■ひろたりあん通信バックナンバー
 2008年11月号
 小さい秋み〜つけた!
 
 色づく緑道「ささぶねのみち」 Q散歩

  新婚当時の話である。一日の仕事を終え、いそいそ家路につく。家に帰れば、あたたかい灯りの下、新妻が夕餉の支度を整え「おかえりなさい」と笑顔で迎えてくれる…、そんな幻想をまだ抱いていた頃だ。

 ところが家の中は真っ暗、不安に駆られ部屋に入り灯りを点けると、テーブルの上にメモ書きが…、その内容は暗号のごとき「さんわ」の三文字。

 頭の中で?がサンバを踊りまくる中、妻が帰って来た。「ごめん、買い物に行ってたの」近所に「スーパー三和」があるのを思い出し、?のカーニバルは終了した。

 せめて「おかえりなさい、ちょっと買い物に行ってくるから待っててね」くらいのメモを残せないのか、その時、初めて結婚を後悔した。

 そんな妻の、超手抜きメモ内容に「さんぽ」というのもあった。犬を飼っていた頃だ。このメスのシーズーは、妻をご主人さまと思い込んでいるフシがあって、妻の家来である私が散歩に連れて行こうとすると、玄関先で四肢を思い切り踏ん張って、あからさまに私との散歩を拒絶するのだ。

 動物好きという点では、妻よりも娘よりも私が勝ると思っているが、頭脳明晰なペットには縁がないらしく、彼らが抱く家族の序列の最下位という不名誉に甘んじてきた。

 今は、縁あって猫を三匹飼っているが、現在の序列も上位から、妻→娘→猫A→猫B→猫C→私となっている。独身時代であればともかく、この歳になっても「片想い」に悩まされている。

 そんな時、感傷を抱いて一人「さんぽ」に出る。秋なら、紅葉の都筑の緑道を歩くのもいいかもしれない。



★          ★          ★ 

 空もだいぶ高くなり、過ごしやすい季節となりました。ちょっと体を動かすにはちょうどよい気温です。お散歩日和です。

 ということで、今月は都筑区の緑道を取材してきました。今回の担当はNTC南店の田久(たきゅう…通称Q)です。ひろたりあん担当となってまだ日は浅いですが、小林さん、宮澤さんにサポートをお願いし、三人で秋の緑道散策へと出かけてきました。

 都筑区各地に点在する公園を結ぶこの緑道は、総延長十五キロにも及び、国内でも最大の規模を誇っています。

  少し高い所から眺めると、住宅街を縫うように、緑が続いている様子が確認できます。車道と交わる部分には歩道橋やトンネルが整備されており、車の往来を気にすることなく、のんびり歩けます。 

 今回はセンター南駅に、ほど近い『都筑中央公園』から仲町台駅近くの『せせらぎ公園』まで、約五キロの道のりを歩くことにしました。
 中央公園は区内で一番大きな公園で園内には、杉山神社や境田貝塚などがあります。

「この貝塚は市内で最も内陸にある貝塚で、つまり大昔は、このあたりまで海だったんだよ」と宮澤さん。

「へぇ〜、どれくらい昔なんですか?」

「縄文海進の頃だから、およそ八千年前かな。あっそれから、この杉山神社は、このあたりだけに集中して四十数社、江戸時代には七十社以上もあったという謎の神社なのだよ」

「謎? どんな謎ですか?」

「あ〜Qちゃん、宮澤さんに質問するとウンチクが長くなるから気をつけて。宮澤さんも、今日は歴史じゃなくて自然観察ですから、よけいな話しはしないでくださいよ」

「はいはい、わかりました。でも神社には、ちゃんとお参りして行こうね」

 ぱん、ぱんっ!(今日一日、楽しい発見がいっぱいありますように)神社にお参りして、さー、緑道散策の出発です。

中央公園…モミジのタネ
「お、何だあれ?」

赤い実が割れ中から黒い種をのぞかせている樹があります。

「さあ? あ、あそこに名札が掛かってますよ。えっと、ゴン…ズイ…だって。確かおんなじ名前の魚がいたような…」

「毒があって刺されると痛いナマズの一種だね。因みに役立たずのことをゴンズイっていうけど、この樹は材質がもろくて使い道がないから付いたんだね。魚や樹だけじゃない、人間にもゴンズイがいるよ、ね、小林君」

