■なんて厚かましい!
さて、困りました。実はネタがないんです。予定していた「湖東三山と香嵐渓」が、応募不調で催行中止になり、頭を抱えていると、やはり天は私を見放してはいなかったんですね…
次回予定のワンナイトクルーズ(これも締切にタッチの差で間に合いません)で使用する豪華客船「飛鳥」の運営会社「郵船クルーズ」さんから、研修をかねての体験乗船に招待されたのです。これは旅行記の材料になります。ところが「そうか、ご挨拶もあることだし、ここは責任者の私が出かけてくるか」いつもは責任回避ばかりしているくせに、美味しいところだけ横からかっさらおうとは、なんて厚かましい上司です。「いいですよ、その代わり旅行記を書いてくださいよ」「旅行記はおまえが書け」「行ってもいない旅行記が書けるわけはありません」「…」文才のかけらもない上司は、私の一言で沈黙するほかありませんでした。
■今度は鬼のような上司
ところが私の苦肉の策に対して、ひろたりあん通信の鬼のような編集キャップは「お客様の顔の見えない旅行記なんか意味がない!」とあっさりボツ。「締切を延ばしてやるから、ワンナイトクルーズから帰ったらすぐに書け!」なんと私は上司に恵まれないんでしょう(涙)。「あーあ、またおまえのせいで残業だ」あんたのせいでしょう、とはもちろん言えませんけれど…。
そんなわけで今回は、日本が誇る最大級のクルーズ客船「飛鳥」を使っての「横浜ゆったりワンナイトクルーズ」にご案内しました。クルーズの楽しみは目的地での観光だけにとどまらず、宿泊の設備を備えているホテル機能に加えて、レストランでの美味しい食事や、本格的なハリウッドスタイルのエンターテイメント、プールやジャグジー、フィットネスクラブ、更には図書館やカジノ、ゲームコーナーなどのレジャー施設があるところにあって、「海上の動くホテル」「街がそっくり船になったよう」とも言われます。私見ですがクルーズは究極のリゾートだと思います。
■お客様は浦島太郎です
私の話を聞いていた同僚のI氏は「なんだよ、飛鳥っていう船はこりゃ〜竜宮城みたいじゃねえかよー」とコメント
(ちなみにI氏の人生で一度だけ乗った船は青函連絡船だそうです)。おとぎ話の「浦島太郎」にたとえれば、まるで私は子ども(さながらわがイヤミな上司?)にいじめられているかわいそうな亀(「ゾウガメだろうが」とかいう雑音は無視)で、浦島太郎(お客様)に助けられたそのお礼に竜宮城(飛鳥)に案内するというストーリーができあがります。ただおとぎ話と違うのは、この亀(私)は竜宮城(飛鳥)へ案内する手数料を請求する(つまり有料)いう図々しいヤツなのです。
当日は出港が夕方なので午後に出発、皆様をご案内して送迎バスは横浜港の新港客船ターミナルへ向かいました。今回参加されたお客様の年齢層は幅広く、下は二十代前半の方から上は八十四歳まで、また車椅子で参加された方もいらっしゃいました。「通常のツアーだとスケジュールがハードだし、何よりも他の人に気を遣わなければならないしね。クルーズなら自分たちのペースで行動できるからありがたい」とのことです。
出港二時間前に到着し、そのままチェックイン。セイル・アウェイ・パーティー(出港パーティー)までご自由に過ごしていただきました。
内緒にしておいてくださいね。
私は初めて「飛鳥」に乗船される十数名の方を連れて船内案内をしました。「飛鳥」はビルで言えば十一階建てに相当する大きさで、二万八千八百五十六トン、乗客定員は六百名弱で日本の客船としては最大級です。サウナ付大浴場や図書館、バー、カジノが楽しめるゲームコーナーなどを、詳しい説明付きでご案内し、皆様は尊敬のまなざし(?)で「さすがプロね」でも、ついこないだ体験乗船したばかりだということは内緒です。
船内案内の時、あるお客様とロビーですれ違ったのですが、目線が合ったのに声を出してこないのです。よく見ると口いっぱいに何かをほおばっている様子です。船内では軽食食べ放題、お酒以外飲み放題でして、そのお客様はバーやラウンジの軽食をつまみ食いしまくっていたそうです。豪華客船の中でも、ひろたりあん旅倶楽部のメンバーの食いしん坊ぶりは健在です。
