■ひろたりあん通信バックナンバー
 2006年3月号
  
港と船のミュージアム
  チーム「ウミQ]の港ヨコハマびしょぬれ航海記

  

車の運転中、ラジオから昔の唱歌が流れてきた。「ふるさと」である。

「う〜さ〜ぎ、追〜いし、か〜の山…」田舎育ちの私の脳裏に、故郷の山河の風景が甦ってくる。

すると横で聴いていた小学生の娘が「かわいそうだよ、ウサギさんを食べちゃあ」と文句をつける。平成生まれの娘が、文語調の歌詞を理解できないのはもっともである。

「美味しいんじゃなくて、追いかけた、って意味だよ」「ふーん、そうなのか。で、追いかけてどうするの?」やっぱり捕まえるのかな。「捕まえてどうするの?」やっぱり食べるのかなあ…。「ほら、やっぱり食べるんじゃない、ウサギさんかわいそうだよ」「…」

憤慨する娘を横に「この理屈っぽさ、誰に似たんだ」と嘆きつつ沈黙する父である。ラジオは「わ〜れは、う〜みの子、し〜らな〜みの…」と続ける。しかし懐古にふける間もなく娘が「これも変だよ、子どもはお父さんとお母さんの子だよ」

海洋民族としての日本人の一面を論じようか、あるいは生命体の起源としての海について語ろうかと思ったが、やめた。

しかし、娘が港ヨコハマを「ふるさと」とする「海の子」であれば「ふるさと」と海とのかかわりあいの歴史を知ってほしいと思う。

港の取材に宮澤担当がついてきたという。「オレは海の男だから」というのが根拠だそうだ。バカ言っちゃいけない、名古屋人丸出しの宮澤が、海の男であるわけがない。食い意地の張った彼は、せいぜい「うみゃーの男」が似つかわしい。
 

★ ★ ★

 一昨年冬の「ヨコハマ山手学術散歩」、昨年秋の「紅葉の三溪園」に引き続き、格安チケットを使った横浜スポットめぐり。今回はその第三弾ということで、みなと横浜ミュージアム・クルーズ【ウミキューチケット】をご紹介します。

 横浜開港資料館、日本郵船歴史博物館、横浜マリタイムミュージアムと帆船・日本丸の入館券に京浜フェリーボートの水上バス乗船券(一区間)がセットになって、通常千七百円のところ、千円と、超お得な「ウミキューチケット」。

 今回も市ヶ尾店の私、小林と江川。そして、どういう根拠か、自称「海の男」を標榜する宮澤さんの三人で取材に向かいました。

豪華客船『飛鳥U』
  2月26日日曜。大さん橋国際客船ターミナルで超豪華客船「飛鳥U」の就航セレモニー(命名式)があると聞いた私は、この日を取材日に合わせました。

 1990年に誕生した「クリスタル・ハーモニー」が、今年2月、横浜港船籍としてデビューしたのです。日本のクルーズ船が横浜港を母港とするのはこの「飛鳥U」が初めてなのです。

 しかし、当日はあいにくの雨。三人が大さん橋に到着したときには、デッキの上は傘、傘、傘で埋め尽くされていました。下の会場では、横浜市出身の女優「岸惠子」さんや中田市長がお祝いの挨拶をしているようですが、はっきり言って、人ごみで見ることも聴くこともできません。

「まったく、よりによってこんな雨の日を選ぶとは…」 カメラにかかる雨の雫を気にしながら、宮澤さんのイヤミが始まりました。

「セレモニーの写真があれば、紙面が引き立つと思ったんですよ」

「明日が出航なんだろ。明日にすればよかったじゃん。こっちはゆうべ遅くまで取材だったんだよ。もう眠いし、寒いし…」

(どんな取材だか?編集キャップも一緒だったというから、どうせ最後は、お決まりのコースに違いありません)

 結局、デッキの一番上から風船が空に舞い上がるのを確かめて撤収。本来の目的、横浜開港資料館に向かいました。

横浜国際女子駅伝
 その開港資料館の前の通り、いわゆる「海岸通り」から、山下公園通りに向かってズラッとこちらもナゼだか人だかり。見ると、揃いのヤッケを着た人達が交通整理をしています。一人の男の人が、聞かれもしないのに「もうすぐ選手たちがここを通過しますよ」と教えてくれました。

