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| ▼2011年2月号 |
| 地名推理ファイル歴史探偵 高丸の地名推理ファイル」 |
■絹の道を往く 八王子編 Vol.7![]()
熊谷地名考 鎌倉時代の武将、熊谷直実(くまがい・なおざね)の本拠地だったということで、熊谷駅北口には、直実の騎馬像がある。駅前の景観がどんどん画一化されて、どこの町だか見分けがつかず、旅の情緒もなくなってしまった昨今、銅像やモニュメントだけが、唯一その土地の独自性を認識させてくれる。 因みに、この像を手がけたのは、長崎の平和祈念像の作者・北村西望(きたむら せいぼう)だ。 直実といえば、源平合戦「一ノ谷の戦い」において、自分の息子と同じ年齢の平敦盛(あつもり)を討ち取ったことで世の無常を感じ、出家した武将として有名だ。この話は後に幸若舞『敦盛』という演目となった。 「人間五十年、下天の内をくらぶれば、夢幻の如くなり」、大河ドラマ『江姫』でも豊川悦司扮する信長が唄っていた。 草花が好きな方なら、クマガイソウ=アツモリソウを思い浮かべるだろう。 袋状の唇弁が、熊谷直実と平敦盛それぞれが背負った母衣(ほろ)にたとえて名付けられた。花の色によってどちらの花か見分ける。
平氏の赤(旗の色)が敦盛で、白が源氏の直実だ…といっても、熊谷氏は桓武平氏の流れを汲むと称している。
ただ、これも異説あって、武蔵七党の私市(きさい)党、あるいは丹(たん)党という武士団だったという説もあり、よく分かっていない。 いずれにしろ、熊谷(クマガヤ)が熊谷(クマガイ)氏発祥の地であることに間違いはない。されば、地名と苗字の読みが違うのはなぜか?昔から疑問に思っていたので、熊谷の人に聞いてみた。 「国鉄の駅が出来たときに間違えたんだよ」 (まさか!)と思うような答えが返ってきた。元は「クマガイ」で、間違って「クマガヤ」になったそうだ。 関東では「谷」は本来「ヤ」とか「ヤト、ヤチ」と読む。熊谷の隣の深谷に越谷、鳩ヶ谷と埼玉県では谷は「ガヤ」で「ガイ」ではない。 たぶん、本来の地名は「クマガヤ」が正解だろう。クマガヤという地名を苗字にした場合、下に名前をつけて口にすると言いづらい。 「やぁやぁ!我こそは、くまがや…ちっ!(あっ、舌かんじゃった)」ということがあったかどうかは分からないが、案外そんなところではないだろうか。
おっと、わざわざ熊谷まで地名を調べに来たわけではない。先月号の最後にふれた『片倉シルク記念館』を見に来たのだ。 JRの熊谷駅北口から線路に沿って歩くこと15分。秩父鉄道・上熊谷駅の近くにショッピングセンターのSATY(サティ)がある。シルク記念館は、その隣にあった。 というよりも、SATYと記念館合わせて『熊谷片倉フィラチャー』というらしい。「フィラチャー」とは製糸場のことで、ホテルやレストランなどサービス事業を全国展開している片倉工業では、こうした工場跡地をイオンなどのショッピングセンターに賃貸している。(SATYというブランド名は、この春すべてイオンになるそうだ)
片倉シルク記念館
「片倉シルク博物館」は、操業終了の6年後の平成十二年、工場内にあった繭倉庫などを改装して建てられた。 平成十九年には、近代化産業遺産に認定されている。 建物の中に入ると、創業者・片倉市助と初代兼太郎の写真が目に飛び込んできた。その隣には丸に十の字の大きな図柄。 すわ、薩摩島津家と何か関係があるのか?と思いきや、片倉の商標(社章)であった。 十の文字は、製糸業だけに、縦糸と横糸を表している。それだけでなく、東西南北、上下左右に向かう自由の発展をも意味する。それらを秩序と規範の大きな○で囲むという、片倉の精神が隠されていた。 二階に上がると、当時の製糸機械が展示してあり、さらにパネルと作業風景の写真を使って、製糸の工程が詳しく解説されている。 また、年表とミニシアターの貴重な映像によって片倉工業と熊谷工場の歴史をつぶさに知ることができる。福島郡山工場から移築された、繭を選別・乾燥・保管するための「蜂の巣倉庫」は、その構造を見るだけでも価値がある。 製糸業に関しては、文献や資料を読んでも、いまいちイメージがわかず、もどかしさを感じていたが、ここに来たことで、それが少し解消できた。わざわざ熊谷まで足を運んだ甲斐があったというものだ。
青葉区の製糸場 青葉区にも、かつて製糸場があった。 『横浜緑区史・通史編 第四編・近代第五章・明治後期の緑区域』には、「石川村では、平川に黒沼平兵衛が黒沼製糸場を経営していた」と記されている。 他には、長津田の光栄合資会社、川和の太陽合資会社などが明治の頃の都筑郡に存在した。 区史には、黒沼製糸場のハガキが掲載されている。それによると、住所は「都筑郡山内村石川六三八五番地」、現在の青葉区元石川町だ。地元では『尾作(おざく)谷戸』と呼ばれている。
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