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「晴耕雨読」という言葉に憧れを持っている。
お天道様のご機嫌のままに、何考えるでもなくわが身をまかす…そんな自分を想像するのは楽しい。もし人生をやり直せるなら、職業の選択肢の一つに「農業」を加えていいとも考えている。
ただし、首都圏近郊にまとまった農地を持っているのが条件ではある。その農地を売ったお金で、のんびり暮らすという選択肢も残しておきたい、と考えるのは生まれついての怠け者だという証左ではあるが。
しかし、残念ながら今の自分はしがないサラリーマンだし、晴れようが、雨が降ろうが、ヤリが降ろうが(ヤリが降ったらちょっと恐いが)出勤せねばならない。
「今日は雨だから、まあいいか…」なんて考えたら、家族が路頭に迷う。仮に晴れたとしても、耕す田地は持っていないのだ。
しかし、そんなわが家にもネコの額ほどの庭があり、妻はそこで園芸に勤しむという趣味を持つ。ただ、彼女の不幸は、夫や娘が自分の趣味にあまり興味を示さないという点にある。雑草が目立ち始めた初夏、嫌がる娘を強引に草むしりに借り出し、せっかく植えた枝豆の苗をすべてむしられたという悲しい過去もある。
ネコの額ほどの庭で、亭主の酒のつまみを調達しようとするのは、やはり無理があるのだ。「家庭菜園でも借りようか?」妻が私に提案する。晴耕雨読に憧れる私であれば、反対する理由はないはずだが、反面生まれついての怠け者であれば、二の足を踏むのも事実である。彼女の夢の成就は、私が今の仕事からリタイヤする時期まで、待つ必要があるらしい。
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市ヶ尾の東名高速横浜青葉インター下。鶴見川の河川敷に広がる広大な農地の一画。ちょうど青葉警察署の裏から谷本川(鶴見川)を挟んだ対岸に、その不思議な名前の農園はありました。
「がしゃぽん? …なんだって?」
「がしゃぽん農園です。栽培体験収穫ファームって書いてあったから、作物を育てて収穫するまでを体験できるんだと思いますよ」
「ふ〜ん。その農園を取材するってわけね。ところで、その『がしゃぽん』って、どういう意味なの?」
「えっ…いや…それは…さぁ〜なんだろう?」
会議の席。もえぎ野店の企画に、各担当者からあがった名前に関する質問。その疑問はもっともです。でも、まだ取材に行ってないんだから、わかるわけがありません。
「あ、あのポンキッキに出てきた緑のイモムシのことだろう」と、司会の宮澤さん。
「違います。(キッパリ)あれはガチャピン。しかもイモムシじゃなくて恐竜の子どもです」
「じゃあ、あれだ。二百円だかを入れて、レバーを回して、ガラガラッ…」と、編集キャップ。
「そりゃガチャポン。…つまんないから、もういいですよ」
一同 「・・・」
七月二十二日土曜日、さっそく「がしゃぽん農園」に私、勝野と同じくもえぎ野店の若松担当の二人で向かいました。
ずーっと気になっていた「がしゃぽん」の意味は、園内に入ってすぐにわかりました。「これが『がしゃぽん』なんですよ。ほら、ガシャポンって音がするでしょう」
入口を入って右手、この農園の先生(園主の娘さん)滝沢さんが指さすところには、昔懐かしい「手押しポンプ」がありました。
「あっ、な〜るほど」さっそく、無邪気な若松さんがガシャポン、ガシャポンやりながら水を出して手を洗います。
「うひゃー、冷たくて気持ちいい♪」
トホホな二人
さてモヤモヤが解消できたところで、滝沢さんに農園内を案内していただくことにしました。ナスやトマト、きゅうり、、。とうもろこし、などなど、きれいに区画された畑には、この季節の旬の野菜が「早くもいで〜」といわんばかりに沢山実っていました。
まずは、ピーマンとナスを収穫します。大きくなったものを選んでハサミで一個一個収穫していきます。
「作るのは大変だけど、収穫するのは簡単だから(笑)」と滝沢さん。
丹精込めて作られた野菜のイイトコドリとはまさにこれ。初めての経験ですが、意外と茎が柔らかくてホント簡単です。
「枝豆も今がいい頃ですよ。大きいものと小さなものがあるときは、一つ一つもいでいたんですけど、もう下まで実がなっているのでいっぺんに抜いてしまってください」
「うんしょっ!」と、これも簡単です。
今日は、これを塩ゆでして生ビールだな。ウヒ♪
「根っこは、ここでポキッと折っちゃってください」
「これ全部もいで、もういっぺん植えたら、また豆ができるんですか?」
「??。アハハハ。ダメダメダメ、もうおしまい」
どうやら馬鹿なことを聞いてしまったようです。
「オイオイオイオイ。心配で来てみたら案の定だよ。大丈夫か?」
後を振り返ると、いつの間に来ていたのか宮澤さんが立っていました。すぐ近くの「谷本川水辺の広場」で行われている「いかだで遊ぼう」というイベントの合間を縫って駆けつけたとのこと。
