■ひろたりあん通信バックナンバー
▼2008年11月号
夢の吹く丘 〜都筑の丘のすばらしき人々〜
影絵劇団『かかし座』  西垣 勝 さん

白と黒のメタモルフォーゼ

 飛び跳ねるウサギ、舞い降りて木の枝にとまるフクロウ。 イヌの親子、アヒルの家族。子どもをヘビから守るため自分の身を投げ出す親リスの姿。優しくて、悲しいアニマルワールド。

 フォークデュオ「コブクロ」の 『蕾』という曲のプロモーションビデオの映像。後半部分から展開する、動物たちの物語はすべて手影絵で演じられている。

 手や指でいろいろな動物をこしらえ、その影を障子や襖などに映す。 誰もが子どもの頃にやったお手ごろな遊び「手影絵」。 

 影絵劇団「かかし座」が制作したプロモーションビデオの映像は、私たちが思い描く手影絵遊びの世界を何倍、いや何十倍にも広げ、その奥深い世界に感動を覚えずにはいられない。登場する動物たちも実にリアルで、生き生きと暮らしている。 

「白と黒だけで表現する。表情の何も無い人形の中に、子どもたちは想像するんですね。人形が少しうつむくだけで、悲しい顔したな〜だとか、黒い人形なのに、ドレス着ていたね〜とか、着物だったの? とか。

子どもたち100人いれば、100人が自分の中で想像してふくらませることができるんですね。自分で考えたものだから、子どもたちの脳裏には強烈に残る。それが影絵の凄さというか、素晴らしさなんですよ」

光あるところに影がある
 都筑区南山田に日本初の影絵劇団『かかし座』はありました。

 昭和27年、後藤泰隆(とうたいりう)氏によって創立。翌年、日本の地上波テレビ放送と同時に、NHKの専属劇団となり、影絵劇『ルパンの奇巌城』のテレビ放映が始まりました。

 以降、児童向けの昔話を製作。数々の芸術賞も受賞されました。私も『杜子春』や『マッチ売りの少女』の映像は目に焼きついています。

 「六十年近い歴史があります。初めの頃は児童向けの昔話を作っていたんですけど、舞台中心の今の形態になったのは、二代目(後藤圭氏)が代表に就任してからですね」

 スクリーンに映し出される影絵、その美しくも迫力のある映像世界と、生き生きと唄い、踊る、生身の人間によるお芝居。夢幻(無限)の可能性を秘めた、まさに総合芸術と呼ぶにふさわしい舞台 。それが現在の「かかし座」の形態です。

 劇団に入って16年目という西垣勝さん。大きな身体に、惚れ惚れとするいい声、さすがは役者だな〜と感心していると、本当は、テレビCM製作の仕事を夢見て『かかし座』に入社したそうです。

「僕は神戸出身なんですけど、16年前というのが就職難の時代でして(笑)なかなか仕事が無くて、どうしようか?って考えていたんですね。そんなときに、たまたま、友人がちょっと求人票を見に行くから付き合ってって言われて、付いていったんですよ。で、ここで待っていてよって言われて、長椅子にポンと座ったら、目の前に『かかし座』の求人票があったんですね。こんな専門学校にも劇団なんか(の求人が)来るんだ〜って、見てましたら、そこの職種のところにCMを作るって書いてあったんです。三日後に会社説明会があるよっていうことで、横浜に来て面接を受けまして、その二日後に内定をもらったんです」

 かつてはCMやアニメーションなど、映像作品を制作していましたが、南山田に社屋が移転した17年前からは、舞台作品が中心になっていたのです。

「うちの劇団に入りますと、もちろん、セリフをしゃべらなければいけない。歌を唄わなければいけない。バレエの教室に通わなければいけない。アクターズっていうんですけど、表現の勉強もしなくちゃいけない。そして、手影絵ですね(笑)。本当にいろんなことをやらなければいけないんです」

 舞台のセッティングや撤収も自分たちでやる。舞台役者を目指して入社する若い方は、その忙しさにいきなり面食らうそうです。

「今日は板橋で午前中に2回の公演がありましたので、朝の3時に起きて、ここに4時半に集合して、6時に会場に入りました。かかし座の影絵劇は、録音のセリフに合わせてカセットテープを流して人形を動かすというスタイルではなくて、役者が出てきて生の声、生の歌が基本ですので、とにかく咽喉を壊したりだとか、風邪をひいたりしないよう心がけています。お芝居のグレードが落ちますし、誰が抜けても代わりがいないギリギリのところでやっていますからね。若い子たちには体調管理をしっかりしなさいというのがまずひとつですね」

 稽古の時も皆さん笑顔。演じる側が元気で明るいからこそ、観ているお客さんも楽しめるのです。

「前で役者をやって、裏にひっこんだら、光を当てたり、音を出したり、次に人形を動かして、影絵を出して、裏にいるほうがバタバタと走り回って忙しいんですよ。舞台裏を取材されると、皆さん驚きますね」

 

三枚のおふだ
 さて、待ちに待った次の舞台『三枚のおふだ』が、いよいよ来月二十三日に都筑公会堂で上演されます。

「大きいスクリーンの中で画面いっぱいに、やまんばの人形を動かしたり、影絵の美しさだけでなく、迫力がある作品として好評をいただいています。特に低学年の子どもたち用に作ったものですから、後半は子どもたちとの掛け合いみたいな形で進めていくんですね。追っかけのシーンになると、人形になって小僧が逃げる。やまんばが追いかける。そうすると、子どもたちから『キャーッ! 早く逃げろ〜!』って、小僧さんが道に迷うシーンでは、『あっちだよ〜っ』。やまんばの家を見つけて、あそこに行ってみようっていうと、全員で『行っちゃダメ〜!』って叫ぶんですよねぇ。本当に楽しいですよ。子どもたちの純粋さを感じますね」

 誰もが知っている『三枚のおふだ』の話。聞いているだけでドキドキワクワク、映画『ターミネーター』のような、迫力ある展開が期待できそうです。最後に劇団としての夢をお聞きしました。

「代表が影絵を取り入れたエンターテーメント集団を目指そうという目標を掲げていますので、僕たちもそれに付いて行こうと頑張っています。

 小さいですけど、今年、岐阜の下呂(温泉)に常設の影絵劇場『しらさぎ座』がオープンしまして、市の依頼で、うちのメンバーが毎日上演しているんですけど、それが全国に広がっていく可能性もありますし。もっと言うと、ブロードウェイですとか(笑)、笑われるかもしれないですけど、世界に通じる、世界に持っていけるものを作れたらなと思っています。そのためには、まず地域の皆さんに、『かかし座』がここにあるんだということを、知っていただけることですね」

 日本を代表する影絵劇団、かかし座は皆さんのすぐそばにありますよ〜。地域の皆さん、ぜひ都筑公会堂に足を運んでみてくださいね。

12月23日(祝・火)

午前の部 10:30〜  午後の部 14:00〜

会場 都筑公会堂

http://www.kakashiza.co.jp/


■前に戻る■