「なんでこっち見るんですか!」

「いやいや、このあいだまでやっていた「ゴンゾウ」っていう刑事物のテレビドラマがあってね。主人公ゴンゾウの意味は、警察用語でダメ警官っ言うらしいんだよ。だから、人間にもゴンゾウっているんだな〜と思ってさ」

「いや、僕のことをゴンズイだっていうような目をしてました」

「ははは、普段自分がダメなんじゃないかと思ってるから、そう感じるんだよ」

「ウッ!宮澤さんには言われたくありません」

 なんだか二人は仲が悪いようです。スタートしたばかりなのに大丈夫かなぁ…。 

 公園や緑道沿いには様々な植物を見ることができます。名札が掛けてあるものもありますがほとんどわかりません。よく見る植物でも名前は案外知らないものです。オオバコ、ミズヒキソウ、カワラタケ、ヤツデ、ムラサキシキブ、シイノキ、クヌギ、ミズキ、ホオノキ、セイタカアワダチソウなど、よく見られる草木としてはこんなところです 紅葉にはちょっと早かったけれど、たくさんの植物が実を付けていました。

 そうそう、紅葉といえば『モミジ』ですね。緑道沿いには所々にモミジが植えてありました。ところで、みなさんはモミジのタネ、見たことありますか?

 モミジのタネはプロペラのような羽を持っています。葉のすぐ上にピョコピョコと顔を出しているのですぐに見つけられますよ。タネができるのは、春、四、五月頃。この時季のプロペラはきれいな紅色で、葉っぱの緑と補色関係にあり赤がよく映えます。

 秋だけでなくこの季節のモミジもオススメです。タネは秋に熟すと風に乗って空へ飛び立ちます。よく目を凝らせば落ち葉の間にくるくると旋回しながら飛んでいるのを見つけられるはずですよ。

ささぶねのみち
 炭焼き小屋や稲刈りをしたばかりの小さな田んぼを眺めながら中央公園を抜けると、『ささぶねのみち』に出ます。ここから道沿いにずっと小川が流れています。

「あ!何か動いた!何かいるぞ」

 魚かな? よーく見ると『ザリガニ』でした。ピュッ、と後ろ向きに素早く動きます。緑道の池や小川には、そのザリガニをねらって『カワセミ』もやってきます。その美しさから「空飛ぶ宝石」と呼ばれています。私も一度見かけただけですが、光沢のあるブルーとオレンジの対比がとてもキレイでした。

 道沿いの草むらにはザリガニの赤いハサミや殻が落ちている事があります。肉食の鳥は消化できない魚の骨や甲殻類の殻をまとめて吐き出すそうですが、もしかしたらカワセミのもの!?

「あっ、これ、クレソンですよ」

 小川のせせらぎを指指しながら、小林さんが声をあげました。

「え? 本当ですか?」

「本当ですよ。僕の実家で育ててるんだから。間違いないですよ」

「じゃ、小林君食べてみなよ」

「うぇ〜、勘弁してくださいよ〜」

 どうやら、小林さんはクレソンが苦手なようです。でも、クレソンが生えてるなんて、小川の水がキレイな証拠ですね。私だけだったらただの水草だと思い、通り過ぎてしまうところでした。

鴨池公園での感動
 ここから先、小川はより自然に近い形に変わっていきます。谷のようになった少し薄暗い小道に、木々の間から落ちる木漏れ日がとても幻想的で、ゆったりと、とってもいい気持ち。ここは、私の一番好きな場所です。

 傍らには『ホトトギス』が咲いていました。その隣には紫色の可憐な実をつけたムラサキシキブ。キレイだなーと思って眺めていると、何かが飛んできました。最初はハチかな?と思いましたが、よく見ると、『スズメガ』です!

 スズメガとはガの一種で、三角形の翅を持ち、とても速く飛びます。そのスズメガが今まさに空中で蜜を吸っています。スズメガは空中でハチドリのようにホバリングし、長い口を延ばし花の蜜を吸うのです。「おおっ!」と思い二人に声をかけようとした瞬間、飛び去ったスズメガ。一瞬の出来事でした。

 写真で見たことはありますが、実際にホバリングシーンを見たのは初めて。感動です♪ ホトトギスの花と同じぐらいの大きさだったから、体長四センチぐらいかな? ほとんどは夜行性で為、私が見たのは昼間活動する『ホシホウジャク』という種類でした。

