■ひろたりあん通信バックナンバー
 2007年10月号
 山来た、川来た、秋が来た!
  ノンキーカルテット 山北・丹沢湖周遊記

 「世界の三大珍味って何か知ってる?」小学生の娘が私に質問する。

 「キャビア、フォアグラ、トリュフ…」私の回答に、横から妻が声をかぶせて妨害する。

「イクラ、あん肝、松茸、ただし松茸は中国産。これがわが家の三大珍味よ」真の三大珍味を食した経験のない娘を牽制しているようだが、教育的に問題はないだろうか。

 あれほど残暑が続いたのに、いつのまにか秋だ。スポーツの秋、芸術の秋、読書の秋…、しかしわが家において一番は「食欲の秋」だ。

 ようやく夏バテから解放されるころ、新米、さつまいも、柿、栗、松茸(ただし中国産ね)…と、大地は実りの時期を迎える。味覚の秋、なんて自然は優しいんだろう。

 「でも、ついつい食べ過ぎちゃうのよねえ」ダイエットとの腐れ縁を、なかなか切ることができない妻がこぼす。

 「天高く馬肥ゆる秋だものねえ」娘が母親を茶化すが、本来は、夏の間にたらふく牧草を食み、力を蓄えた馬に乗って襲来する北方騎馬民族を警戒せよ、という意味の古代中国のことわざだ。

 「だから君の場合『天高く私も肥ゆる秋』と使えば、食べ過ぎの警鐘にはなるよね」しまった、口が滑った。怒った妻は、北方騎馬民族よりも怖いのだ。

 こうして「食欲の秋」は、わが家では禁句になった。ならば「行楽の秋」でどうか。丹沢湖周辺の紅葉は来月に見頃を迎えるらしい。そしてきっと、秋の味覚だって味わえるだろう。わが家の三大珍味のひとつ松茸(ただし中国産)は、今年も無縁そうだが、丹沢には舞茸がある。キノコならいくら食べても太らないだろう。
 


★          ★          ★ 

鉄道の町・山北
 
東海道線は、かつて箱根の北を通っていた。国府津から御殿場を抜けて沼津まで、険しい箱根の難所を「なんだ坂、こんな坂、シュシュポポ♪」と陸蒸気(おかじょうき)が黒い煙と白い湯気を吐きながら越えていったのだ。現在の御殿場線がそれである。

 箱根越えの基地、東海道線の要衝であった「山北駅」は『鉄道の町』と呼ばれ、大いに賑わった。レンガ造りの機関庫、賑わいをみせる駅前の商店街、御殿場線となった山北駅の駅前にある「ふるさと交流センター」の二階には、当時の町の様子や陸蒸気(SL)の写真が展示してある。

 最近、埼玉県の大宮に「鉄道博物館」が完成したが、この山北にこそ記念館を造ってもらいたかった。

 冒頭から鉄道の話になってしまったが、私は鉄道バカの大塚担当ではない。歴史が専門である。

 山北町には、駅から歩いて20分ほどのところに南北朝から戦国時代までの山城「河村城址」がある。

 戦国時代は、小田原北条氏の支城として、武田信玄の侵入を阻んだという堅牢な城だ。堀や土塁跡など、当時の遺構が確認できる。また駅から城跡までの道は「美しい日本の歩きたくなるみち500選」に選ばれた桜の名所でもある。城跡から更に奥には、「日本の滝百選」に選ばれた「洒水の滝(しゃすいのたき)」と、なかなかの…

(あっ、来た来た。おーい、こっちだ!)どうやら、お迎えが到着したようだ。



やまなみグッズって・・・?
 
「あっ、あそこにいるの、そうじゃない?」

 ハンドルを切って、山北駅の構内に入ろうとした邊土名担当があごをしゃくる。

「そうだ、宮澤さんだ!」後部シートの吉村担当もうなずく。

 見ると、「ふるさと交流センター」の黄色い建物の前で手を振っているのはまぎれもなく宮澤さんです。

 東名高速を使い、ひと足早く到着していた私、三野(さんの)と邊土名担当の「東名高速各A停車の旅」コンビに吉村担当を加えた荏田店トリオは、宮澤さんが到着するまでの時間を使って、すぐ近くの「洒水の滝」まで行ってきたのでした。

「どうだった?洒水の滝」後部座席に乗り込みながら訊ねる宮澤さん。

「それが、工事をしていたので滝まで行けませんでしたよ」

「あれっ、たしか仮設の観瀑台が設置してあるはずだぞ」

「えっ、そうなんですか?おかしいな〜、ちゃんとカーナビをセットしたんですけどね〜」

「工事が始まったのが九月だから、カーナビに出るわけないだろ。ちゃんと下調べしたの?」

「はぁ」

「ま、いいじゃないですか。滝だけに水に流しましょう。で、次は?」まったく意に介していない邊土名担当。

「とりあえず記念館だな」

 宮澤さんの指示で向かったのは、丹沢湖の真ん中にある「丹沢湖記念館」。 丹沢湖誕生を記念して建てられた多目的施設です。

「三保の家(旧渡辺家)」という茅葺き屋根の古い民家が隣接していました。今は湖底に水没した世附(よづく)地区にあった江戸時代の民家を、移築復元した物だそうです。中にはダムに沈む前の風景写真や当時使っていた道具などが展示してありました。

