■ひろたりあん通信バックナンバー
 2005年8月号
  夏のTCKはルナパーク
  
ロマン勝野の大井競馬場礼賛記

                            

 ギャンブルは滅多にやらないが「賭け事なんか大嫌いだっ!」なんて大声で叫ぶほど嫌っているわけではなく、小声で言わせて貰えば「ギャンブルを楽しむだけの小遣いを貰っていない」というのが真相だ。そして、もっと小声で言わせて貰えば、どうも私は博才が乏しいようで、亭主に不毛の投資をさせぬよう、余分なお金を持たせない方針を貫く私の妻は賢い。

 そんな彼女も麻雀は決して嫌いではなく、友人夫婦と卓を囲むこともある。博才欠乏症の私ではあれ、学生時代のキャリアのおかげで、麻雀だけは人並みに打てる。しかし妻の腕が最低で、夫婦同士の対抗戦は常に敗戦を喫する。「あなたに手ほどきを受けたのが失敗だったわ」不愉快だが、反論できぬ自分が悲しい。

 点数のやり取りだけの、親睦会のような麻雀だから一銭の損失もないが、それでは相手に申し訳ないので、食事はわが家で用意する。サンドイッチがギャンブルから生まれた軽食だというのは有名な話だ。またわが国生まれの「ギャンブル食」が鉄火巻で、博打場は「鉄のように張り切った気持ちで、火のような勝負をする」ことから「鉄火場」と呼ばれたことが由来だという。わが家の「ギャンブル食」はおにぎりだが、大井競馬場を取材した勝野担当以下五名は、ステーキを食しながら競馬を楽しんだというから羨ましい。妻よ、私の小遣いを少し増額するか、せめてわが家の「ギャンブル食」を鉄火巻(願わくば中トロの)にしてはくれまいか?

★ ★ ★

「あっ、アレですね。へぇ〜、初めて来たけど、すごく綺麗じゃないですか!」

 モノレールの窓越しに驚きの声をあげる山本担当。アレとは一年半前に完成した地上六階建て、総席数二七三二。東京シティ競馬が誇る新スタンド『L-WING(エルウィング)』のことです。 今回やって来たのは、そう、東京品川区にある「大井競馬場」別名、東京シティ競馬、略して「TCK」。

 かつて、ひろたりあん紙上に「ウマ馬ライフ」という競馬エッセイを連載し、好評を博…さなかった(笑)私「競馬はロマン!」を標榜する「たまプラーザ店」の勝野が、同僚の中村康彦、中村裕一の両中村担当の二人に「美しが丘店」の深谷担当「市ヶ尾店」の山本担当を引き連れて、アミューズメントパーク「競馬場」の楽しみ方をレクチャー&リポートして、今度こそ好評を博そう!というのが今回の企画なのです。

競馬はロマン
 まだ日が高い夕方四時半。東京モノレールの競馬場前駅を降り立つと、さっそく馬のニオイが…。駅の隣は、厩舎(きゅうしゃ)。この塀の向こうで馬たちは生活しているのです。牧場でのバイト経験がある私にとっては、なんとも懐かしい匂い。すると、深谷担当が「なんか臭くない?動物園の臭いだよ」

 まったく、これだからロマンを解さない奴は困るのです。

「えっ、ナニ?ロバ?あっ、そうだロバの臭いだ。ここにはロバもいるの?」

「ロバじゃなくって『ロマン』、第一ロバなんかいるわけないだろ!馬だよ、馬!。競馬場に来てナニ寝ぼけてんだ」

 だいたい、競馬の馬はね、生産者・育成者・調教師やその従業員、さらに馬主、騎手、さまざまな人達から愛情を受けて育つのだよ。そして、レースに勝つことによってファンはもちろん、その馬に携わった人達、血統を守ってきた人達、たくさんの人達にとても大きな喜びと幸せを返してくれるんだ。昔から続く人と馬との二人三脚。それこそがロマンなんだよ。分かるかな?君たち(アレッ、おーい、聞けよ!先に行くな〜)。

