■ひろたりあん通信バックナンバー
 2008年12月号
 魚・肉・野菜・花・・・etc わが町の台所!
 
 川崎市中央卸売市場北部市場

  サブプライムローンのシステム崩壊で、突然巻き起こった不況の波は、最も影響が少ないとされた日本にも、容赦なく押し寄せ、社会全体が溺れはじめている。

 それはわが新聞販売業界も同様で、経済の冷え込みからか、あるいはネット社会の成熟によるものか、特に折込チラシの激減による収入減は深刻さを増している。

 給料・賞与カットだの、人員削減だの、年の瀬に来て、暗雲立ち込めるこの世の中だが、自分の身は自分で守らなければならない。収入減に対抗するためには、賢い消費者、つまり「買い物上手」になる必要がある。

 庶務課の片岡課長は「買い物上手」である。会社が主催するイベントが、低予算で抑えられているのは彼の手腕だ。その彼の節倹アイテムの一つに「川崎北部市場」があり、聞くところによると組合の中枢部にまで、彼の顔が浸透しているらしい。

 北部市場は川崎市の施設であるが、場所は横浜市との市境、青葉区・都筑区の住民のためにあるようなものだし、とにかく安い。

 川崎市には税金を納めていないわれわれだが、不況を乗り切るために賢い(ちゃっかり?)消費者でなければならない。川崎市民のフリができるのも、賢さゆえである。

 今回片岡の尽力で、佐藤担当が元板前の目で北部市場を取材してきたので、ご参考になればと思う。

「安く買物ができるのは助かるわよね、でも他にも特効薬があるの」と言ってニヤリとする妻。その答えは予想どおりであった。「あなたのお小遣いをカットするの」この年の瀬に、私も暗雲に飲み込まれつつある。




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  今年も残すところあとわずか。早朝の寒さがかなりこたえるようになってきました。でもこの季節、辛いのはわれわれ新聞屋さんだけではありません。早朝から市場で働く方々にとっても、冷たい水仕事がある分、大変な季節です。元板前さん、市場大好き人間の私、佐藤道成(美しが丘店所属)が、年末を迎え、活気のあふれる川崎市中央卸売市場の『北部市場』にお邪魔しようと思います。

 今回の取材をコーディネイトしてくれた、北部市場と太いパイプを持つ本部の片岡庶務課長に同行します。あと、大食漢の大塚氏には「食欲部門」を担当してもらいます。

北部市場に到着
 午前八時半頃に現地に到着後、最初に足を運んだ先は、「関連施設棟」のお茶屋『つな川』さん。片岡課長が最初に足を運ぶのはここだとか。まずは入れたてのお茶のサービス。香りよく、濃い目の緑茶は熱すぎず、冷えた体を心地よく温める一杯です。「うちの接客用のお茶もここで買っているんだよ」と片岡課長。

 さて、いよいよ取材開始。今回、場内を案内していただくのは、北部市場の管理課・整備計画担当の平賀さんです。なにやら小難しい肩書きですが、北部市場を盛り上げようと、日夜色々な企画、アイデア等を手がけている、明るく元気なお姉さんです。聞くところによると平賀さんは、北部市場のホームページの『うさピョン』のコーナーも手がけているとか。また、ウサギさんやヒーロー戦隊物のピンク役などのコスプレ? で市場のイベントなどにも参加しているとのこと。さすがに今日は普通の格好です(当然だって)。

「北部市場ってなに?」って方のために簡単に説明させていただくと、一言で言えば「食に関係するものなら、大抵の物は手に入る場所」です。水産棟、青果棟、花き棟の三部門と関連施設棟(関連棟)からなる巨大なマーケットです。場所は川崎市宮前区。川崎と言っても横浜市との市境で、美しが丘からすぐの場所にあります。 

水産棟の散策
 平賀さんに案内されて、まず最初に向ったのが水産棟の入り口近くにある椛蜷i水産さん。鮪(マグロ)はもちろんのこと、旬の魚介類を豊富に取り揃えているお店です。社長さんも気さくな方で、撮影なども快く引き受けていただきました。

