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昔の話である。田舎に住む私の友人が独身の頃
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残業をようやく終え、夜半家路に急ぐ…「あー、疲れた、帰ったら、ビールを飲むぞ」彼の脳は、すでにビールの泡にまみれていた。その気持ちはよくわかる。思う存分飲んでくれ。
ところが、家に帰って、冷蔵庫を開けると、ビールが入ってない。テーブルの上には、ビールの空き缶がずらっと並んでいる。どうやら先に帰ってきていた彼の兄も、同じ気持ちでいたらしい…。
悄然とたたずむ彼、こういうのを「不測の事態」と呼ぶ。ビールがなければ、酒でも焼酎でもウイスキーでもいい、すでに飲まずにはいられなくなっていた彼は、家中探したが、運悪くすべて切れている。ふと見ると、父親が常飲している「養命酒」があった。手に取るとボトルに半分ほど残っている。
「アルコール度14%か…」翌朝、猛烈な二日酔にのた打ち回る彼のそばに、養命酒の空瓶が転がっていた…。「健康のための養命酒で、健康を害したのは、オレぐらいだな」会うといまだに妙な自慢をする。
「やっぱり、不測の事態への備えは必要だよな」そんな話を思い出したのは、今まさに私が「不測の事態」に直面しているからである。予定していた特集の企画が飛んでしまった。急遽代替の企画を立て、宮澤担当に取材を頼んだ。しかし圧倒的な時間不足で、入稿日のお昼を過ぎても、まだ彼の原稿はあがってこない。今日は娘の誕生日で、早く帰る約束をしてきたが、どうやら守れそうにない…。あーあ、「養命酒」でもあおって、酔っ払いたい気分である。
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夏の日差しが川面にキラキラと反射してまぶしい。鶴見川に黒須田川が合流する市ヶ尾高校裏手の「水辺の広場」では、数羽のカルガモがのんびりと毛づくろいをしている…。
(ちょっと!ちょっとちょっと!ちょっと。どこかで読んだと思ったら、一年前の特集とまったく同じ書き出しじゃないの!また鶴見川をケッタマシンで走ろうってゆーの? )
あら、ばれちゃいましたか。しか〜し、今回は鶴見川(谷本川)ではありません。その支流の黒須田川なのです。だから、ケッタマシンも使いません。テクテク歩きます。
(黒須田川の源流って確か麻生区の王禅寺でしょ?そんな短い川だったら歩くのはあたりまえ。それでテーマは何なのよ?)
テーマ?よくぞ聞いてくれました。テーマは『生まれ変わる黒須田川』
(なるほど、青葉区が黒須田川の環境整備に取り組むって話ですからね)
そしてもうひとつ『青い鳥をもとめて』。
(は〜?青い鳥? メーテルリンクですか?)
いやいや、本物の『青い鳥』です。チルチルとミチルでもザ・タイガースでもトヨエツ(豊川悦司)でもない。
Wanderin' Destiny♪ 今回は『幸せの青い鳥』を探して黒須田川を歩きます。
黒須田川環境整備プラン
お盆明けの土曜日、子金橋の河川敷において「生き物調査」のイベントが開催されました。
稲荷前古墳群(青葉区大場町)の山麓にある子金橋下の河川敷は、黒須田川でただ一箇所だけ、水にふれることのできる憩いの場所です。
これまでも「黒須田川クリーンクラブ」や「川を楽しむ会」など、地元愛護会の皆さんによって「生き物調査」や「水質調査」が定期的に行われてきましたが、この日は青葉区の主要事業として今年からスタートした『黒須田川環境整備プラン』その一環として、横浜市の環境創造局と青葉区役所の共催によって、調査が実施されたのです。
当日は、愛護会の皆さんと近隣住民、親子連れ、約三十名の方々が参加されました。
まず最初に水質検査を行います。ph試験紙やCODといった方法(水に含まれる酸素量を調べることによって水が汚れているかどうか知ることができる)で検査します。
検査のあとは職員の方の指導のもと、投網(とあみ)やタモ網を使って川の中の生き物を採取します。
こども達は素足にサンダル、大人は胴付きの長靴をはいて膝まで水に浸かり、生き物のいそうな場所を探します。そうしたら足を使ってタモ網に魚を追い込みます。
「あっ、いた!」 「エビもとれたよ」
あちこちで、こども達の歓声があがりました。大人も童心にかえって一心不乱、網をのぞきこんでは一喜一憂。
