|

幼児の頃、大きくなったら結婚して家庭を持つのが当然だと、漠然と思っていた。
小学生の頃、酔いつぶれて寝入った父が、尿意のため、布団から抜け出し、あろうことかトイレと間違え、縁側の引き戸を開け、放水しようとした瞬間、庭に転げ落ちるという、彼の息子にとってすら不名誉な珍事があり、こんな父でも一家を構えることができるのだから、自分が将来家庭を持つことは、確信に近いものとなった。
…が、青年となった私は、なかなか恋を成就することができず、家庭は自然に手にするものでなく、困難を伴う人為が必要だということを痛感し、焦りのあまり、ある意味「だまし討ち」のように今の妻を娶ったのだが、結果的には私の方が「だまし討ち」にあったことに気づいたときには、すでに娘と三人家族になっていたのだ。
妻のことはさておき、幼い頃の娘は可愛かった。幼児が喜ぶであろう場所であれば、どこへでも連れて行ったものだ。
当時の娘のお気に入りは、向ヶ丘遊園の幼児用施設で、ボールプールの中ではしゃぐ姿を鮮明に記憶している。
「おまえ、あれが好きだったよな」 「知らない、ぜーんぜん覚えてない」
「そんなこと…」 「うるさいなー、あっちいって!」
一人っ子でしかも娘、甘やかせ過ぎたせいか? それとも、父親の酔態を見続けた結果なのか?生意気になった娘に言いたい。そんな性格じゃあ、一生家庭は築けないぞ。家庭を手にするには、人為的な困難が伴うんだぞ。
…もっとも、彼女には、私を「だまし討ち」にした、妻の血が流れているのであるが…。
★ ★
★
「来たよ、来たよ〜。シュッシュッポッポッ、シュッシュッポッポッ」
それまでお父さんの腕の中でむずかっていたテルちゃん、高島屋の角を曲がってやってきた色あざやかな機関車を見た瞬間、つぶらな瞳が好奇心で輝きはじめた。
正確には機関車の格好をしたバス。二子玉川に買い物に行かれた方なら、もうご存知ですね。機関車はニコタマ名物「瀬田温泉・山河の湯」行きのシャトル送迎バスなのだ。
島屋横の世田谷信金前から、そのSLバスに乗り込んだのは、私、たまプラーザ店の勝野と同僚の松井担当、そして彼の奥さんと今回の主役、一粒種のテルちゃん(一歳四ヶ月)。
国道246号を走ることわずか5分。到着したのは「瀬田温泉山河の湯」…ではなく、その一〇〇メートルほど手前、「山河の湯」の建物に隣接する室内遊戯施設「ピアレッテ」だ。
「ピアレッテ」って?
教育玩具、育児用具の輸入の専門ブランドで有名な『ボーネルンド社』が、世界中から選りすぐった遊び道具を取り揃えてプロデュースした、全天候型インドアプレイグランド「ピアレッテ」がオープンしたのは昨年の7月。
1000平方メートルの「こどものあそび場」には、こどもが楽しく安心して遊べる様々なプレイゾーンが用意されてる。入場料は、こども30分、600円。延長十分ごとに100円で、1日最大で1400円、つまり二時間を超えても、遊び放題1400円なのだ。
といっても、ここは0才から小学校6年生までが対象。こどものみ単独で利用することはできない。というより、大人もこどもと一緒になって遊べるのが最大の魅力。一緒になって遊んでも、座ってわが子の遊んでいる姿を見ているだけでも、大人は1日たったの200円なのだ。
エアーでクッション!
館内に入るや否や、こどもたちの楽しそうな歓声が聞こえてきた。その笑い声を聞いただけで、なんだか嬉しくなってくる。
裸足になって床を歩くと、ホワンホワンと何んともいえない感触。転んでもケガをしないように床は5層のクッションが敷かれているのだ。走り回ってぶつかってもいいように壁にもクッション。私は花粉症でフエアーックッション! 失礼。
さて、どの遊び場に行こうか? 青、赤、黄色、カラフルで鮮やかな色彩がこども心(大人心も…)をくすぐるなあ。いかん、いかん、あくまでもこどもが主役だ。しかし、今日は体験取材という大義名分がある。ふと、松井担当を見ると、さきほどSLバスを見て目を輝かせたテルちゃんとそっくりな眼差しで遊具を見つめている。血は争えないね。
そういえば、案内していただいた支配人の永島さんが「特にお父さんたちが、こどもたち以上に楽しそうに遊んでいますよ〜」とおっしゃっていた。なるほど、わかるような気が…と、いきなり駆け出す松井担当。おーい、奥さんやテルちゃんはどうするんだ〜? と思いつつも、私も負けじと彼のあとを追いかける。