(そうか!今日は横浜国際女子駅伝の開催日だったんだ)

「何、駅伝?じゃあ、応援しなくっちゃ!」と、急に元気になる宮澤さん。聞けば、二十代の頃、駅伝の選手だったそうです。(今じゃ、見る影もありません)

 歩道の脇に陣取り、待つこと14分。やってきました。ロシア、ケニア、エチオピアの選手を先頭に8人の選手が次々と水しぶきをあげて通過していきます。この雨じゃ、走るというよりも泳ぐ。選手も大変です。

 その様子をカメラに収め、満足げな宮澤さんに「キューちゃんが来ているらしいですよ」とさっき誰かが言っていた情報を教えてあげました。

「何!キューちゃん?食ってけ〜食っとこ〜食ってるか〜♪」

「それは漬物です。そうじゃなくて、高橋尚子選手が解説で来ているそうですよ」

「Qちゃんが!どこどこ?えっ、赤レンガ倉庫!じゃ、行こう!」

「何言ってんですか。キューちゃんより、ウミキューの取材が先でしょ」

「あ、そっか。そうでした…。じゃ、早く終わらそう」

(まったく、さっきまで眠い眠いって言ってたのに!)

 資料館に入ると、さっそく受付で【ウミキューチケット】を三人分購入します。このチケットは、対象施設ならどこでも購入できる他、みどりの窓口でも販売しています。

 「横浜開港資料館」は、江戸時代から明治・大正期にかけての横浜の歴史資料を集めた資料館なのです。

 第一展示室には「開港への道〜世界史の中の日本」と題して、幕末に来航したペリー提督率いる黒船と、その前後の世界情勢を紹介。幕末の日本、そして横浜の様子を絵画や当時の地図。サスケハナ号やポーハタン号といった黒船の模型などの展示物によって知ることができます。

 二階の第二展示室では、文明開化の頃の横浜の様子や、横浜に数多くある「もののはじめ」。どこで何が始まったかを床面地図により知ることができます。鉄道・生糸貿易・ガス灯・テニスなどなど、横浜が発祥のモノがこんなにあったのか。と驚くとともに、横浜に住んでいることが誇りに思えてきました。新聞店に勤めていながら、日刊の日本語新聞(横浜毎日新聞)が日本で初めて発行されたことも、恥ずかしながらここに来て初めて知りました。

 ふと気がつくと、宮澤さんはソファーの上で横になっていました。

「宮澤さん、きちんと見ないと記事に出来ませんよ。江川さんを見て下さい。メモとりながら真剣に見てるじゃないですか」

「ここには、何回も来てるんだからいいんだよ。企画展の高島嘉右衛門や成島柳北(なるしま・りゅうほく)のことも、ちゃんと勉強したから大丈夫。それに記事を書くのは君でしょ」

「そりゃ、そうですけど…」 (まったく何をしにきたんだか分かりません)
 

日本郵船歴史博物館
 次に向かったのは「日本郵船歴史博物館」。同じく海岸通り沿いにあります。受付で【ウミキュー】チケットに二つめのスタンプを押してもらうと、パンフレットと一緒にコインを渡されました。館内のティーコーナーの自販機にコインを入れれば、好きな飲み物を飲む事が出来るのです。

 常設展は九つのコーナーに分かれていました。ここでは近代日本開運の歴史を、日本を代表する大手海運会社のひとつである「日本郵船」の社史を通して知ることができます。

 各コーナーの床には明かりの点いた羅針盤があり、この羅針盤を踏むと説明のビデオが流れるしくみになっていました。また、詳しい説明はタッチパネルで写真と共に読むことができるなど、歴史を漂わせる外観(1936年に建築された、日本を代表する海運会社の建物)と違って、内部は最新鋭なのです。

 日本初の海外定期航路(横浜〜上海)就航船「高砂丸」や昭和初期に太平洋を彩った豪華客船「浅間丸」「鎌倉丸」など、精巧な大型模型には目を奪われます。

 8月27日まで企画展として『日本郵船クルーズ文化史〜飛鳥U誕生まで』を展示しています。セレモニーは見られませんでしたが、こちらで飛鳥の歴史をたっぷり知ることができました。

