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この歳になるまで、さまざまな体験をしてきたつもりだが「化粧」だけは未体験である。
その事実は私が舞台俳優や歌舞伎役者、あるいは倒錯した趣味人?でないことを証明している。
女性である妻の鏡台の前には、幾種類もの意匠をこらした瓶が並んでいる。
興味はないが、それらがかなり高価らしいことは薄々感じている。
「高価な割には効果がないなあ」なんて、たとえ罪ないダジャレであれ、家庭の平和のために、決して口に出さない私は賢い。
だが「節倹こそ賢妻の証し」が信条の妻が、なぜ化粧品には財布のひもが緩むのか。
「あなただって、奥さんがいつまでも綺麗でいてほしいと思うでしょ」と私のために散財しているかのように言う。
その分を私の小遣いから天引きしているとでも言うのか。
「いつまでも? というか、いつ綺麗だったんだ?」なんて、イヤミの一つも言いたくなるではないか。しかし賢い私は、もちろん口には出さ(出せ)ない。
昔も今も目を強調する化粧法が主流のようで、アイシャドウは欠かせないが、たとえばクレオパトラの時代、一回の化粧で容器が空になるくらい大量に使う目張りメイクは、現代から見れば異様である。
当時のアイメイクは、魔除け・虫除け対策の一面もあったというが、今そんなメイクで街を歩けば、別の意味で虫除けになる。
一人娘が小さい時、悪戯で妻の化粧品を大量消費し、真剣に怒られていたが、その時のメイクであれば、娘に悪い虫はつかないだろう。しかしわが子には綺麗でいて欲しいし…。そんなことで悩む私も親バカである。
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「これから行く大船の工場の前には、『でぶそば』という中華屋さんがありまして〜…」
ちょっと、ちょっと宮澤さん、私たちがこれから行くのは、美しさを追求する化粧品会社『資生堂』ですよ。朝の挨拶で、いきなり「デブ…」なんて…、あっ、もしかして、今日一日デブのそばに座っていなければいけないという憂鬱な私の気分に対するあてこすりですか…。
と思ってよく聞いていたら、例によってKYなウンチクでした。なんでも、その「でぶそば」というお店は、『男はつらいよ』の寅さんが、松竹の撮影所から足繁く通った店だそうです。
宮澤さんの余計な情報にも笑顔で拍手をしてくださる優しいお客様。
「寅さんの衣装を着たまま、マドンナを連れて通ったんだって」席に着いても、まだ喋ってます。
「寅さんの映画にマドンナが出ていたんですか〜?」
「アメリカのマドンナじゃないよ。寅さんが憧れる相手役の女優さん。吉永小百合とか浅丘ルリ子とか竹下景子とか…マドンナ役は、その時代を代表する女優さんが選ばれていたんだよ」
「そういえば、資生堂のCMにも、時代を代表する女優さんが出ていますよね。宮澤さんは誰がお気に入りですか?」
「う〜ん、蒼井優でしょ、宮崎あおいでしょ、でも、やっぱり鈴木京香かな〜…って、そっちに持っていくか!」
おなじみ花椿
今日はひろたりあんイベント倶楽部の企画(有料)で、読者の皆さんと化粧品会社『資生堂』の工場見学をメインにした湘南めぐりです。化粧品とくれば、やはり、むさくるしい男性スタッフよりも、ひろたりあんを代表する美しい女性がふさわしい、ということで私上野がご一緒させていただくことになりました。
「美しいは、いらないんじゃない。ひろたりあんの女性スタッフって、あなたしかいないだから」
「じゃ、なんで宮澤さんがいるんですか?」
「私? 私はその〜…、あ、鎌倉工場に到着したようだよ」
おなじみ花椿のマークが見えてきました。寅さんがマドンナ達と歩いたであろう道路から、バスは滑り込むように敷地内に入りました。
エントランスに入ると、昭和初期のものから順に口紅が並べられていました。順番に見て行くと、色だけでなく、形状からも時代の移り変わりがよくわかります。
宮澤さんが昭和38年の『ドルックス』という口紅を見つけて懐かしがっています。
「このデザイン、子どもの頃に家にあったのと同じだ」
「まさか、口紅を塗って遊んでいたんじゃないでしょうね」
「う〜ん…、たまにね」
「ゲッ!」
気分が悪くなったので、鎌倉工場限定のお土産コーナーに移動します。
「花椿ビスケット」が美味しそうだったので、思わず購入。このビスケットは、昭和7年に誕生した資生堂パーラーで最初に出来たお菓子だそうです。他にも鎌倉工場限定の口紅やあぶらとり紙なども販売していました。
五感でチェック
さあ、いよいよ工場見学です。まずは、靴にカバーを装着します。大きなティッシュボックスの上から足を踏み込むと、あら不思議、青いカバーがクルリと靴ごと足もとを包み込みます。