まず初めにやってきたのは「エアトラック」。全長11メートルある長細いトランポリン。ようするに陸上のトラックが巨大なエアマットで出来ているという代物である。これなら思いっきり走って、転んでもケガをすることはない。
一気に飛び乗った私と松井さん。全力疾走…と、思ったら、大人の体重では重すぎるのか、バランス感覚が無いのか、うまく走れない。跳ねるようにすると、まるで月面を歩いているよう。日頃のストレスも忘れ、自然に笑いがこみあげてきた。
そこへ主役のテルちゃんがママに抱かれて登場。「はい、ジャンプして〜」と、テルちゃんをうながすが、一歳四ヶ月ではまだ無理、コロンと転がってしまう。それでも座ったまま何とか跳ぼうとする健気なテルちゃん。他のこどもが走り抜けていく振動が伝わるのが楽しいのかニコニコ笑っています。
次に向かったのは「エアキャッスル」。四方を黄色いエアクッションで囲まれた正方形の空間。空気のお城というより、空気のリングです。
ここでもやっぱり跳ねたりでんぐり返しをしたり、相撲を取っている子供たちもいます。こどもがいなくなったのを見計らって、またも、飛び込む私と松井さん。ジャンプしたり、キックしたり、パンチしたり、気持ちよくロープ…じゃない壁のクッションに跳ね返されたところをウェスタン・ラリアット。続いてアバランシュ・ホールド。ここならどんな荒業?を使ってもケガすることは…いやいや、確かに痛くはありませんが、プロレスごっこはほどほどに…。
微笑ましいひとコマ
こどもそっちのけで遊びに夢中になっているお父さんを尻目に、テルちゃんとママは「サイバーホイール」で順番待ちをしていた。
サイバーホイールは、空気で膨らんだ大きなドーナツ状の輪を中から転がす回転運動器具である。
三人の女の子が器用に回転させて遊んでいる。三人の息が合わないといけないので、自然に協調性が芽生えるのかもしれない。デンマークの最新体育理論に基づいてつくられたこの遊具には、からだ全体のバランス感覚や普段使わない筋肉を呼び覚ます効果もあるそうだ。
さあ、順番が回ってきた。まずはテルちゃんがママと二人で中に入る。二人とも四つんばいになってホイールを回し始めるが、そのスピードについて行けず、テルちゃん危うく落っこちそうに…。思わず駆け寄る松井パパ。今度はパパが後からホイールを回してフォロー。ママがテルちゃんを支えるように補助しながらの夫唱婦随のチームプレー。
コロン、コテンッとバランスを崩しながらも、口を大きく開け大喜びのテルちゃん。微笑ましいひとコマだ。
私もやってみたが、う〜ん、難しい。輪と一緒になってコロン、コテン、テルちゃんと、何ら変わりがない。フォローしてくれるパートナーもなくすこしわびしい…。 
サイバーホイールは近々水上プログラムが登場する予定。乞うご期待!
心と頭のゾーン
ここには体だけでなく頭を使うスペースもある。
リアルな野菜やパンや魚の玩具を、これまたよくできたキッチンセットの玩具を使って調理する、女の子の大好きな、ままごと遊びができる「マーケットスクエア」や、キリンやチーター、ライオンなどのリアルな動物のフィギュアやプラレール。頭を使って遊ぶパズルや組み立て遊具。木琴などの楽器や絵本など、知性や情操を育む「プレイタウン」など。
こどもの体調や気分、好奇心や年齢に合わせた遊びが選べるのも、パパ、ママには安心だ。絵本は大人の体が半分隠れるくらいの特大なものもあった。
テルちゃんの瞳が、またまた好奇心で輝きはじめる。その視線はプレイタウンの天井にぶら下がっている大きくカラフルな蝶々。
パパに高い高いをしてもらい、羽根を触ったり、触覚を握ったり大喜び。デジカメの液晶モニターで見ると、さながらゴジラ対モスラ。
しかし、疲れたのかちょっぴりぐずりはじめたテルちゃん。ママが授乳室に連れて行ったので、私たちもしばし休憩。
ママの社交場
友人同士で誘い合わせて訪れたという三人のお母さんにお話を伺った。
「月に2回ほど来ますよ。はじめて来たのは、友人に誘われたのがきっかけで、今回は逆に私が友人2人を誘ってきました」と渋谷区のママ。
「ここは、入場料も安いし、遊具も豊富なので本当に気に入っています。特にトランポリンが楽しいですね。それに色々な年齢向けの遊具があるでしょ、男女・年齢関係なく、年の離れたお子さんを持つ友人とも、一緒に来られるのがいいですね」
こどもたちの遊び場としてだけではなく、お母さん達の社交の場、情報交換の場所としても利用されているようだ。童心に帰ったお父さんには、さながら運動場かな?
パパの運動場
授乳室でエネルギーを補給したテルちゃん、すっかり元気になったので、私たちも再び遊び…いや、取材を続ける。やってきたのは三輪車の「サーキット」。なかなかシンプルで格好いい三輪車が揃っている。さっそく空いている一台にまたがる私。
キ・・・コ、キ・・・コ、うひゃ〜っ、まったく上手くこげない。こどもたちがスイスイと追い抜いていく。(いや〜、足が長すぎるというのも困ったもんだ。ガハハ)気がつくと、こどもたちの冷たい視線。隣を見ると、ママがテルちゃんを乗せてスーイスイ。私より足の長いのにまったく問題ない。大人とこどもが一緒に乗れる大きい三輪車もあったんだ。ふと我に返って、自分の姿に赤面してしまう。
最後にやってきたのは、大人の膝ぐらいまで一面青いボールで埋めつくされた「ボールプール」。
真ん中に浮かんだ海賊船。そこからすべり台でボールの中にジャボン。まさにプールです。
身体半分ほどボールに埋まったテルちゃんも、不思議な世界にとまどいながらも気持ちよさそう。おぼれる心配がないので安心だ。
でも落し物には十分ご注意を。プールと違って底が見えないので、落としたら虚しい気分に陥ること必至である。

