■ちょっと失恋風
不況が長引く日本、全世界に衝撃をもたらした米国の同時多発テロ、安穏に旅行するムードではない御時世となってしまいました。明るさが自慢のひろたりあん旅倶楽部が、皆様の活気づけの一助となればと企画したのが、年末恒例の赤字覚悟の出血大サービス、格安北陸旅行です。 当日バスに乗り込む私を迎えてくれたのが、おなじみの自称「ひろたりあん旅倶楽部専属運転手」別名「歌う運転手」Kさんです。しかし、ちょっと様子が変、普段は明るいKさんなのに、イマイチ元気がない様子。「声の調子が悪くて歌いづらいんだよ」本業は「歌手」とでも言いたそうに嘆くKさんは、風邪をこじらしたそうです。でも本当は今回は都合で(若い女性の)ガイドさんの同行がないせいだということを、私は知っていたのです。一種の失恋なのかもしれません。
■エジプトツアーはいかがですか?
バスは各配車場所からお客様をご案内し、中央道の松本ICから国道を走ること約二時間、最初の観光地である「飛騨の小京都」高山に到着。高山名物の朝市はおあずけですが、道中長いので時間の制約はあるものの、郷土料理の昼食や古い街並みの散策など、皆様思い思いに楽しんでいました。
余談ですがひろたりあん旅倶楽部の人気コースの一つとして、北陸方面のバスツアーは年数回は催行するのですが、ご町内から乗換なしで直行できるのは北陸、関西が限界。いつも途中の観光地を決めるのに悩まされますが、この飛騨高山市内散策は好評です。ただ移動の都合上、長時間の滞在ができないのがタマにキズです(宣伝…飛騨高山を中心のコースも企画しますので要チェック)。
えっ。天気はどうだったかって?最近私が「雨男」だという濡れ
衣(?)を着せられているせいか(「えっ?濡れ衣だと?逆におまえがお客様を濡らしているんだろうが」とは憎き上司のイヤミです)、天候に恵まれた時の旅行記はおもしろくないという、ヘソ曲がりなお客様もいるのです。中には「ひろたりあん旅倶楽部の旅行に参加したいけど、添乗員が雨男だから行くのに躊躇しているのよ」と本気に考えている方もいました。それならエジプトへ行くツアーでも企画しましょうか?ただし治安は保証しかねますが…。
■やるときゃやるよ
高山市内をあとにして三十分程度走ると突然大雪が降ってきました(私のせい?)。Kさんは峠道の途中でバスを止め、「森本ちゃん、チェーンを巻くの手伝ってくれる?」Kさんのタイヤチェーンを巻く早さはさすがプロ、三分もたたない間に巻き終わり、「やるときゃやるよ」と少し得意げでした。急いで山中温泉のホテルに向かいました。
移動の疲れを温泉で癒したあとはお待ちかねの夕食です。さすが北陸、荒波の日本海でもまれた魚介類は大変美味しく、お客様からお褒めの言葉をいただき、企画者冥利につきます。
翌日はゆっくり出発、越前竹人形の里に立寄ってから永平寺参拝です。永平寺は道元禅師が開いた曹洞宗の大本山。禅に興味のある人は座禅修行を体験できるそうです。またごま豆腐や精進料理が名物です。
■私もフラれちゃっいました
出発の時間がきましたので、赤目四十八滝での愛の語らいは一旦終了させ、宿泊先のホテルへ向かいました。バス車中はふとしたことで「ひろたりあん通信」の同行記の話題で盛りあがりました。
永平寺の門前までお客様をご案内しバスに戻る途中、後ろから「キャー、森本さーん」と若い女性の声が…。「おかしいなあ若い女性のお客様(失礼)はいなかったはずなのになあ」と振り返ると、Kさんの同僚のバスガイドさんたちでした。中には前週三日間一緒だったノリの
いいガイドさんまでいたのです。「なんで森本さんがここにいるのよ」「そっちこそなんでいるの?」休暇を利用してプライベートで三日間北陸周遊の旅を満喫していたとのこと。「Kさんもいるの?」
バスに戻るとお客様の目を盗んで…いや陰の努力を惜しまずに、車中で「ボイストレーニング」に励んでいました。たしか風邪をひいていたはずなのに、
すっかり自己陶酔しているKさんです。「なんでお前たちがここにいるんだよ」とびっくりした様子。
なんだかんだで雑談で盛りあがっているところをお客様に目撃され「あらいいわね、森本さんは永平寺でナンパなの」と誤解される始末。十月に行った比叡山といい、今回の永平寺といい、荘厳なる聖地で俗物ぶりをあからさまにする私たちには、禅師の厳しい「喝」も焼け石に水のようでした。
出発時間となり「座席も空いていることだし、ガイドしながら横浜へ帰ろうよ」と誘ったら「一足先に飛行機で帰るから、お仕事がんばってね〜」とナンパも失敗。冬の永平寺は、骨身に染みるほど寒いのでありました。
(森 本)
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