 鴨池公園に入ると、緑に囲まれた『かもいけランド』というログハウスがありました。中では小さな子どもたちが、滑り台やネットの遊具で遊んでいます。積み木やけん玉、塗り絵なども揃っていて、まるでおもちゃ箱のお城です。

葛ヶ谷公園〜茅ヶ崎公園
 さあ、道はまだまだ続きます。大原みねみち公園から茅ヶ崎公園に続く道の途中、突然、宮澤さんが立ち止まりました。

「ん? なんか甘い匂いがするよ。なんの匂いだろう?」

「キンモクセイじゃないですか?でも見当たらないですね」

「う〜ん、キンモクセイとはちょっと違うんだよな〜、もっと甘くて優しい感じ」

 匂いをたよりに辺りを探すと、ありました! ギザギザの葉で小さな白い花をつけています。

「これだ、これだ。でもこれ何だろ? 花はキンモクセイそっくりだけど…」

 調べて見たら、キンモクセイと同じモクセイ科の『ギンモクセイ』がありました。でも葉の形が違うなーと思いさらに探してみると『ヒイラギモクセイ』という樹を見つけました。ヒイラギとギンモクセイの雑種、コレだ! こんなのがあったんだ〜。

 しばらく歩くと、またまた立ち止まる宮澤さん。

「コイツ、鳴くんだよ」

 カメラを向けている葉っぱの上に何かいるようです。キレイな緑色、背中に一本筋が入っています。とてもスマートな体は『セスジツユムシ』でした。

 道端に生えている草花や樹木の中にも、バッタやらコオロギやら…、わっ、蛹から羽化しようとしているチョウがいました。

 部屋の中などで虫を見つけるとギョッとしてしまいますが、こうして自然の光の下、草むらの中で見つけた彼らは、健気なひとつの命として、すんなり受け入れられるから不思議です。

 茅ヶ崎公園の中には『自然生態園』があります。ここでは観察会や「草木染め」などの自然教室、「水辺探検隊」に「きこり体験」、「昔ながらの米づくり」と、四季を通して様々な催しを行っています。

 園内には、池や田んぼや小さな谷があって、なんだか『小さな寺家ふるさと村』といった感じ。開いているのは土日だけなので、こんど休みの時にゆっくり探訪しようと思います。

 

茅ヶ崎公園〜せせらぎ公園
 ここから緑道は「せきれいのみち」と名前を変えます。この道沿いの石垣では『ホウライシダ』が生えていました。

 細く黒いハリガネのような茎に扇のような小さくてかわいい葉をつけます。町中でも見かけますが、埃や排気ガスのせいで弱々しく見えます。でもここのシダは青々とした葉を元気いっぱいに広げていました。

 せせらぎ公園近くの池には、何やら変な形の植物が生えていました。

「コレ、何だろ? 長い茎の先に『きりたんぽ』みたいのが付いてる」

「えっ、知らないの?『ガマ』だよ、蒲(ガマ)の穂。鰻の蒲焼きは、このガマの穂に似てるから付けられたんだよ」

「鰻の蒲焼って…、全然似てないじゃないですか」と小林さんが反論します。

「昔は開かないで、ぶつ切りを串に刺して焼いたんだよ」

「あっ、それなら似てますね」

「この花穂がほぐれると綿毛(タネ)が出てくるんだよ、それを寝具の中に入れると蒲団になる」

 だから蒲団は蒲っていう字なんだ。それにしても宮澤さん、いろいろとよく知ってるな。さすが、亀の甲よりナントカの功ですね。

 最後のトンネルをくぐると、『せせらぎ公園』に到着です。大きな池ではカモ達が大騒ぎで出迎えてくれました。

「やった! ゴールだ!」

 時計を見ると、ビックリ! もう昼の一時です。朝の九時から歩き始めて四時間。でもホント、あっという間でした。

「なかなか楽しかったね」「一日中いてもいいかな」と満足そうな二人を見て、私も嬉しくなってしまいました。

 緑道を歩いて発見したこと、感動したこと、思いつくままに書いてみました。「そんなこと、とっくの昔に知ってるよ」と、言われるかもしれません。でも、ぜひもう一度、子どもの目線になって、お子さんやお孫さんと一緒に歩いてみてはいかがでしょう? 

 テレビや映画やゲームとは違った驚きや感動、そして新しい出会いがあるかもしれません。

 この号がお手元に届く頃は、木々も輝くばかりに色づいていることでしょう。        

                                     (田 久)

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