 この水産棟には五十社以上のお店があり、鮪の専門店や、鰻の専門店、練り物や塩乾物の専門店等に分かれます。連日、近隣区域からプロの目利きがやって来て、仕入れや値段交渉等の戦いが繰り広げられています。 ここでまた、素朴な疑問が浮かびませんか?「飲食店の関係者じゃなくても買えるの?」「一般市民でも買えるの?」

 市の決まりに、卸売業者から買えるのは、売買参加者または仲卸業者だけという原則があります。が、仲卸さんから買うことに取り決めはないので、一般の人も買えます。但し買うときは、飲食店の関係者みたいなそぶりや、美味しいものを探究する求道者みたいな顔が必要かもしれません(笑)。

 とは言え、外人さんや家族連れ、若いカップルも見かけるので、あまり気にする必要はないかも。

 後は時間帯ですが、早ければ早いほど、午前六時過ぎなら新鮮で良い物が手に入ると思います。しかしこの時間、ライバルとなるのはプロの目利きたちです。彼らが良いものを安く手に入れるように奮闘する、言わば戦場です。荷物を運ぶターレと呼ばれる乗り物が、場内を所狭しとビュンビュン走っています。目利きに自信がなく、しかも市場に不慣れな方なら、戦火の収まった午前八時過ぎぐらいがおすすめかな。逆に遅すぎると午前十時くらいには閉まってしまうお店もあるのでご注意を。

 魚一匹、貝一個から売ってくれるお店もありますが、プロ向けの一キロ単位や、一箱単位のお店なら、グループ買いだとお得かも。

 そうそう、私の経験から…。どこもギリギリの値段設定なので、むやみに値引き交渉をすると、かえって印象を悪くしてオマケも期待できなくなりますので、ほどほどに(笑)。

鰻職人!とフグ職人?
 続いて向かったのは、鰻の専門店の竃セ成さん。鰻捌きの職人さんの鮮やかな包丁捌きは一見の価値があります。ウニウニと動く鰻を、捌くまで十五秒!いや十秒そこそこです。一同あまりの早業にシャッターチャンスを逃し「そこで止まってもらえますかー」とわがままな注文をつけること二度三度…。気のいい職人さんのおかげで、なんとか撮影できました。そして同じく鰻屋さんの店先で売られていたのは、冬が旬の河豚。それも王様のトラフグです。

 私事で恐縮ですが、フグにはちょっと思い入れがあります。板前として働いていた頃、かなり辛い思いをしてフグ免許(国家試験なんですよ)を取りました。何が辛いかと言うと、試験が超難しいんです。当時(八年位前)東京都の試験を受けたのですが、まずは食べられるフグ二十二種(トラフグ、ハリセンボン等)、食べられない毒フグ十二種(ドクサバフグ等)を全て憶えます。似たような外見のフグでも、ちょっとした違いで食用か毒フグかに分かれます。間違えてしまえば大惨事になるのでほぼ丸暗記です。試験では無作為に選ばれた5匹のフグを鑑別します。筆記試験に続いて実技試験になります。この実技が非常に難しく、トラフグ1匹を二十分間の間に捌き、毒のある内臓やその他の部位の処理をして、可食部位を鍋材料と刺身の薄作りにします。

 文章にすると簡単そうですが、作業手順を体に染み込ませないと二十分の壁が越えられないので、かなりの数の練習が必要でした。練習の甲斐ありめでたく一発合格。両親に泣きながら電話をかけた記憶があります(懐)。

  余談ですがフグの刺身や鍋を鉄刺(てっさ)鉄ちりと言います。フグは中毒にあたれば、かなりの確率で命を落とします。鉄砲も然り、当たれば即アウト! ということでフグを鉄砲と呼ぶんです。市場で流通しているフグの大半は加工され除毒がされていますし、料理屋さんでは職人の下で完璧に調理されるので安全です。参考までにですが、刺身や鍋材料等に調理されているもの以外は、一般の人はフグ丸々一匹買うことはできません。「そんな人いないって」