 あれぇ、二人がいない。館内を探してみると、宮澤さんはビデオ室でいびきをかきながら寝ていました。江川さんはというと、閲覧室で本を読みながら勉強…と思いきや、やはり寝ていました。

 二人を起こしティールームで目覚ましのコーヒーを飲ませ、博物館を出ます。
 

 

ニッポン大逆転
 水上バスに乗るために、再び大さん橋に戻ろうとすると、またまた揃いのヤッケの人たちが、道をふさいでいました。かれこれ2時間。アンカーの選手が戻ってくるのです。

「この雨の中、水上バスに乗ってもいい絵が撮れないから、歩いてレンガ倉庫に行こう」

突然、宮澤さんが言い出しました。赤レンガ倉庫は駅伝のゴールです。

「ウミキューの施設とは何の関係もありませんよ。目的はQちゃんでしょ」

「いいから、いいから」

いきなり、早足になって遊歩道へ向かいます。しかし、コレが大正解。この日の水上バスは雨天のため欠航していたのです。戻らなくてよかった。宮澤さんの唯一の良さは、このフットワークの軽さと性格の軽さです。(本人曰く、記者の勘だそうですが…) そして、この「ウミキューチケット」の良さは、その日に使えなかった分は、後日いつでも使えるというところなのです。

 赤レンガ倉庫には、ゴールの瞬間を見ようとすでに大勢の方が集まっていました。我々は、ステージの横に陣取って選手の帰りを待ちます。

 いくらもしないうちに、大きな歓声とともにロシアの選手が他を引き離してステージの前を駆け抜けて行きました。三分差で中国。続いてエチオピアの選手。

                        「日本はまだか!」

いや、その後にピッタリとついてくるのは、そう、岡山県のスーパー高校生「新谷仁美」選手です。

「ガンバレ〜!抜け〜!まくれ〜!」

「宮澤さん。競輪じゃないんですから」

 しかし、その声が通じたのか、新谷選手が猛ダッシュ。激しいデッドヒートの末、ゴール寸前でエチオピアをかわして三位に輝きました。雨だか、汗だか、涙だか、顔は歓喜の涙でグショグショの選手たち。ついでに我われのコートと靴もグショグショです。それに、お目当てのQちゃんの姿はすでに会場にはありませんでした…。


 

マリタイムミュージアム
 ずぶぬれの心と体をひきずるように、ランドマークタワーの隣にある「横浜マリタイムミュージアム」に向かいます。その横に係留してある「帆船・日本丸」は船体整備のために、こちらも残念ながら見学できませんでした。

 マリタイムの意味は「海事」、つまり海に関するあらゆる事柄です。このミュージアムは、横浜港を中心とした港と船がテーマになっていて、横浜港だけでなく世界の港の歴史や船の変遷を知ることができるのです。

 細長く扇状に広がった館内には、海に関する情報がつまっています。江戸時代から現代までの船の模型。横浜港全体を模したジオラマや映像を使って、港湾や海運の様子を知ることも出来ます。

 風向きに合わせて帆を張ったり、向きを変えたりしながら帆船の航海の様子を日本丸の模型を使って楽しみながら知ることができる帆走シミュレーションゲームにはハマリます。もうひとつ、横浜港を航海計器を操作しながら運転する「電車でGO!」ならぬ、「船でGO!」これが面白い。

「船長の指示どおりに船を運転すればいいだけでしょ。簡単ですよ」

江川君が、挑戦してみました。

「とりかじ〜、三十度〜!」

「えっ、えっ、ち、ちょっと待ってよ」

 濡れたコートと傘を片手に、舐めてかかったのが運のつき。舵を回す手が間に合わず、「GAME OVER」。少しでも操作が遅れると容赦ありません。

 ミュージアムを出ると、目の前には雨に打たれながら眠る日本丸の姿が。白い船体に4本のマスト。地球を約四十五周半(延べ183万キロ)にもおよぶ航海を経験したとは思えない美しさです。

 今日一日。雨に降られ、思うように行動できませんでしたが、海を身近に感じることができました。陸の横浜に住んでいると、海の横浜を意識しないで生活しているんだな。と今さらながら実感しました。

 まだチケットには日本丸と水上バスの分の枠が白く残っています。また、このチケットを使って遊びに来よう。皆さんも、ぜひウミキューチケットを使って海を体験してみてください。                                (小 林)

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