2階のPR室に入ると、白衣と白いキャップを手渡されました。ここで見学前にDVDを観ながら工場の概要を勉強します。白衣とキャップを被って、いざ工場内へ。
鎌倉工場では、主に口紅や乳液・化粧水・クリームなど約三千品種、年間約八千万個の製品が生産されています。
主力ブランドのマキアージュや若者に人気のマジョリカ マジョルカ、そしてリバイタル
グラナスや憧れの最高級クレ・ド・ポー・ボーテなどなど、どれも一度は耳にしたことのある商品ばかり。口紅に関しては、国内で販売される全ての商品を鎌倉工場で生産しているそうです。
「ここ鎌倉工場では、化粧水や乳液、クリームやサンプル、チューブ製品や口紅を作っています。」とアテンダントのキレイなお姉さんが案内してくれます。
生産ゾーンに入る前に、白衣の上から集塵機で、ゴミを取り除き、アルコール消毒、最後にエアーシャワー呼ばれる空気のシャワーを浴びて、目に見えない埃や塵をシャットアウトします。化粧品会社は食品会社と一緒なんですね。
作業を見学していたら、アテンダントのお姉さんから問題が出ました。
「ここに検査ではじかれた口紅があります。どこが基準を満たしていなかったのでしょうか?」
答えをお知らせしたいのですが、まだ行ったことのない方のための楽しみに取っておきます。
このように見学ルートのあちこちに体験できるしかけがあり、機械では判別できないチェックを必ず最後は人の目で厳しく行っているのだ、ということを実感できるようになっています。
資生堂では、無駄なく生産するため、生産量に応じた生産ラインを持っています。機械の切り替え作業の時間が大幅にカットできるラインもあり、市場に求められる量だけを生産し、在庫を抑え、より確かな商品をお客さまのもとへお届けするためのアイデアを勉強することができました。
リサイクル率100%
「白衣を着て、廊下を団体で歩いていると『白い巨塔』みたいだね」と宮澤さん。
テレビの観すぎです。 そんなことより、私が気になったのは、蛍光灯からぶら下がっている紐です。ここでは、使わない電気は消すという習慣を徹底しているそうで、よく見ると人のいない場所の電気は全て消されていました。
階段にも人を感知して点灯する人感センサー、工場内は昼と夜の照度を一定に保つために、自動調光システムも導入されています。これにより、年間一般家庭三軒分の電力を抑えられるとか。
また、水に関しても排水処理施設で浄化してから下水に流し、汚泥は専門業者に渡され、堆肥の原料として再利用されています。ゴミは、なんと三八品目に分別し、リサイクルされているそうです。現在はリサイクル率100%。環境に優しい取り組みもされています。
見学を終えPR室に戻ると、ドリンクの提供がありました。四種類からお好きなドリンクをどうぞということで、私はいつまでも若々しく健やかでありたい方へというフレーズに惹かれ「長命草」を、歳のせいかお疲れ気味の宮澤さんは、沖縄ウコンとカンゾウエキスの入った「シトルリン」を手に取りグビリ。皆さんは…、やはりコラーゲンたっぷり「ザ・コラーゲン」を選んでいらっしゃいました。
どっちがいいの?
ドリンクを飲んで休憩したあとは、机の上にある実験道具を使って、言葉ではなかなか表現できない資生堂の化粧品に隠されている「技」を検証します。
今回は化粧水の浸透についての実験でした。
「おお、色も違うし、染み込み具合も違うね〜」と感動する宮澤さん。
「で、どっちがいいの?」
「えっ、分からないのに感動しないでください」
「あ、そう。普段使わないからな」
「使っていたら恐いですよ」
実験後は、PR室に設置された化粧台で新製品を自由に試すことができます。皆さん早速ディスプレイに並べられた製品を手にとって、鏡の前へ。しばし、メイキャップタ〜イム♪
良い品を良い人で
今や押しも押されもしない化粧品業界トップの資生堂、元は日本初の洋風調剤薬局(明治五年)だったそうです。
社名の資生は、易経の一節にある【至哉坤元(いたれるかなこんげん)万物資生(ばんぶつとりてしょうず)】
つまり「大地の徳はなんと素晴らしいものであろうか。すべてのものは、ここから生まれる」という内容から名付けられました。
美を追求する会社だけに、工場内は清潔そのもので、資生堂鎌倉工場の「良い品を良い人で、お客さまの喜びを私たちの喜びに」というスローガンに感銘を受ける私! 私たち「ひろたりあん」も、ぜひ見習いたいものです。
最後に、記念品が手渡されました。女性はエリクシールシュペリエル、男性は資生堂メンの三点セット。中には、工場長自らが鎌倉の銭洗い弁財天で洗ってきたという五円玉も入っていました♪ 有難うございました。
生シラスは味わえず
工場を出た一行は、今が旬の生シラスを食しに、腰越にある「かきや」へ向かいました。
ところが、前日の荒天のため生は無いとのこと。残念!