 記念館の玄関を入ると、地元の特産品やお土産が売られていました。今朝採れたばかりの生椎茸の横には、お客さんが自分で量るのでしょうか、秤が置かれてます。なんと百グラム一五〇円! でも安いのかどうか、主婦じゃない僕にはわかりません。

 宮澤さん(もちろん主婦ではないけど)なら知っているかも、と思い探すと、キョロキョロと土産物売り場を物色していました。もしかして、またキティちゃんでも探しているのでしょうか?

「違うよ。舞茸を探してるんだよ」

「えっ、舞茸のキティちゃんがあるんですか?」

「ないよ! ホンモノのマ・イ・タ・ケ。ここの舞茸は原木栽培だから、野生の舞茸のように肉厚で香りが良くて美味しいんだよ。『丹沢まいたけ』といって、やまなみグッズの一つだよ」

「やまなみグッズ?…なんですか?」「おいおい、相模湖・津久井湖・奥相模湖・丹沢湖・宮ヶ瀬湖を『やまなみ五湖』と呼んで、その地域の地場産品を総称して『やまなみグッズ』って言うんだよ」
 

取材は計画的に!
 
まったく荏田店の三人組には呆れる。自分たちが出した企画なのに下調べもしてない。舞茸は売り切れてるし…泣けてくる。

 頭を抱えながら車に乗り込むと、三野担当が「ボートに乗りますか?」と聞いてきた。(男四人でボートかよ!)

「いや、それより森林館と薬草園がいいんじゃないか。湖の東の先にあるはずだから」

 記念館から反時計周りに車を進ませて向かったものの、なんと、どちらも駐車場に鎖がしてあるではないか。この日は水曜日で施設の一部は休館になっていたのだ。

「よりによって…なんで水曜日に取材なの〜」

 

富士見百景「千代の沢園地」
 
隣の「丹沢湖ビジターセンター」だけは開いていました。ショックで落ち込んでいる宮澤さんに替わって三野がレポートします。

 丹沢周辺には、先月紹介した宮ヶ瀬や、秦野、そしてこの丹沢湖にビジターセンターがあり、様々な形で丹沢山系の自然が紹介されています。

 掲示板には自然散策をされたお客さんの「アナグマ発見!かわいかったよ」というような書き込みがされていました。僕たちも周辺をグルッと回っているうちに珍しい発見があるかもしれません。

 気がつくと、落ち込んでいた宮澤さんが、案内の女性の方に何やら話しかけていました。ついに取材をあきらめてナンパに走ったか! と思ったら、丹沢湖の見どころスポットを教えてもらっていたそうです。さすが年の功。

「関東の富士見百景に選ばれている『千代の沢園地』があるそうだよ」

 宮澤さんが仕入れた情報では、この展望台から見る富士山はひときわ綺麗だとのこと。駐車場に車を停めて、歩いて展望台まで登ります。

 僕たち三人は普段配達をしているので平気なんですが、デスクワークが多く運動不足の宮澤さんはというと…

「ぜぇぜぇ!はぁはぁ!」今にも死にそうです。

 なんとか展望台に到着。情報どおり丹沢湖が一望できる絶好のロケーションです。湖の水が少ないのが難ですが、すばらしい景色です。で、富士山はというと…残念、雲に覆われて見えません。

 読者の皆さんには、是非とも紅葉シーズンの雲の無い晴れた日にここを訪れることをオススメします。あ、水曜日も避けたほうがいいですね。

 

吊橋も計画的に!
「それにしても、ダム湖の中に学校があったのには驚いたね」とドライバーの邊土名担当が感慨深げにつぶやく。

「小学校と中学校ですよ。なんか羨ましいですね」と吉村担当。

「でも、サッカーとか野球とかのボールが落っこちちゃったらどうすんでしょうねぇ?」三野担当はよけいな心配をする。

「そりゃ、球拾いの補欠が、ボートに乗って取りにいくんだよ」と、邊土名担当が無責任なことを言う。

「まじっすか?それじゃメジャーリーグでホームランボールを奪い合ってるファンみたいですね〜ハハハ、笑える」

(く〜っ!笑えねぇよ。こちとら息があがっているってのに、あ〜運動不足が身に沁みる。それにしても、富士山が見られなかったというのに気にもしない若者がうらやましい)

