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編集会議の席「発電所の取材なんかどうですか?環境問題にも通じるし」なかなか建設的な提案ではないか。
すると「発電所もいろいろあるけど、火力とか水力とか」「原子力や、あと風力発電もありますね」ふむふむ、会議らしくていいじゃないか。
ところが、私の一言で議論が止んでしまった。「あと、人間発電所っていうのもあるね」「?」突然の静寂に焦る私。「知らないのかい?ブルーノ・サンマルチノだよ」「???」これがいわゆるジェネレーションギャップなのか。
私の少年時代、男児の多数はプロレスファンだった。テレビの前で、同邦レスラーに熱狂的な声援を送り、立ちはだかる外国人レスラーに罵声を浴びせた。しかし彼らは強かった。そして強さに敬意を表して、異名がつけられた。「鉄の爪」フリッツ・フォン・エリック「鉄人」ルー・テーズ「人間風車」ビル・ロビンソン「人間山脈」アンドレ・ザ・ジャイアント…。そしてバックブリーカーが得意技で、たぐい稀な怪力とスタミナから「人間発電所」の異名をとったのが、ジャイアント馬場のライバル、ブルーノ・サンマルチノであった。
結局、取材は火力発電所と決まり、宮澤「呑兵衛」高廣が担当することになった。刀をペンに代え「人間発電所」ばりの怪力とスタミナで記事を物してきた宮澤担当だが、最近疲れ気味(呑み疲れか?)のようで、取材中に居眠りするという失態を演じたらしい。火力発電所で、充電してもらう必要がありそうだ。
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火力発電所 「なんだ?あの建物は」
青空に向って聳え立つ真っ白な二本のタワー。その高さもさることながら、青と白のコントラスト。シンプルなフォルムの美しさに思わず目を奪われてしまいました。
先月号で紹介した「鶴見川の源流を探る」。こんどは逆に川を下って河口をめざす…おっと、その様子は年末発行予定の「ひろたりあん2006」でお伝えすることにして(乞うご期待)、その鶴見川が横浜港へ流れ込む河口、まさにその終着点でビッグで面白い施設を見つけました。『トゥイニー・ヨコハマ』こと『横浜火力発電所』です。
「TWINY(トゥイニー)」とは二本のシンボルタワーのこと。そう、さっきの二本のタワー、実は、この火力発電所の煙突だったのです。私たちの家庭に送られてくる電気はここで作られていました。なんと、川の水とは逆に、電気は河口から流域全体に流れていたんですね。
トゥイニー・ヨコハマでは、事前に予約すれば発電施設やツインタワーの展望室を見学できるそうです。そこで今回は藤ヶ丘店の塚田担当と美しが丘店の富田担当を引き連れて、その電気の源流を探ってきました。
恐ろしさのあまり・・・
JR鶴見駅から(17系統)のバスに乗り込み、約二十分。大黒ふ頭に渡る手前、「横浜火力発電所前」という停留所で下車します。
「なんで火力発電所って、こんな海の近くにあるんですかね?」 塚田担当がボソリとつぶやく。
「そりゃ、燃料の石油を船で運んでくるのに便利だからだよ」富田担当がすかさず答える。
「もちろん、それもある。だけど、もうひとつ大きな理由があるんだよ。」と、私。
「えっ、何ですか?」
「答えはこの中にある。とにかく中に入ろう」
正門から敷地に入ると警備員の方が敬礼して迎えてくれました。その警備室の左手に「トゥイニー・シアター」があります。ここでは最新の音や映像を使って発電のしくみや暮らしと電気、エネルギーや環境問題について学ぶことができます。
「まずは、ここで電気について勉強しなきゃね」
最初に案内されたのは、コミュニティホール。ここで十分ほどの映画を二本見ます。ひとつは最新の火力発電のシステムを詳しく説明したもの。もうひとつは「もしも電気が無くなったら」というドラマ。空気や水のように、あるのが当たり前だと思っている電気。しかし、電気がまったく供給されなくなってしまったら?
「テレビも、エアコンも、コンビニ弁当チンもできない。世の中真っ暗だ〜」
ホールが明るくなった。隣の二人が笑っている。(しまった!)