約一時間の漁を終えると、こんどは採れた生き物の調査です。川が汚れているか綺麗なのかは、そこに住む生き物を見ればわかります。
ドジョウ、オイカワ、カワヨシノボリ、タモロコ、モツゴなどの魚に、スジエビ、ザリガニ、そしてなんとシジミまでいました。(それもデカイ!十三湖のシジミみたい)
そのシジミの写真を撮ろうと立ち上がったその時。「ヒュン!」と、青い光が顔をかすめて飛んで行きました。みんな下を向いていたので、それに気づいたのは数人だけ。
「えっ、もしかして今の…?」 思わず目と目を見交わしました。
一瞬のことではっきりしませんが、あの青い色はカワセミに違いありません。なんと、黒須田川にカワセミがいたのです。
歌川橋→子金橋→黒須田橋
さて、その数日後。私は市ヶ尾高校裏の黒須田川の河口から源流に向かって小さな旅をスタートさせました。
最初に横浜上麻生線と交わる橋を渡ります。因みにこの橋の名前は「歌川」といいます。浮世絵師のような名前は、このあたりの字名でもあります。
新編武蔵風土記稿(しんぺんむさしふどきこう)という江戸時代に書かれた書物には、「谷川一條北の方 王禅寺村より、南の方鶴見川へ合せり…うた川と唱う」と記されています。黒須田川自体が、昔「うた川」と呼ばれていたのです。
サラサラと歌うように流れる川だからこの名がついたという説もありますが、歴史探偵的に推理をすると、ウタはアイヌ語のオタ(砂=砂金)が訛ったものではないかという解釈になります。
と〜っても、マユツバな話ですが、「うた川」という字(あざ)の周辺に「子金岡」や「金水谷戸」なんて字名があったり、それから…。あ、これを話すと長くなるので、興味のある方はホームページの『地名推理黒須田・鉄町編』をご覧ください。
歴史探偵 高丸の地名推理ファイル 鉄・黒須田編

その、とっても疑わしい歌川橋からは川沿いに道はありません。なので、大きく左に迂回します。はま梨の畑をまわりこみ、二つめの「河戸橋」横のセブンイレブンの前の路地を入って150メートルほど歩くと、生き物調査が行われた「子金橋」に出ます。
この橋から眺める黒須田川の景観は最高です!
赤い欄干の橋の途中には、四箇所のビューエリアが設けられています。とくに桜の季節は絶景!青葉区の隠れた名所といってもいいでしょう。
橋の上からしばらく川面を見下ろし、目を凝らしてカワセミを探しますが、やはりいません。そう簡単に幸福の青い鳥が見つかるはずがないのです。
子金橋からは、川を右手に見ながら進みます。対岸の「黒須田川二号遊水池」の高い壁に『壁面緑化植樹』の張り紙が見えます。さる8月6日の日曜日、先述の整備プランのひとつとして、この遊水池の壁面下に「すいかずら」の木が植えられました。冬でも葉が枯れないので「忍冬」の別名がある樹です。うまく育ってくれれば、来年の初夏には綺麗な花を咲かせることでしょう。
遊水池を過ぎると「豊隆橋」、そして、そのほんの数メートル間を置いて「黒須田橋」が架かっています。
黒須田川に限らず、都会の河川は全体がコンクリートの護岸とフェンスで固められているため、近くを流れていながら、私たちの生活とは遮断されてしまっている感があります。そこに自然の息吹きなど感じようもありません。
しかし、それは私達の大いなる誤解なのです。姿かたちはコンクリートの側溝のように見えても、川は死んではいません。堆積した土砂やヘドロ、ブロックの隙間からも草は萌え花は咲きます。濁流に洗われても、洗われても、新しい命が生まれてくる。自然の強さをそこに見ることができます。
青い鳥を見つけ〜たよ♪
黒須田橋の上で、自然の生命力に思いをはせていたら、足元の橋の下からソレは現れました。メタリックブルーの弾丸。その残像が水面すれすれに飛んで行き、五〇メートルほど上流のススキの穂に着地しました。
逃げないようにそっと近づきます。五、四、三メートル。間違いない『幸福の青い鳥』カワセミ君だ。なんとあっけない。でもラッキー♪フラッシュを焚いてシャッターを切る。意外なことにピクリともしません。
せっかくだから飛び立つ姿も写そうと、息を殺して待ちます。五分…十分…十五分…真夏の日差しがジリジリと顔や腕を焼く。
(早く飛べ〜〜〜え…)
わざと大きな声を出したり、手を上げたりしても、小首をかしげるだけ。
(う・・・っ、もう限界。)幸福の青い鳥ならぬ降伏の青息吐息だ〜。
目に入った汗をぬぐおうとした瞬間!無情にもススキを蹴立てて飛び立ってしまいました。トホホ!
