤氏。(この人、ガキだな)
生命の尊さを知ろう
このフロアーで最も目を引くのは、何と言っても恐竜。二十八メートルもあるディプロドクスやおなじみのティラノサウルス。
その恐竜を見上げていると、背後にケダモノの視線。(また宮澤氏か…)振り向くと、目の前にはライオン、オオカミ、白熊にサイ。思わず腰を抜かしそうになったが、よく見ると全て剥製。それにしても凄い迫力。今にも襲ってきそうでゾッとします。
逃げるようにエスカレーターで3Fに上がると、私の好きなサラブレッドよりでかいヘラジカが。海老名で角と顎の化石が発見されたとのこと。
ここ「神奈川展示室」には、ヘラジカやナウマン象など、神奈川に昔棲んでいた生き物から、現在の相模湾や丹沢、箱根に棲息する生き物が展示されています。
最後の「ジャンボブック展示室」はユニークでした。高さ2.5メートルの立体百科事典に、実物の標本が入っていて、前に立つとまるで小人になった気分。テーマ別に二十七冊並んでいました。
この博物館を一回りして、地球上に住んでいるのは人間だけではないのだということを再認識させれました。
人類が誕生したのは五百万年前。四十六億年の地球の歴史を考えると、つい最近のことなのです。その人間のわがまま、思い上がりが、生命の星・地球を傷つけているのではないでしょうか。
地球の悲鳴が聞こえるような気がしました。
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「腹減ったよー」聞こえたのは地球ではなく、伊藤担当の悲鳴でした。
「すぐ近くに『箱根ビール蔵』があるので、そこに行きませんか?」と私が誘うと
「何?ビール蔵?よし行こう、すぐに行こう」と、疲れも見せない呑兵衛宮澤氏。
ひと駅手前の風祭駅のそば。博物館から歩いても行けるので、セットで 寄ってみてはいかがでしょう。
また疲れた体には、一駅上の箱根湯本の日帰り温泉もお薦めですよ。
(勝 野)

神奈川県立『生命の星・地球博物館』
〒250-0031 神奈川県小田原市入生田499
電話 (0465)21-1515
http://www.city.odawara.kanagawa.jp/museum/g.html
箱根登山鉄道「入生田(いりうだ)駅」から徒歩
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