「何度もいでも、植えとくだけでまた実るんだったら、もうウハウハですよね〜♪」と滝沢さんと顔を見合わせて大爆笑。
「ウハウハ」なんて死語を平気で使う、あんたセンスの方が爆笑もんですよ。
「でもね。豆をもがないで、これをそのままずーっと置いておけば、黄色くなって大豆になるからね」という滝沢さんの言葉に、今度は若松担当と私が顔を見合わせます。
「えーっ!そうなんですか?大豆って枝豆だったんですか?えっ、ということは、枝豆が豆腐や納豆になるのか〜。へぇ〜!」
「うそ?まじ?そんなことも知らないのかよ〜…トホホ」頭をかかえる宮澤さん。
滝沢さんは嬉しそうに「ね、若い人って面白いでしょう?(笑)」と優しい一言。
「いや…。この二人、そんなに若くないんですけど…」
「ま、いいじゃないですか」
気をとりなおして、農園で実際に野菜を育てていらっしゃる参加者の皆さんにお話を伺うことにします。
収穫量にびっくり
まずは、今年でがしゃぽん農園歴二年目を迎えた、藤が丘のM・Kさん(女性)です。
「もともと好きで、自分で家庭菜園をやっていたんですが、我流でやってもなかなかタイミングとか難しくて、うまくいかなかったんですよ。でも、ここに来てこんなに沢山とれるんだとびっくりしました。ナスとトマトを同じところに植えちゃいけないとか、どこに何を植えるのか、スケジュールもすべて教えてもらった通りにやるだけなんですけど…。とうもろこしは、とってすぐ食べると本当に甘いんですよ。(これは農園で私たちも実体験、本当にみずみずしく甘いんです)。枝豆だって粒が大きくすごくやわらかくて美味しいんだから」
「そうですか。枝豆って、ほっておくと大豆になるって知ってました?」
「おほほほほ」
やっぱり、知らないのは私たちだけだったようです。
農園には、基本的に週一回、収穫のときは一日おきくらいで、毎回自転車で通っているそうです。
「夏は特に一日置いたらお化けのようなきゅうりになっちゃうのよ」
新鮮な野菜を収穫して食べることはもちろん。農園に来る人達とコミュニケーションをとって楽しめるのが、なりより楽しいとのことでした。
愛情が一番
次に伺ったのは、松風台にお住まいの「がしゃぽん農園広報担当?」向(むかい)さん(男性)です。
「私は第一期生なんですよ。もう五年になる大ベテランです(笑)。何が楽しいかっていうとね、皆さんとの出会いがあるじゃないですか。それが非常に楽しいね。そしてね、ここに来たらワガママが言えるじゃない(笑)。そういうことが一番いいことだと思うんですよ。難しいことなんて何一つないな。作業の指示を一から十まで手取り足取り教えてくれるので、初心者の方でも大丈夫。苗も肥料も全て用意されているので、私たちは肉体労働するだけですよ」
純粋に作物を育てて収穫を楽しむことだけに専念できるのです。
「参加してる人も千差万別、二十代から七十代まで、いろんな人がいますよ。みんなで一緒にワイワイガヤガヤできる、そういう場所なんです。十一月の中頃には収穫祭もあって、臼でお餅をついたり、レンガを組んで自分たちでかまどを作って、焼き芋や、けんちん汁を作ったりして楽しいんだ。百人近くの人が集まり、とても賑やかなんだよ」
収穫した野菜は、近所の方に配ったり、自治会の集まりで差し上げたりして喜ばれているそうです。
「皆が同じ物を植えて収穫するから、隣と比べてみたりできるんですよ。用事などで都合が悪いときは『お願い』と言うと、他の人が手伝ってやっていてくれたりもするんですが、自分の責任範囲でやらなきゃいけないね。タイミングが一週間でも遅れると、生き物ですからね、出来の違いがすぐわかるんですね。ほら、あのトマト見てくださいよ。よくできてるでしょう?」
隣の方のトマトは確かに大きいです。
「あれはねアハハハ。一週間さぼった証拠なんですよ。アハハハ」
言われた当人も周りの人たちも大笑い。本当に楽しそうです。
「愛情ですね。細やかに草をとったり、きちっとやることがいい野菜を作る秘訣だね。だから、気持ちの細やかな女の人に対して優しいんだよね、野菜は。能書きをたれて、手を抜くと、ああいう結果になるんですよアハハハ」
とても元気で気さくな向さんは、この農園のムードメーカー。農園を盛り上げようという気持ちが伝わってきます。「枝豆は大豆?」っていう質問は、遠慮しました。
子どもを育てるように
若い男性(たぶん私たちよりも…)にもお話を聞いてみました。千草台の石田さんは、インターネット(横浜市の環境創造局のページ)で農園のことを知り、それで興味を持って応募されたそうです。
「実家が農家だったので、しばらくぶりでやってみたいなと思ったんです。まだ始めて三ヶ月なんですけど、共同作業は週一回、朝は二日に一回来ています」
野菜を育てていて一番楽しいことは何ですか?
