■ひろたりあん通信バックナンバー
 2008年2月号
 宇宙は僕らを待っている
   
JAXA 宇宙開発本部&相模原市立博物館訪問記

 「高校時代に『数学』を放棄せざるを得なかった人に『科学』を語る資格があるの?」

 ことあるたびに私に向けられる、妻の厳しい決まり文句である。たとえば、おまじないのような妻のダイエット法を(無論効果は現れない)、医学的に、生理学的に、スポーツ学的に検証を加え、いかに無駄な浪費であるか、優しく(?)諭している最中に、彼女はこの口撃ひとつで私を沈黙させ、私の「その無駄を省いて、おれの小遣いに回してくれよ」という最終結論は、幻と化すのである。

 確かに妻の論法は的を射ているかもしれないが、数学がわからないからって、科学に興味を持ってはならぬ決まりはない。日本初の科学アニメ「鉄腕アトム」を見て育ったわれわれの世代は、みな「科学ぅ〜の子〜♪」なのだ。いつか宇宙旅行が実現すると信じたわれわれが、科学立国日本を築いたのだ!…まぁ、残念ながら私はまったく貢献してないが…(資格もないが…)。

 理工学部出身で、科学を語る資格を持つ小林担当が、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の宇宙開発本部を取材して来た。日本も宇宙航空技術開発分野で、国際的に大いなる貢献を果たしているらしい。

 朝日新聞出版から刊行された、子ども向け科学雑誌「かがくる」「かがくるプラス」は大きな反響を呼んだが、新シリーズ「かがくるアドベンチャー」全48巻が4月3日に創刊される。お子さんを私のような不幸な大人にしたくない方、ぜひ廣田新聞店にお申し込みを。…これを会社に対する貢献と認めてもらえないものか。


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「僕なんか、北海道の田舎で生まれたから、都会とは比べ物にならない満天の星空を見て育ったんですよね。もう本当に星が降ってくるんじゃないかって、怖くなるほどでしたよ。そんな環境で育ったせいですよ、星や宇宙に興味を持ったのは」

「小林君。悪いんだけどね〜、北海道の田舎じゃなくても、今の四十代以上の人なら、子どもの頃に満天の星空は見てますよ。それに星や宇宙に一番興味を持ったのは、たぶん私たちの世代が最初でしょう。なんたって、アポロ11号の月面着陸をリアルタイムで見てるんだから」と、宮澤さんが偉そうに胸を張る。

「そ、そりゃ、そうかもしれませんけど…。でも、僕は今でも科学の勉強をしてますよ。雑誌の『ニュートン』は毎月欠かさず買って読んでますから」

「ふん、私だって、毎月『ムー』を本屋さんで立ち読みしてるぞ」

「ムーって…。それオカルト雑誌じゃないですか!しかも立ち読み…」

「なにがオカルトだ!失礼なこというな。ムーは、『世界の謎と不思議を科学するスーパーミステリーマガジン』だぞ。失われたムー大陸にナスカの地上絵、UFOにそれから…」

「あっ宮澤さん、到着しましたよ」

 JR横浜線淵野辺駅南口から、淵野辺循環のバスに乗り約10分。バスの中で宇宙や科学について議論(?)しているヒマもなく「相模原市立博物館前」の停留所に到着しました。

 ひとつ手前に「宇宙科学研究本部前」のバス停がありますが、降りるのは「博物館前」です。お間違いなく。

「おお!博物館で『ダイナソー巨大恐竜の謎』っていうのをやってるぞ」

「宮澤さん!それは、帰りに時間があったら勝手に寄ってください。今日はJAXA(ジャクサ)の取材なんですから」

「えっ、あの自動車保険の?」

「それはアク…、知っててボケるのやめてください」

宇宙科学研究本部
 皆さんは、『JAXA』という名前を聞いたことがありますか? 正式名称は、独立行政法人宇宙航空研究開発機構。ま、簡単に言えば、あのアメリカ航空宇宙局(NASA)の日本版のようなものです。

 今から四年前、宇宙科学研究所(ISAS)、航空宇宙技術研究所(NAL)、宇宙開発事業団(NASDA)が一つになり、日本で唯一の宇宙航空開発や研究を行う機関として誕生したのが「宇宙航空研究開発機構(JAXA)なのです。