 もちろん市場には全国各地から、さまざまな食材が届きます。且R忠保坂水産さんでは北から西から、各産地の牡蠣を取り揃え、一個から小売してくれます。週末は飛ぶように売れてしまうとか。他にも場内には、普段見ることないアンコウやうちわ海老なんかも見かけました。まるで魚介たちの日本選手権みたいですね。

続いて野菜にお花
 水産棟を後にして青果棟、花き棟と足を運びました。青果棟はお店向けの配送の準備などで、なかなか買いにくそうな雰囲気ですが、ちゃんと小売もしています。スーパーで買える野菜はさて置き、ここでしか買えない食材もあります。取材時は国産松茸が出回っていましたが、今ならお正月用のキンカンや百合根、金時人参、海老芋、クワイなどもあるでしょう。お雑煮の材料も揃います。

 年末には正月七日用の七草粥のセットも出回るかと思います。

 またまた余談ですが正月のしめ飾りについている果実。みかん? ではなく橙(だいだい)です。縁起物とされ、冬に成熟し橙色になりますが、収穫しなければまた緑色に戻り、来年また色付きます。一本の樹で三代の果実を見ることが出来るので、代々(だいだい)と呼ばれ、子孫繁栄の縁起をかついで正月の飾り付けにされるそうです。

 花き棟は、お花好きにはたまらないスポット。取材時はシクラメンが所狭しと並んでいました。他の花も、大企業のイベントのプレゼント用に納品したり、売れ残ったお花は捨てずに、新鮮なうちに福祉施設に格安で譲っている業者さんもいるそうです。花に限らず、生き物を扱うの人は心優しいんですね。鮮やかな色の花々は、もちろん小売もしていますし、大きな観葉植物も揃っています。

何でもそろう関連棟
 関連施設棟に戻ってきました。精肉店、お菓子屋、お茶屋、海苔屋、漬物屋、器屋、看板屋、金物屋、道具屋、洋服屋…多岐にわたっています。お店を開こうと思ったら、ここで全てが揃うんじゃないかなあ。もちろん安い。問題を強いて言うならサイズが業務用であることぐらいですが、大は小を兼ねるとも言います。ぐるっと回れば、こんなものまで売っているんだと、あれもこれもと買ってしまうかもしれません。

「なんだか、昔なつかしい縁日に来たみたいだね」確かに。

 関連棟には、市場めぐりの楽しみのエッセンスが詰まっています。

新鮮を喰らう!
 場内をたっぷりと堪能して歩き疲れた三人。「お腹は堪能してないよ」と文句をつける「食欲担当」大塚。

 最後に案内された場所は、関連棟三階の食堂街。場内の新鮮な食材を使った蕎麦、割烹、寿司、天婦羅など、好みに合わせて選べるお店。わざわざ食事のためだけに訪れる人も少なくないそうです。

 今回は先の大進水産の直営店、天婦羅の天秀さんでご馳走になりました。お勧めは片岡課長の食したミックス天丼。丼からはみ出して主張し続ける大海老と穴子。特に穴子は臭みがなくふっくらとした仕上がり。お米も減農薬完熟米というこだわりの品。

 もう一品は「食欲担当」の海鮮丼。「玉子や蒲鉾などで隙間を埋めるなんてケチくさい」という社長のポリシー?どおり、ご飯の上には海鮮がびっしりと敷き詰められ、だましは無し、素材で勝負とのこと。ただ大きな丼も大塚担当の手ではお茶碗サイズ。おかわりは自前でお願いね。とにかくも、三人とも大満足でお店を後にしました。

×    ×

 年末は大売出しもあり、大勢のお客さんで賑わうそうです。皆さんも是非、足を運んでみていただければと思います。最後に、ご協力していただいた市場の皆様、ありがとうございました。そして、読者の皆様、来年も良い年でありますように。

                                      (佐 藤)



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