■ひろたりあん通信バックナンバー
▼2013年11月号
地名推理ファイル歴史探偵 高丸の地名推理ファイル」
■絹の道を往く 探訪編(鉄 町)Vol.12

 筍は、「桐蔭学園女子部入口」の信号交差点の北側、居酒屋「しんたく」の裏山で採れる。それを新潟県岩船郡山北町小俣の『中俣缶詰』という会社が缶詰に加工している。

「食べられたんですか?」

「ええ、炭火で焼いてもらって食べたんですけど、これが水煮缶とは思えないほど、しっかりとした歯ごたえで美味しいんですよ」

「そうですか。水っぽいような気がしますけど…」

「炭火で焼くのがいいんですね。元々は、お正月のおせち料理用にと考えて、缶詰にしてご近所に配っていたそうです」

「食べてみたいですね」

「じゃ、本当に今度一緒に行きましょう。水煮缶もお店で売ってますし」

「あ、そうなんですか」

「ええ、一個800円です」

 缶詰の会社のある岩船郡山北町(さんぽくまち)は新潟県最北端に位置するが、五年前の市町村合併の際、鮭で有名な村上市に吸収されていた。

青葉音頭の風景
 T字の交差点からおよそ200m、「桐蔭学園入口」の信号の一つ手前の角を左折すると、現在の『鉄小学校』の正門に出る。

 鉄小学校は、今年で140周年を迎えた。「青少年野外活動センター」の場所から、こちらに移ったのが昭和四十九年なので、鉄筋コンクリートのこの校舎は、来年で40年になる。

「秋が来た来た めぐみの里へ〜♪汗は白銀(しろがね)、稲穂は黄金(こがね)〜♪みのり豊かな 梨畑…」

「どうしたんですか?盆踊りの歌なんか唄いだして…」

「青葉音頭の三番の歌詞なんですけど、知っていますか?」

「知っていますよ。確か、唄っているのは歌手の鳥羽一郎さんでしたね」

「歌詞は平成八年に区民の公募で選ばれたんですけど、作曲はこちらも大御所、船村徹さん。補作詞は、これまたすごい、星野哲郎さんなんですね」

「そうでしたか。それは凄い顔ぶれですね。で…その青葉音頭がどうかしましたか?」

「あぁ、そうでした。仕事柄、毎年夏祭りや盆踊りの会場をハシゴして回るもので、この青葉音頭のメロディと歌詞が耳の奥にへばりついちゃっているんですよ。で、この鉄小学校の場所に来ると、つい三番の歌詞が口をついて出てくるんです」

「それが今の歌詞ですか」

「汗は白銀、稲穂は黄金…いいでしょう。鉄小学校の子どもたちは、一年生から六年生まで、学校をあげて稲作…米作りに励むんですよ」

「米作り…ですか」

「ええ、田植えとか、稲刈りとかを授業に取り入れている学校は多いですけど、鉄小学校では、苗床づくりから種籾の選別、田の草取りや鳥よけの網かけ、脱穀、そして収穫祭まで米作りのすべてを体験するんです。何度か取材させてもらいましたが、六年生の子なんてもう慣れたもんですよ」

「それは素晴らしいですねぇ」

「それに加えて、周りには梨畑。作詞された方(植木久さん)は、青葉区の四季折々の風景を歌にされたということですが、もしかしたら三番の歌詞はこの鉄の風景のことではないかと思うんですよ」

「確かに、そう言われれば…」

「白銀(しろがね)、黄金(こがね)ときたら、鉄(くろがね)に決まっていますからね」

「・・・・・」

消えた第三節
 耳の奥にメロディがへばりつくといえば、鉄小学校の校歌が耳にへばりついて離れない。

 文化の日に行われた青葉区民まつりに我が廣田新聞もブースを出させていただいた。テーマが「地域」ということで、ひろたりあん通信の人気コーナー『わが街今昔』の写真展と、廣田新聞創設者・廣田花崖と地域のつながりについて展示を行ったのだが、その時、廣田花崖の作詞である鉄小学校校歌のCDを関係者の方からお借りして、五時間近くリフレインでかけっぱなしにした。そのお陰で、しっかりと覚えてしまった。

 鉄小学校の校歌は、大正十三年に当時の校長・野村一氏が花崖に作詞を依頼して作られた。
一、東風(こち)は都の息吹きを運び
  文化の港を南にひかえ
  地の利の恵み豊けきところ
  ここ武蔵野のかたほとり

二、蛍の光窓の雪とぞ
  風の朝も雨降る夕も
いそしむ数百は我等学び子
かたき心くろがねの

三、いまし我等は幼き芽生え
 花と咲くべし実を結ぶべし
 我等のいさおは毋校のほまれ
 共に劭まん育たなん 


 一番の「東風は都の息吹を運び…」は、当初「神の宮居を東に仰ぎ…」だったそうだ。
 また、原作は四番まであったが、三番目の歌詞が削られてしまっている。一番の歌詞は、昭和二十三年に花崖自らが変更を申し出たというから、終戦後の時代精神の変化に配慮したのだろう。三番目の歌詞については不明である。

★ニュースです。今回の「絹の道」、そして前回の「大山街道」のパートナー津屋秀樹さんが、またまた本を上梓された。
タイトルは『汽車旅五十年』。(一人よし、家族よし、仲間よし。旅心をさそう痛快な汽車旅エッセイ。消えゆく路線と競争しながら達成した国鉄全線完乗の旅の哀歓、一三〇円で九五〇〇円を楽しむ方法、青函連絡船との四十四年、宮城岩手福島絆の旅などなど…史跡を巡り、温泉につかり、酒を愛する大人の修学旅行)と、帯書きにあるように、旅好き、そして、鉄道好きにもたまらない一冊である。
 「絹の道」をご一緒してから一年と九ヶ月。相棒の私が知らない間にこんなに素敵なエッセイを書かれていたなんて…。さすが津屋さんである。

                                             高丸
 
 

 

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