ダイヤモンドターン
 入場料たった百円也のチケットを買って入場すると、目の前にそびえる「L-WING」の雄姿。しかし、ここは後回し。今回私たちが予約しておいた指定席「ダイヤモンドターン」へ向かいます。 場内一番奥の四号スタンドの4Fに上がり、レストランのようなフロントでまずは予約確認。「レストランのような」のは当然で、この特別観覧席は、バイキングレストランになっているのです。白熱するレースを見ながら、料理食べ放題、ドリンク飲み放題(お酒は有料)、とどめにメインディッシュが一品付いて(ナイターの時は二十時までに注文)、もちろんレースも見放題。一日中、競馬と食事を心ゆくまで堪能できるという贅沢な空間です(未成年者、乳幼児は入れません)。

 この店にはカウンター形式の一名席から五十二名まで入れるパーティールームが用意されています。私達五人が通されたのは、二名席が三つ。残念ながら六名席は予約いっぱいで確保できなかったのです。料金は、トゥインクル(ナイター)の時なら二名席で一人五千円。

 各テーブルには小さなモニターが設置されているので、テーブルで予想をして、店内の販売機で馬券を買うことができます。気の合った仲間と大勢で盛り上がるもよし。一人で一杯やりながら予想をするもよし、注目のデートスポットということで、彼女と夜の競馬場でディナーなんていうのもオススメです。
 この日も、私たちの隣の窓際の席には、モニターを見ながら彼氏に競馬のレクチャーを受けている若いカップルの姿がありました(こっちは、暑苦しい男達に、レクチャーしなきゃなんないっていうのに…)

 トレンディドラマのような二人の姿にため息をついてる隙に、その暑苦しい男達は、唐揚げやパスタ。カレーにソーセージを皿に盛りあげてガツガツと食べ始めていました。
 私も軽くお腹に入れたあと、明るいうちに写真を撮ろうと、食事に夢中の三人を残して、裕一担当と場内散策に出かけることにしました。

 ちょうど、パドック(お客さんが馬の調子を見る所)では、次のレースに出場する馬達のお披露目をしていました。各馬ともきれいにブラッシングされ、馬体はピカピカ、たてがみが編まれたオシャレな馬もいます。こうやって歩いていると皆同じに見えますが、人間と同じで一頭一頭性格が違うんです。おとなしいやつ、怖がりなやつ、性格悪いやつ、異性が大好きなやつ。性格だけでなく、毛並みの色艶や筋肉のしなやかさ。レース前のコンディションを見るには、やはりパドックは欠かせません。

 さて、お待ちかねの「L-WING」です。正面玄関を入ると吹き抜けのメディアホール。全面ガラス張りの館内は、明るく清潔感に溢れていて、競馬場にいることを一瞬忘れてしまうほど。各フロアーには、グルメコーナーやグッズショップも入っています。エスカレーターで二階に上がると、目の前に牛丼の「吉野家」さん。

「あっ、牛丼があるじゃない!」裕一担当が嬉しそうな悲鳴を上げました。今や幻の吉牛が食べられるのは、築地とこの公営ギャンブル場の「吉野家」だけ。貴重な牛丼をみんなにも食べさせてやろうと、弁当を一個テイクアウト。パドックを上から眺めながら、一口だけ牛丼をほおばる姿をカメラに収めました。

 さて次は、馬場に面した指定席です。赤と紺の制服を着た美女二人が入り口でお出迎え。まるで、愛知万博のパビリオンのよう(行ったことないですけど)。床にはカーペットが敷かれ、モニターが設置された座席では、ノートパソコンを持ち込んで真剣に予想しているお客さんの姿。ガラスの向こうに馬場が見えなければ、まるで大学の講義室のようです。この指定席には、中華やお寿司の本格的レストランやバーラウンジもありました。