「でも、釜揚げもふっくらとして美味しいよ」とご満悦の宮澤さん。そうか、これが目当てで付いて来たんだ、合点がいきました。
食事のあと、時間に余裕があるということで、皆さん生シラスを求めて、漁港へ向いましたが、ここにもやはり生は無し、サーファーの喜びは私たちの悲しみです。
香水瓶美術館
次に私たちが向ったのは、知る人ぞ知る「湘南江の島香水瓶美術館」。
フランスの天才的ガラス工芸家「ルネ・ラリック」の作品を中心に、19〜20世紀に作られた世界的に価値のあるフランスの香水瓶が約120点展示されている美術館です。
「あっ、ここがそうだったのか。普通の家かと思っていた」と宮澤さん。
「えっ、来たことあるんですか?」と、私が聞くと
「きてます。きてます」
それはマリック、こっちはラリック。場所は小田急片瀬江ノ島駅から江ノ電江ノ島駅に行く途中。江ノ島に来た人ならきっと前を通っているはずですよ。
館内には、ラリックだけでなくエミール・ガレやドーム兄弟など、アールヌーヴォーやアールデコの工芸家の作品もありました。
照明を落とした暗い部屋に浮かび上がる幻想的なデザインには、ウットリと見惚れてしまいました。
ちょうど6月24日から9月7日まで、国立新美術館でルネ・ラリックの生誕150年の展覧会があるので興味のある方は、ぜひ足を運んでみてください。
と、ここまでお読みいただいた方だけに特典!

国立新美術館で開催されている『ルネ・ラリック展』の
チケットをペアで5組の方へプレゼントいたします。
住所・氏名・年齢・電話番号、「ルネ・ラリック展」希望と
明記の上、下記の宛て先までご応募ください。
hirotarian@b06.itscom.net

キッキリキに行っちきち
帰りは鎌倉に立ち寄り、めいめいが自由散策。私たちは、八幡宮に参拝をすませたあと小町通りを歩きました。
生シラスを食べ損ねた恨みを晴らすように、私はソフトクリームと芋ようかんを購入。宮澤さんは、生は生でも、にここでしか味わえない鎌倉地ビールの生を美味しそうに味わっていました。(笑)。
そういえば、バスの中で「チッチキチ」というお店が話題にのぼっていました。ラスクの美味しいお店だとか…。
小町通りのお店で鎌倉駅前の丸七ストアーの中にあるという情報を得た私は、出発の時間が迫っているにもかかわらず「行ってきま〜す」と駆け出しました。これもお客さんのためです。
あ、ありました。でも「チッチキチ」じゃありません。「キッキリキ」です。しかも、本日休業の文字。「そんな〜〜〜」。
鎌倉野菜を物色しながら待っていてくれた宮澤さんと二人で、八幡宮前の駐車場まで猛ダッシュ。
およそ600メートル、1分遅れでバスに転がり込んだ二人。汗びっしょりの形相が相当ひどかったのか、お客様も怒るよりも同情の視線。理由がキッキリキと聞いて笑っていただけたのが救いです。
ただ、私たちのおかげでバスの中の温度が三度ほど上昇したことは間違いありません。皆さん、あらためてお詫びいたします。
最後は、金沢八景にある、『三井アウトレットパーク横浜ベイサイド』へ立ち寄り、お買い物をして帰路につきました。
お客様に喜びどころか、心配までかけさせてしまった、相変わらずドジなひろたりあん。皆さん、これに懲りずまたご参加くださいね。
(上 野)

「資生堂鎌倉工場」 鎌倉市岩瀬1-2-3
http://www.shiseido.co.jp/

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