「獲れたての新鮮なものが食べられるということですね。形はスーパーとかで売っているほうがいいのですが、味を比べれば、農園で育てているほうがだんぜん味が濃くて深みがあるんです。それが、もぎたての野菜の良さですね」
野菜作りで難しさを感じるところはありますか?
「今年トマトが病気になったんです。葉が枯れてきてしまって、一回病気になると、どう回復に向けて対応していくかが難しいですね。農業試験場から『今年はトマトに新種の病気が出ていますよ』という報告があったんですが…。でもトマトが実ってから葉が枯れるので、トマト自体は赤くなりおいしかったですよ。他の悩みは天気ですね。今年は雨や曇りの日が多いので…。でも、だからこそ面白い。雨が多いと水をあげなくていいという利点もありますし(笑)」
私達の仕事にとって、雨は憂鬱以外のなにものでもありません。でも当たり前ですが、作物にとっては無くてはならないものです。
収穫した野菜は、どうやって食べているのでしょう?
「トマトだったら瓶詰めにして保存できるようにして、後でスパゲティのソースに使ったり、他の野菜だったら冷凍にして、野菜の価格が高い時にそれを使うとか…。だから野菜の価格が上がってもあんまり困らなかったですね。人にあげたいくらいで(笑)。会社に持っていったりすると喜ばれますし、いつも食卓に漬物やサラダがあるというのは、健康にも凄くいいでしょう?」
また、一生懸命作業したことに対して結果が必ず出るということが素晴らしいと石田さん。
「今の仕事と対比させながら、色々感じるところがあります。まだ子どもはいないんだけど、なにか子どもがどんどん育ってくれてるような気持ちになりますね。全然経験の無い人でも、純粋に楽しめるので。最初は農作業なんて、と思う方もいるかもしれませんが、まずは最初の一歩。多くの方に参加してほしいですね」
汗を流し、自分で手塩にかけて育てた野菜は、口にしたとき言葉にならない感激があるそうです。
農業の本質は命を育てるっていうこと。育て実ったその結晶が、また人の命を育てる。だからこそ、愛情をいっぱい注ぎ込む…、そういうことなんでしょうね。
「取材に来てよかったよね」
「うん、枝豆が大豆だって知ることもできたしね」
「…」
こんなとぼけた若松担当も、三つの命に愛情をいっぱい注いでいるパパなんですがね。
(勝 野)
 
《がしゃぽん農園ご案内》
☆日時=土・日AM9時〜12時の間
滝沢さん達が追肥等、諸々の 作業を説明してくれます。
平日は収穫や草取り等、来られる方は毎 日来ています。(基本自由です)
☆費用は年間3万円=種や肥料、道具も全て農園が用意してくれます。
スケジュール作成、アドバイスもします。皆さんは体ひとつでOK。
☆期間=4月中旬〜翌年の2月上旬まで
その後、2ヶ月位はトラク ターでおこし、休ませます。契約更新可。
7月下旬現在、3区画の空きがあります。
滝沢さん宛てにご連絡いただければ今からでも出来ます。(要確認)
来年4月からご希望の方は、お申し込み順です。
☆駐車場=農道なので、脇の方に停めてもらえます。
☆問い合わせ先=担当の滝沢さん迄
TEL.045−975−2548(12〜13時、19〜21時)
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