「だいぶ疲れているみたいですね。宮澤さん」
「えっ、…ち、違う、違う。電気が無くなった世の中を思ったら、…どうやら、恐ろしさで気を失ってしまったらしい。ははは」
「そんな言い訳あるか〜」
地球に優しいACC
続いて案内されたのは、大きな発電プラントの模型。ここで、さっきの映画で紹介された「最新の発電設備」を模型を使って説明していただきます。
従来の火力発電とは、たとえばお湯を沸かしたヤカンの口の前に羽根車を置いて、口から吹き出す水蒸気の力によって羽根車を回転させ、その羽根車の回転で発電機を回して電気を起こすというもの。つまり、ヤカンがボイラーで羽根車がタービン。これを気力発電といいます。
「自転車のライトを点けるダイナモがあるでしょう。これは、それと同じ模型なんですが、こうしてコイルの間で磁石を動かすと、電気が起きます。自転車ならペダルをこいで車輪を回しますが、火力発電所では蒸気の力でタービンを回します」
「横浜火力発電所」では、これまでの気力発電の蒸気タービンに、ジェット機のエンジンに使われているガスタービンを組み合わせた複合型の発電方式を採用しているそうです。ガスタービンは圧縮した空気と燃料の天然ガスを混ぜ合わせ、勢いよく燃やし(1300度)、その強力な膨張力でタービンを回すシステム(一分間に3000回転)。
次に、そのガスタービンを回した後の高温(600度)の排熱を利用して、水を加熱。蒸気を発生させて、もう一度蒸気タービンを回すのです。ACC発電(改良型コンバインドサイクル)と呼ばれるこの技術は、まさに熱のリサイクル。燃料のムダを減らした世界最新の火力発電なのです。
「この発電設備によって、気力発電では40パーセントだった熱効率が49パーセントまで効率を高めることができたのです」
熱効率が高いということは、少ない燃料で多くの電気が得られるということ。石油に換算すると、ドラム缶なんと一年間で約365万本の節約だそうです。
「それから、蒸気となった水も大量の海水で冷やしてから、再利用されるのです」
「あっ、そうか。海の近くに火力発電所があるのは、大量の水を使うためか。なるほど」案内係の方の説明に富田担当も納得。
「そう。熱のリサイクルと水のリサイクルの二つの省エネによってムダを無くしているんだね」
「ちょっと、宮澤さん、そのNHKのお兄さんみたいな口調やめて下さいよ。気持ち悪いな〜」
「仕方ないだろう。君たちの知識は小学生並なんだから。さっき石油を船で運ぶって言っただろ。この火力発電所では、ガスタービンを回す燃料に天然ガスを使用しているんだよ」
「えっ、石油じゃないんですか?」と案内係りの人に尋ねる。
「LNG(液化天然ガス)を使っています。天然ガスは石油や石炭を燃やした時と違って、酸性雨の原因となる窒素酸化物や硫黄酸化物が発生しないんです。それから、不純物がないので、煙もでないんです。また燃やし方の工夫や、排熱回収ボイラの中で、窒素酸化物もほとんど取ってしまうんです」
「どうりで、煙突からモコモコと煙が出ていないはずだ」
天然ガスは、地球温暖化の原因となる二酸化炭素の量が石油や石炭などに比べて極めて少ないのが特徴なのです。
「ねっ、ACC発電は、省エネだけではなく、地球温暖化や大気汚染などにも気を使った、地球に優しい発電システムだということがよく分かっただろ」
「もう、わかりましたよーだ!(まったく、さっきは寝てたくせに…)」
「ナニ?」
「いえ。何でもありません。つぎ行ってみよ〜」
地上180メートルの絶景
エレベーターに乗って次に向ったのは、本館のタービンフロア。
ここに先ほどの優れもののタービン(一台の長さ44m、幅11m)
が左右に4台づつ計8台並んでいました。
「広いね〜。しかも、チリ一つ落ちてないほど清潔だ。この下でジェット機と同じタービンが1300度の熱を吹き出しているとは思えないな〜」
その大きさに感動を覚えつつ、次の「中央操作室」へ。ガラス越しにコントロールルームの様子を見学します。目の前のモニターには、時間によって使われている電気量のグラフが映しだされていました。時々刻々と変わる使用量に合わせて、発電量をこの部屋でコントロールしているのです。
案内をしていただきながら、どのフロアや通路も明かりが消されていることに気がつきました。
「館内では、使用していないときは、常に電気を消して省エネを心がけています」
電気を作っているからこそ、無駄な電気は使わない。電気の大切さを改めて実感しました。
さて、いよいよお待ちかねのツインタワーの展望室です。ツインタワーへは電気自動車で向かいます。タワーの中に入ると四本の排気塔が高さ200メートル上空まで伸びています。私たちも中央のエレベーターで二階へ。といっても地上180メートルの二階展望室です。
展望室は東西南北四つの部屋に分かれていて、360度の眺望が楽しめます。この日は天気が良かったので三浦半島や房総半島の先まで見ることができました。さすがに富士山は無理でしたが、冬の晴れた日なら富士山もハッキリと見ることができるそうです。
「これは穴場ですね。目の前にランドマークタワー見えるんですよお金払ってランドマークタワーに昇るよりもいいですよ」と嬉しそうな二人。
緑の空間
タワーで横浜港の展望を楽しんだあとは、その「トゥイニー・シアター」で電気とエネルギーについて仕上げの勉強をします。
3階の「電気ワークス」では、電気の歴史や普段何気なく使っている電気製品の模型を使って、送電、変電、配電のしくみを勉強します。隣の地球ギャラリーに足を踏み入れると、宇宙空間の中に地球が七つ浮かび上がっていました。真ん中の大きな地球に、エネルギーの歴史や資源の現状。人と地球の未来が映像として映し出されます。
「このままで行くと、あと44.9年で石油は無くなっちゃうんだ〜」と不安そうな塚田担当。
富田担当も「天然ガスだって、あと65年だよ。下手すると僕たちの生きているうちに無くなっちゃうかも…。でも、宮澤さんは…確実にいないな」
「生き残っていたら怖いですよね」
「確かに」
「ナニナニ?何が残っていたら怖いって?」
「えっ、いや…残っていたらじゃなくて、取り残されたら。つまりオール電化を考えた方がいいということですよ。ほら」
隣には、CMでおなじみの「IH体験コーナー」がありました。
2階のエネルギーコミュニケーションゾーンでは、アンペアブレーカーや漏電遮断器などを使って、電気の安全な使い方を知る「エレクトリカル・ライフ・ハウス」や「電気」「横浜火力発電所」「横浜」の三項目についての時代の推移を見ることができるコーナーなど、楽しみながら知識を身につけることが出来ます。
建物の中だけではありません。トゥイニー・ヨコハマの広い敷地の25パーセントが緑地になっていて、誰もが自由に遊べるフィールドアスレチックや自然がいっぱいのトンボ池、遊歩道のある「いこいの丘」など、ここが横浜港の中だということを忘れてしまうような素敵な空間がいっぱいです。
11月にはイベントも開催されるということなので、ぜひ皆さんも楽しく電気を学べる「トゥイニー・ヨコハマ」へ足を運んでみてください。

『トゥイニー・ヨコハマ』
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