■憎らしいなあ
さて、デッキの方から「ジャン・ジャン・ジャン」と出港を合図するドラがなり始め、「セイル・アウェイ・パーティー」が始まりました。デッキはフィリピンバンドの生演奏で盛り上がり、船は汽笛を鳴らして定刻どおり十七時に出航。シャンパングラスを片手に、遠ざかる横浜みなとみらいの街並を眺める、なんともいえない雰囲気に酔いしれます。このあと「飛鳥」は東京湾、相模湾、そして伊豆諸島を周回し、翌日の十二時に横浜港に着岸する予定です。
ベイブリッジを通り抜けたころ、メインダイニング「フォーシーズン」で夕食。前菜、スープ、サラダ、メインディッシュ、デザートのフランス料理のフルコースを堪能しました。「あら森本さんお薦めのメニューがあるわよ」「?」「ほらここよ」とお客様がすかさず指さしたのが「体重が気になる方へのヘルシーメニュー」でした。「私がダイエットしないのは、お客様に対して私の所在をはっきりさせた方が、安心感を与えるだろうという、心憎〜い気配りからですよ」「確かにあなたは遠くからでもよく見えるわね」ほんと憎らしいですね。
そんな冗談を交しながら、美味しい食事とワイン、そしてひろたりあん旅倶楽部ならではのアットホームな雰囲気でお客様同士の会話もはずみました。
■酒豪です
夕食のあとはグランドホールにて本格的アメリカ仕込のショーを楽しみました。ホールの入口でクルー(乗組員)が「これをお持ち下さい」と渡されたのが3D対応のグラス。立体映像を交えてのショーを船上で楽しめるのは魅力的です。ショーのあとはラウンジでのピアノ演奏やダンスタイム、シアターでは今話題の映画、そして「お客様全員がお帰りになるまでが営業時間です」という英国風の本格的なバーもあり(この日の営業終了は朝五時とのこと)、思い思いの一夜を過ごしました。「終電時間やタクシーの心配がいらないのがいいね」このお客様は間違いなく酒豪です。深夜十一時からは夜食が用意されているので、食いしん坊の人にはとてもうれしい限りです。
うどんや甘さ控えめのケーキ、フルーツは胃にもたれず、夕食と味覚がだぶらないのが好評です。
■食いしん坊の鑑
朝はラウンジでのコーヒータイムで始まり、朝食は二ヵ所、洋食ビュッフェと和食です。なかには最初和食を食べたあとお部屋で胃を休めて、さらに洋食を食べる「食いしん坊の鑑」のような人も少なくないとか。こんな朝から晩まで食べてばかりいるので、大半のお客様は二、三キロは太っていることでしょう。このクルーズでは、軽食を入れると一日七食は食べられるのです。えっ私?聞かないでください、でもヘルシーメニューにした方がよかったかも。
朝食のあとはビンゴゲームなどの船内イベントがあり、下船ギリギリまで楽しませていただきました。
昼食を済ませ、横浜港に定刻通り十二時に着岸。皆様名残惜しそうに「飛鳥」をあとにしました。「飛鳥でのひとときはいかがでしたか?」と尋ねるとほとんどの方は忙しくて仕方ないとのコメント。「できれば最低でも二、三泊はしたいわ」やれ食事だ、やれイベントだなどとスケジュールが盛りだくさんなので、のんびり過ごす時間も欲しかったようです。
■ピラニアの餌食
本格的にクルーズを楽しみたい方のために「飛鳥」では二〇〇三年世界一周クルーズ(百二日間)が計画されています。中でもハイライトは南米のアマゾン川を九日間かけてのクルーズです。他にも通常のツアーではなかなか行けない魅力的な観光地(クロアチア、アラビアなど)にも寄る人気コースです。ご興味のある方、お問い合わせ、お申込みは、ひろたりあん旅倶楽部までご連絡ください。今お申込みになりますと最大二百万円割り引きとなります。もし二十名様以上のお客様がいらしゃいましたら百二日間密着お世話でご案内させていただきます。
「その間の旅行記はどうするんだ」「もちろんおまかせします」「それならお前はアマゾン川でピラニアの餌食になってしまえ」我がイヤミな上司が隣でぼやいています。
(森 本)
|