 ダイヤモンドターンに戻る途中。「トゥインクルステージ」でショーをやっていました。この日は、「デキシーキャッスル」による懐かしのジャズ演奏です。このステージでは、ポップスやクラシック、演歌や物真似など、いろいろなジャンルの出演者が連日登場し、お客さんを楽しませてくれます。ステージの横では、クレープ屋さんや勝野おすすめの「ほかほかコロッケ」の屋台も出ています。

競馬場はロマンティック
「どこ行ってたんですか?」 席に戻ると、山本担当が尋ねるので、「吉牛食べてきた」と答えると、「あっ、いいな。僕も食べたい」と深谷担当。「大丈夫。弁当を買ってきたから」すると、裕一担当が「ごめん。一口食べたら、やめられなくなって、全部食べちゃった」の一言。一同ガックリ。

 日もとっぷりと暮れ、場内は「魅惑の森」をイメージしたイルミネーションで彩られはじめました。そしてカクテル光線に浮かびあがる馬場と「L-WING」。さあ、ここからが夜の競馬「トゥインクルレース」のクライマックスです。

「今度のレース、ずいぶん出場馬が多いなあ。あっ、だから大井(多い)か」こんなつまらないダジャレを誰が発したか、本人の名誉のために明かしませんが、結構みんなノリノリです。

「よし、内馬場へ行ってみよう」
 私の掛け声で、全員立ち上がり…と、思いきや「チョッと待って。いまメインディッシュ食べてるところだから」と裕一担当(牛丼食べただろ。まだ食べるのか?)。あれ、山本担当がいないぞ。「山本さんならさっき速攻で、牛丼を食べに行きましたよ」やれやれ、でもこんな楽しみ方もOKなのかもしれません。 内馬場(レーストラックの中庭)への地下通路には、音楽が流れ、青く輝く天井には流れ星。まるでプラネタリウムのようなトンネルは、おとぎの世界へと私たちをいざないます。

 内馬場に出ると、それまでの喧騒が嘘のような静けさ。イルミネーションの向こうに見える華やかなスタンドとのギャップに、あたかも異次元空間に迷い込んだようです。ここには、滑り台などの遊具もあるので、家族連れにはオススメです。テーブル席では家族連れが楽しそうに食事をしています。さながら夜の遊園地。日によってはポニー乗馬(小学六年生生以下)もでき、TCKが大衆レジャーとしての競馬に、力を入れているのがよくわかります。

 売店でソフトクリームを買っていたみんなを、スタンドと反対側の秘密のスポットへと案内しました。ここは照明も当たらず、歓声もまったく聞こえません。耳をすますと、ドドッ、ドドッ、ドドッと砂を蹴る蹄の音。目の前を駆け抜けて行くサラブレッドたち。

「いいですね〜。今にも馬の息づかいが聞こえてきそうですよ」と深谷担当(ようやく競馬はロマンだということがわかってきたのかな)。

 スタンドに戻る途中、二頭の馬に引かれた真っ白な馬車がやってきました。「トゥインドリーム号」の「スタークルージング」です。トゥインクルレース開催期間中、毎日抽選で九組十八名を内馬場から本馬場ゴール付近まで一往復してくれます。「このイルミネーションと大観衆の中、彼女と二人で乗ったらロマンティックだろうな〜。競馬はロマンというのが、やっと分かりましたよ」

「そのロマンとは違うっ!」

 気がつくと、もう最終レースです。私たちは、羽田からのバスの時間を考えて早めに帰路につくことにしました。ホームでモノレールを待っていると、ファンファーレの音が夏の夜空に高らかと響きっわたっていました。

 ナイターの「トゥインクルレース」は、今季十一月四日まで開催されています。これまでのイメージとは違ったアミューズメントな競馬場「TCK」。競馬をしない人でも充分に楽しめます。ぜひ、ロマンを味わいに足を運んでみて ください。               (勝野)

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