二つの川
早々と目的をひとつ達成したので、この先は、はしょります。(ウソです)
次は「権現橋」この近くに先々月号で紹介した「権現様の湧水」があります。今はすっかり閑静な住宅街となっていますが、開発前は「美味しい」と評判の米のとれる田んぼが川の周囲に広がっていました。
近隣の農業を潤おし、釣り人たちを楽しませるほど豊富な水量を誇っていた黒須田川ですが、反面曲がりくねった暴れ川としても有名でした。
改修されて大人しくなった川は、黒須田からすすき野までまっすぐに伸びています。
「さつき橋」「錦橋」、黒須田川は橋の名前に情緒があります。続く「紅桐(べにきり)橋」で黒須田の町と別れ、すすき野ともみの木台の境に沿って歩きます。
水量が減ってきているせいか、水が少し汚くなってきました。黒須田川は、基本的に生活用水は流れこんでいないことになっていますが、この辺りの水の色を見ると、どうも怪しく感じます。
すすき野の町を抜けると、川崎市麻生区に入ります。美しが丘西との区境に沿って、武蔵工大原子力研究所の山を大きく右に回りこみ、「たま日吉台病院」の辺りで二股に分かれます。源流は二つありました。
一方はそのまま日吉の辻の交差点まで進み、そこから山王神社のある山の麓に沿って北上します。どうやら日吉の交差点の辺りが、源流点でしょう。
もうひとつは、延命地蔵尊と山王神社の間の「健康とふれあいの広場」を抜けて北上し、「ヨネッティ王禅寺」の敷地内で消えていました。そういえば、この山を一つ越えたところ(美しが丘西)に早渕川の源流があります。ということは、この辺りの分水嶺に降った雨が二つの川に分かれ、一方は市ヶ尾、もう一方は綱島で同じ川(鶴見川)に注いでいるわけですね。なんだか不思議な感じがします。
川は歌ってる♪
いずれにしても、鶴見川の源流のように、綺麗な清水がコンコンと湧き出ているような風景にはお目にかかれませんでした。それでも、この辺りを流れる川の水は思った以上に澄んでいるようです。全体を通しても、それほど汚いとは感じません。しかし、川の汚れは見た目だけでは分かりません。水量が少ない場合、藻類(チャヅツケイソウ)などによって汚くみえることもあります。
では、「生き物調査」の結果はどうだったでしょう?
「大変きれい」「きれい」「ちょっと汚れている」「汚れているの」の四段階のうち、二番目の「きれい」ということでした。残念ながら「大変きれい」には届きませんでしたが、それに近い結果が出ました。
30年ほど前、カドミウム汚染といった公害問題が起き、近年でもダイオキシンが取りざたされた黒須田川。しかし、近隣住民の皆さんや愛護会の方々、行政の努力によって、確実に、一歩一歩、川は蘇ってきています。
黒須田川で10年以上、毎月定期的に川の清掃をされている「黒須田川クリーンクラブ」の本山さんにお話をうかがいました。
「こちらに引っ越してきたときに、川の中に自転車やゴミがやたらと捨ててあるのが気になったんですね。それで知っている人たちに声をかけて清掃活動を始めたんです。ゴミにヘドロが引っかかって、それに草が生えてきたりするんですけど、そこをどかしてみると、たいがい自転車があったんですよ。三台も四台も一箇所から出てきたり、のべでは四十台くらい出したんじゃないですかね。やっぱり綺麗にするとゴミも捨てなくなるんですよ」
側道のプロムナードの草刈や清掃もされていますが、最近は、犬の糞を片付けない飼い主もいるそうです。
「別に僕らと一緒じゃなくてもいいですし、身近なところでいいので、ご近所の人たちと声をかけあって、(清掃活動)をやってみてください。やってみると意外と楽しくできますよ。せっかくある自然を大事にしたいので、協力してもらえるとありがたいですね」
ぜひ、川のそばに来てください。ほら、歌が聞こえるでしょ。青い鳥もこんなに近くにいるのです。
宮澤高広


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