 さあて、続いてわれわれが向かったのは、丹沢湖の西部に流れ込んでいる世附川を少しさかのぼったところにある「夕滝」。

「一番奥の駐車場までしか行けないので、そこから徒歩で川沿いの道を歩いてください」と先ほどのキレイな女性の言葉どおり、車が入れないように門が閉まっていた。その門の横から入って、川沿いの道を歩く。川の水も澄んでいて、自然に囲まれた気持ちのいいところだ。

しばらく歩くと小さな吊橋(夕滝橋)があった。

「よーし、若者よ行け!」 三人を順番に渡らせる。大丈夫そうだと確認してから、最後に渡ったのが失敗だった。

 三人がいっぺんに渡ったため、吊橋が必要以上に揺れている。足元にはいまにも折れそうな細い板がたった三本。まん中で立ち往生の醜態をさらしてしまった。

 揺れが収まるのを待って一歩一歩何とか対岸に辿り着いたが、夕滝はこちら岸から見ることができないことに気がついて、再び吊橋を引き返す。もちろん帰りの順番は、年功序列方式を採用する。

 どうやらこうやら無事に渡り終えてホッとしていると、「宮澤さん、これ見てください」と三野君が指差したのは注意書きの看板。

そこには「一人ずつお渡り下さい」と書いてある。

「うわっ、アッブネェ、早く言ってよ」

 

川遊びと天ぷら蕎麦
「夕滝」は吊橋のすぐ先にありました。なかなか立派な滝です。「もっと間近で見てみたいですね」と邊土名担当。さっそく川原に降りる道を探して、降りてはみたものの、その前には川が立ちふさがっていました。 残念… 

と、突然靴と靴下を脱ぎだす宮澤さん。「長良川の上流で産湯をつかったオレには、これくらいどうってこたぁ〜ない」

 ズボンの裾を捲り上げるとズンズン川を渡りはじめました。向こう岸につくと、先ほどのへっぴり腰とは打って変わり、裸足で石を飛び越えていきます。深さは膝まであります。水も結構冷たそう。

 しかし、いい歳をして裸足で川を渡っていく宮澤さんを見ていたら、僕たちもワクワクしてきました。気づくとみんな裸足で、子供のように川に飛び込んでいました。

 う〜ん、真下から見る滝はやはり最高です。足の裏の痛みも忘れ、しばし感動。世附川の水も恐ろしいくらいに澄んでいて、ニジマスの群れが肉眼で確認できるほどです。

「いや〜来てよかった」自然を充分に満喫して車に戻った僕たち、そういえば、お昼を食べていませんでした。

「中川温泉へ行く途中の『ふるさと』っていう食堂の蕎麦がおいしいらしいよ」

 なんと宮澤さん、観光名所だけでなく、蕎麦屋さんの情報もゲットしていました。さすが大食い大将。

 手打ちの蕎麦は評判どおりでした。

「ほら、この舞茸。味が違うだろ」

てんぷらの舞茸も確かに美味い♪

「やまなみグッズ」もう覚えました!

 

 

 

信玄の隠し湯
 
お腹もふくれてすっかりリラックスモードのわれわれは、丹沢湖の北側、中川川沿いにある温泉街へ向かった。

 ここ中川温泉は武田信玄の隠し湯といわれている。何軒かあるうちから歴史好きの私が選んだのは「信玄館」という日帰り入浴ができるお宿。入浴料は千円だが、なんと露天風呂は、混浴である。(決してこの宿を選んだことに他意はありません)

 大浴場も広くて清潔だ。食事とセットのコースなら、貸切の家族風呂も利用できるので、家族連れには嬉しい。夏にはプールも入れるそうです。

★    ★    ★

 なんだか風まかせ人まかせで、どうなることかと心配したが、たっぷりと自然を満喫して、どっぷりとお湯に浸かって、充分に満足することができた。

 これから秋が深まってくれば、丹沢は紅葉の見頃である。十一月十七日と十八日に中川温泉で開催される『もみじ祭り』では、紅葉の中、猪肉や地元の野菜がたっぷり入った「千人鍋」がふるまわれるそうだ。

 また十二月には湖畔をイルミネーションが彩る『クリスマスIN丹沢湖』と、年間を通して様々なイベントが続く。

 自然の中で、心身ともにリラックスできる場所、その選択肢に丹沢湖を加えて決して損のないことは、私が保証する。

                      (三野&宮澤)

第8回 クリスマス in 丹沢湖

実施期間  

平成19年 12月上旬〜下旬(予定)

点灯時間 午後5時30分〜午後10時

開催場所 

丹沢湖三保ダム広場公園並びに周辺

(足柄上郡山北町神尾田)

☆イベント 

点灯日(イベント初日)は

カウントダウン点灯実施予定。

昨年は、期間中の1日をイベント日と位置づけ、打ち上げ花火も実施

会場内は期間を通して露店などが多数出店します。

【お問合せ先】

山北町役場産業観光課 0465-75-3646

山北町HPhttp://www.town.yamakita.kanagawa.jp/

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