 JAXAには「宇宙基幹システム本部」「宇宙利用推進本部」「総合科学研究本部」「宇宙科学研究本部」と四つの本部がありますが、今回、私たちが訪れたのは、そのうちの一つ、相模原にある「宇宙科学研究本部」です。

 申し遅れましたが、今回の取材は港北NTセンター南店の「科学マニア」私小林と斎藤。そして、おなじみ科学とか宇宙には縁の無さそうな「歴史マニア」宮澤氏の三人が担当します。

 「何を言う! こうみえても小学生時代は、学研の科学と学習を購読し、名古屋市立科学館の友の会にも入会していたんだ。科学の子、つまり元祖サイエンスキッズだな」

「科学は科学でも、空想科学でしょ。あ、ここですよ」

 門を入り、受付で「見学者パス」と「フリー散策マップ」を受取りキャンパスの中へ。実はここ、1981年に設立された元東京大学宇宙科学研究所が1989年に移転したもので、日本の宇宙開発の中心地というだけでなく、大学院教育など次世代の育成や全国の大学の共同利用機関の一つとして、世界各国から研究者を集めさまざまな研究活動も行っているのです。

「あっ、ロケットがありますよ」と、斎藤担当が研究センター棟の横に展示されているロケットを発見しました。これは、1985年のハレー彗星探査機【さきがけ】【すいせい】から1993年の【あすか】までを打ち上げた『M-3SUロケット』の原寸大模型です。

「模型とはいえ、近くで見るとすごい迫力ですね」と、驚きを隠せない斉藤担当。

展示スペース
 研究管理棟の入口には、「総合研究大学院大学 物理化学研究科宇宙科学専攻」と、舌を噛みそうな名前の看板がありました。この建物の一階の見学エリアが展示スペースになっています。 

 入って最初に目を引くのが最新の衛星【かぐや】から送られてきた、ハイビジョンカメラで撮影した「日の出」ならぬ「地球の出」の映像。ハイビジョンカメラによる撮影は【かぐや】が世界初です。思わず鮮明な映像に見とれてしまいました。

 その隣には【かぐや】の模型と【HU-Aロケット】の模型が展示してあり、ロケットの殆どが衛星を宇宙に送る為の燃料だと言う事が分かります。
 

 ちなみに、月探査衛星【かぐや】は、 JAXAが開発した最新の探査機で、平成19年9月にHU‐Aロケットで打ち上げられました。1969年のアポロ計画以来もっとも高性能な衛星で、本格的な月探査を一年に渡って行い、月全体の地形データが観測される予定です。

ウルトラマンカラー
 他には、スペースシャトルやプロトンK(ロシア)など、ロケット開発の歴史を年代順に模型が展示してありました。

「日本のロケットが、赤と銀色のウルトラマンカラーなのはナゼか知っているか?」と宮澤さんがニヤニヤしながら訊いて来ました。確かにロケットの色はどれもウルトラマンのようです。

「それは…、たぶん日の丸をイメージしているんじゃ…」

「おいおい、科学マニアがそれじゃあ困るね〜。あの色は、打ち上げたロケットが青空の中で、いつまでも確認できるためなの。だから、青空に映える赤と銀が選ばれたんです。じゃ、ウルトラマンが赤と銀なのはナゼか知ってるか?」

「ロケットの真似ですか?」

「はぁ〜〜情けない。ウルトラマンの場合は、合成撮影のブルーバック、つまり青い背景で撮影した時に、色の抜けがいいからなんだ。科学マニアのくせに、そんなことも知らないの」

「それって、たんなる怪獣オタクじゃないですか」

「怪獣オタクも科学オタクも変わらん!」

小惑星探査機【はやぶさ】
 展示室の中でも一番目立つ模型が、小惑星探査機【はやぶさ】です。

 【はやぶさ】が探査するのは、地球の軌道と似た軌道を持つ太陽系の小惑星です。日本のロケット開発の父、あのペンシルロケットの開発者である故糸川英夫博士に因んで「イトカワ」と名付けられました。イトカワの模型もありました。形がラッコに似ています。

