■ひろたりあん通信バックナンバー
▼2012年12月号 
地名推理ファイル歴史探偵 高丸の地名推理ファイル」
■絹の道を往く 探訪編(鉄 町)Vol.1

 「森は海の恋人」という環境保全活動がある。高度経済成長時代に失われた豊かな海を取り戻すため、海に注ぐ河川の上流に落葉広葉樹の森を創ろうという運動で、宮城県気仙沼市で牡蠣や帆立の養殖をされている畠山重篤氏によって平成元年より始められた。小・中学校の教科書で取り上げられたこともあり、いまや全国に拡がりつつある。



鉄の効能
「森の落ち葉や枯れ木が、微生物などによって腐葉土(ふようど)となり、腐葉土にしみこんだ雨が長い時間をかけ川に注ぐ。森から川によって運ばれた水には、その腐葉土に含まれていた養分がたっぷりと溶け出していて、その養分が海中の植物プランクトンや海藻を育み、貝や魚などが生息する豊かな海を作るんです。つまり、森が海の生きものを育てているんですね」

「植物プランクトンを育む栄養分というのは、チッ素やリン、それから珪(けい)素ですね」

「さすがですね。津屋さん、そうなんです。自分は理数系がさっぱりなんで…上手く説明できないんですが、植物プランクトンや海藻は、水中に溶けているチッ素やリンや珪素をそのまま体内に取り込むことはできないそうなんですよ」

「ほぉ…、では、ほかにも条件が必要だということですか?」

「そう。それが鉄なんです。プランクトンや海藻は、先に微量の鉄分を取り込んでおかないとチッ素やリンを体内に取り込めない構造になっているんだそうです。ですから、鉄分が無いとどんなに養分が豊富でも植物プランクトンや海藻は育たず、したがって海の生きものは増えない…と、いうことになるんですね」

 もちろん、金属の鉄がそのまま養分になるわけではない。

「森の落ち葉を土中のバクテリアや細菌が分解すると、フミン酸やフルボ酸ができるそうです。このフミン酸が土中の鉄粒子を溶かして鉄イオンを作り、それがフルボ酸と結合することでフルボ酸鉄という物質ができる。それが溶けて養分になるんですね」

「開発前の青葉区や都筑区は、ほとんどが雑木の森でしたからね」

「大場川やこの黒須田川にも、昔はシジミがたくさんいて、味噌汁の具にしていたそうですよ」

「ほぉ、黒須田川でもシジミがとれたんですか? たしかに貝類も鉄分が豊富ですからね」

「鉄分が不足すると貧血になったり、疲れやすくなる。人間も鉄分無しでは生きていけません」

「鉄分は、赤血球のヘモグロビンの成分になって、酸素を運ぶ役割がありますからねぇ」

「あ、それで、さっきの鉄分が植物プランクトンや海藻を育てるという仮説なんですが…」

「え、あの話は仮説だったんですか…」

もう一つの鉄仮説
 1970年代のはじめ、植物プランクトンの生育に必要なのは、チッ素やリン、珪素だけだと考えられていた。ところが、ジョン・マーチンというアメリカの海洋学者がそれに異を唱えた。「まさに鉄分が不足しているからだ」と。

「マーチンは、それを証明するための実験を行う直前にがんで亡くなってしまうんですが、彼の意思を継いだ研究者らによって、海に鉄を撒くという大規模な海洋実験が行われ、鉄仮説はなかば証明されました。日本でも全国各地で鉄を海や川に撒く実験が行われています。山口県では竹炭と鉄くずを粘土で固めて焼いた鉄炭ダンゴというものを川に沈めて、ドブ川を再生させたんです。琵琶湖では真珠の成長に効果がありました」

「鉄と炭…ですか、なるほど。二価鉄がイオン化して溶け出したんですね。電池の原理です」

「…。え〜、難しいことはよく分からないんですけど…。とにかく、この鉄炭ダンゴみたいなものを全国各地の沿岸に撒けば、海の砂漠化現象(磯焼け)を防ぐことができる。それだけでなく、海藻の養殖によって二酸化炭素の削減、しいてはバイオ燃料の生産もできるようになるんです」

※詳しくお知りになりたい方は、畠山重篤氏の著書・『鉄で海がよみがえる』『鉄が地球温暖化を防ぐ』をお読みください。

「つまり、鉄は地球を救うんですよ。あれっ、津屋さん、なんで笑ってるんですか?なにか可笑しなこと言いました?」

「なるほど(笑)鉄仮説ですか。つまり、高丸の仮説…鉄町の地名には鉄が関係しているに違いない…という鉄仮説に話をつなげるための伏線ですね?」

「す、鋭い。わかりますか…」

「稲荷前古墳から、ずーっと鉄の話ばかりなんで察しがつきました。いいじゃないですか、私も丸さんの鉄仮説には興味があります。ですが、鉄町の由来については郷土史家の方が書かれてましたね。(くろ)は田んぼの畦のことで、(がね)は、(曲がっている)という意味だと…」

「その説は、その郷土史家の方の説というより、地名の語源辞典にも載っている一般的な定説です。もちろん、そういう説があることは否定しません。ただ…」

「ただ…?」

「日本全国に田んぼはありますよね。畦が曲がっている田んぼなんて昔は当たり前でした。とくに谷戸の多いこの辺りは、ほとんどの畦が曲がってると言っていい。『くろがね』の語源がソレだとしたら、全国いたるところに同じ地名があっていいじゃないですか?」

「確かにそうですねぇ」

「でも、ほとんど見ない。もう一つの疑問は、なぜ鉄という字をあてたのか?…ということです」

「鉄は(くろがね)じゃ、なかったですか?金は黄金(こがね)銀は白金(しろがね)銅は赤金(あかがね)…ですね」

「だったら、黒金と書いてもいいですよね。現に、静岡駅や北海道の釧路駅の近くに黒金町はあります。なぜか二つとも駅近ですけど…。鉄という字をあえて当てたのはナゼか?問題はそこなんです」



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