瀬田温泉・山河の湯
ほかにも、こどもと同じ大きさのやわらかいブロックを並び替えてのぼったり、くぐったりして遊ぶ「ブロックモジュール」や、光の力で雑菌の繁殖を抑える特殊な抗菌砂をつかった「抗菌砂場」もある。
「公園の砂場は何が落ちているかわからないので心配でしょ。ここなら天気を気にせず安心して遊ばせられるから安心ですね。家に帰ったとき服や下着の中が砂まみれになってますけど(笑)」と、駒沢大学からお見えのお母さんは、穴掘りに夢中のこどもの姿に目を細めながら語ってくれた。
しかし、汗まみれ砂まみれになっても、帰りにお隣の「山河の湯」に浸かれば、キレイキレイ♪ のホッカホッカ。
山河の湯は、源泉100パーセントの天然温泉。舐めるとしょっぱいナトリウム塩化物泉は、切り傷、やけど、慢性の皮膚炎などに効能があるそうだ。
水着着用の混浴露天風呂は今の季節、まばゆいばかりの新緑に小鳥のさえずりが聞こえてきて、避暑地のプールにいるみたい。
5月から6月の初めは薔薇の花が浮かぶバラ風呂が楽しめる。8月には、お風呂に浸かりながら「たまや〜♪」と多摩川の花火観賞もできる。

また、館内には、お食事処やレストラン、マッサージやエステ、売店やゲームセンターと、施設も充実しているので、大人もこどもも一日いっぱい、食べて遊んでのんびりくつろぐ事ができるのだ。個室もありますよ。
「ピアレッテ」と「山河の湯」は隣接しているので、合わせて利用するならば、フリータイム、親子2名で3800円のファミリーパックが超おすすめ。
追加で人数が増えても、お一人様(大人もこどもも)1900円のプラス。
山河の湯のみの料金が2300円なので、これだけでも随分お得。おじいさん、おばあさんと三世代で訪れてみてはいかが?
新設のモバイル会員なら更にお得だそうだ。
Pierは「桟橋」、etteは「かわいい」。体力や知力。社会性に協調性。
創造力に好奇心。こども達が、新しい次の世界へ旅立つための小さな桟橋。それが「ピアレッテ」。お父さんたちには、幼心に戻れる母なる港かもしれない。
(勝 野)

瀬田温泉「山河の湯」 「ピアレッテ」
東京都世田谷区瀬田4-15-30
電話 03(3707)8228
山河の湯 http://www.setaonsen.co.jp/
ピアレッテ
http://www.pierette.jp/ |