 相次ぐ故障により、当初の予定より伸びてしまいましたが2010年6月地球に到達予定です。

 成功すれば、月以外の惑星から土壌サンプルを持ち帰るという世界初の快挙を達成することになるのです。

 ここでは、その小惑星探査機【はやぶさ】を、バックに来場記念のポストカードを印刷することができます。

「成功した時に自慢できるように」と斉藤担当が一枚撮影しました。出てきたカードを見た斎藤担当。

「ゲッ!心霊写真」

 取り出し口から出てきたポストカードを見てびっくり。斉藤担当の背後に人が…。 やっぱりこの人、科学よりオカルトだ(写真をご覧ください)。  

最先端の新素材
 展示室では、大気球の材料の厚さ3.4ミクロンの超薄型ポリエチレンフィルム(一般のラップは十ミクロン)や、人工衛星の表面に貼られている耐熱フィルムの実物に触れる事ができます。その薄さにびっくり。

「昔、小さなストローで膨らます風船があったでしょ。これって、あの風船がしぼんだあとみたいだよね」と宮澤さん。確かに似ています。 

 この他にも日本の宇宙開発の始まりとなったペンシルロケットのサンプルがある等、狭い展示室ですが、日本の宇宙開発の歴史と現状をしっかりと学ぶことができます。

 宮澤さんではありませんが、子供達に夢とロマンを感じてもらうにはもってこいの施設です。 

 

食堂と生協
 お腹がすいたので、食堂に行くことにしました。2種類ある日替わり定食は450円、ラーメン300円。メニューは格安です。

 お昼時なので、だんだん混んで来ました。大学院生や研究員など来る人の年代は様々ですが、意外に女性の人が多いのにビックリ。それも、研究員というイメージではなく、テレビ局の女子アナのような美人揃い。

「僕も化学のほうでなく、科学をめざせばよかった。道を間違ったかな」

「小林君は人生間違いだらけだね」と宮澤さん。

「あんたに言われたくはな〜い」

 

 隣の生協には、宇宙関連の雑誌や書籍、宇宙グッズも売っていました。
「おっ、宇宙食がある。食べてみようか」と宮澤さんが、たこ焼きと大学芋の宇宙食を買いました。

 斎藤担当も、子どものお土産に、衝撃を与えると、いろんな色に光る不思議なネオンジェットボールを買っていました。
 

 

相模原博物館
「どうでした、宇宙科学研究本部は?」

「う〜ん、面白かったし勉強にはなったけど、今ひとつ迫力がないな」

「迫力? なんですか?」

「そう。無重力を体験できるかと思ったのにな…。あ、時間も早いし、ダイナソーを見てから帰ろうぜ」

 仕方なく三人して相模原博物館へ向かいました。ここの入場料は無料で、プラネタリウムは大人500円で観ることができます。ちょうど「ダイナソー巨大恐竜」の上映が始まるところでした。

 宮澤さんと行った磯子の「横浜こども科学館」(2004年8月号)でもプラネタリウムで恐竜の映画を観ましたが、ここのは、比べものにならないくらい迫力がありました。

「さすが全天周映画だね。本当に空を飛んでいるみたいだったね〜。空から海に急降下して飛び込むシーンには、思わす緊張して、力がはいっちゃったよ」

 興奮冷めやらぬ宮澤さん。このことが原因かどうか、翌日腰痛で立ち上がれなくなったそうです。年は取りたくないものです。年といえば、博物館では、3月9日まで「ちょっと昔のくらし」という特別展が開催されています。

 ここでも、ちゃぶ台や昔の冷蔵庫を見て興奮していたのは宮澤さんだけでした。やっぱり、この人には宇宙の未来より、地球の昔がお似合いのようです。

 宇宙科学研究本部の他のエリアをご覧になりたい方や団体は予約が必要です。広報の方が案内してくださいます。【かぐや】の最新情報や皇太子ご夫妻来館の時のエピソードなど、面白い裏話も教えてもらえますよ。

(広報 045−759−8008)

 夏休みには、普段入ることのできない研究管理棟など総ての施設を一般公開するそうです。詳細は未定。ホームページでご確認ください。
 

                                      (小 林)


JAXA「宇宙航空研究開発機構」のHP http://www.jaxa.jp/
 


 

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