■締めくくりは「王道」です
今年の紅葉めぐりの旅の最後を締めくくるのは、紅葉狩りの王道「錦秋の京都」です。私見ですが、京都ほど奥深い観光地はないのではないかと思います。長きにわたる王朝文化に裏打ちされた歴史的建造物群と、それらを取り巻く四季折々の風情を求めて、全国はおろか海外からも多くの観光客がやって来ます。そして京都観光の一年のクライマックスともいえるのが「錦秋の京都」ではないでしょうか。
今回ひろたりあん旅倶楽部では、京都でも比較的個人では行きにくい高雄・三尾めぐりをメインに企画をたてました。ただ京都直行だとバスの移動が長くなりすぎるので、中京・関西地区で紅葉のメッカとして人気がある「赤目四十八滝」を途中併せてご案内することにします。
例によって、ひろたりあん旅倶楽部専属運転手、別名「歌う運転手」Kさんとその舎弟分の交代要員カネゴンの二人にハンドルを任せ、各配車場所へお客様をお迎えしたあと、バスは東名高速をひたすら西へ西へと走ります。東名阪道を経由したあと、三重県の名張市(奈良県との県境にある町)の「赤目四十八滝」に到着しました。
■「赤目」の由来
この赤目四十八滝は、関東にお住まいの方にはあまり馴染みがないようですが、室生火山群の活動によってできた滝川の峡谷沿いに点在するおびただしい滝群の総称で「日本の滝百選」に選出されています。赤目という名前はその昔、役(えん)の行者が滝で修行をしていると、不動明王が赤い目の牛に乗って現れたという伝承に因っています。
四十八は滝の数ではなく、阿弥陀の四十八願になぞらえたものともいわれています。森林を背景にして、大小さまざまな滝が連続する約四キロのほとりに、うねうねと回遊路が延びています。ここは「日本の森林浴百選」にも数えられている名所でもあり、ハイキング客が絶えません。澄んだ清流のささやきと、激しい瀑布のとどろきが山々に響きわたるさまは、一見の価値があります。
■不倫ではありません
「もしよかったご案内していただけますか」と三日間同行するバスガイドさんに誘われて、約一時間ほど一緒に散策しました。「ウチの会社は神奈川が拠点でしょ、だから関西方面のツアーは少ないんです。森本さんのおかげで、本当に貴重な勉強ができるわ」歌う運転手Kさんの車中ライブ(?)では司会進行役を務めたり、デュエットのお相手をしたりの、大変ノリのよいガイドさんが、こんなに勉強熱心だったとは意外です。お世辞(特に若い女性の)に弱い私はつい「喜んでご案内します」と言ってしまいました。いろいろな話をしながらの散策中に、わがひろたりあん旅倶楽部のお客様たちとすれ違い、「あら森本さんたち、とてもお似合いのカップルね」と冷やかされました。すかさずガイドさんは「そうなのよ、私たちは愛を語りあっていたのよ」そんなノリのよい彼女も、実は人妻です。「じゃあ私も誰かと愛を語ろうかしら」ツアー中に不倫がはびこっては困りますが…。
■「のし」つきで贈ります
出発の時間がきましたので、赤目四十八滝での愛の語らいは一旦終了させ、宿泊先のホテルへ向かいました。バス車中はふとしたことで「ひろたりあん通信」の同行記の話題で盛りあがりました。
皆さんの一番関心事は「森本さんのイヤミな上司って一体誰?」です。「本当に上司がいるの?」とか「実はあの上司って編集キャップの『く』さんじゃないの?」「あの上司は架空の人物よ。だって上司の人だったら何回か添乗にきてもおかしくないわ」等々、いろいろな意見が飛び交って車内はヒートアップ。私が「私の上司にそんなに興味があるなら、今年のお歳暮として抽選で一名様に『のし』でもつけてお贈りしましょうか?」と言ったら大爆笑。「一番そっくりな似顔絵を描いていただいた方には賞品でも差しあげましょうか?」人様の前に出しては、ひろたりあん旅倶楽部のイメージダウンになりかねませんので、霞の中に閉じ込めておきます、と私が添乗中に発言したことは上司には内緒です。さもないと「赤目」の牛にまたがって、彼が出現しないとも限りませんから…。
日が暮れる直前に、奈良県橿原市内のホテルに到着しました。朝出発が早かったので早めのチェックイン、そして夕食の時間を迎え、お客様同士の話は尽きない様子でした。
■上司の顔をめがけて
二日目はゆっくりめの出発です。最初に向かったのが高雄。京都らしい昼食「湯豆腐会席」のあとは出発時間まで自由散策です。高雄は洛西きっての紅葉の名所、三尾とよばれて古来天下の絶景とされています。この時期燃えるような紅葉は、山峡だけにひときわ鮮やかです。その山腹に神護寺、西明寺、高山寺の名刹があり、どれも自然の懐深く歴史の年輪を淡く光らせているように感じました。
私はお客様数名とバスガイドさんとで一緒に神護寺を参拝しました。神護寺といえば「かわらけ投げ」、眼下に広がる清滝川の渓谷・錦雲渓に向かって、円盤型の素焼きの土器(かわらけ)を投げれば、厄払いができるといわれています。ことあるたびに「厄払いしてこい!」と私に怒鳴る上司の(うるさい)忠告に従い、渓谷に向かって投げたところ、美しい弧を描いて遠くまで飛んでいきました。お客様やガイドさんは「あら〜森本さん意外とお上手ね」意外は余計です。イヤミな上司の憎たらしい顔をイメージして、それをめがけて投げたのですから当然です。かわらけ投げはストレス解消の効果もあるようです。もちろん、旅の安全への願いを込めたのはいうまでもありません。
余談ですが、紅葉の高雄も素晴らしいのですが、夏の高雄もお薦めです。ホタル観賞や、周辺には料亭も多く、川の流れの上に張った桟敷で食べる川床料理は清涼感満点です。
■京料理に舌鼓
次にバスは、京都市内や保津峡を一望できる嵐山高雄パークウェイを通って、嵐山、嵯峨野へ向かいました。今回の旅行で、紅葉が最高に見頃だったのはここ嵐山のようでした。静寂な高雄とうって変わって、嵐山は、十二月になっても観光客や修学旅行生の賑わいは衰えていません。嵐山はまさに京都観光のメッカです。
二日目の宿泊は京都、夕食は自由食です。「せっかく京都に来たんだから、美味しい京料理が食べたいわ」との要望に、思いついたのが平安神宮に近い京料理の老舗です。このお店は、「京料理は高い」という通り相場を破壊してしまった名店です。美味しい料理とアットホームな雰囲気の中、高らかな笑い声は私がいるお店の控え室まで届いていました。
■不倫じゃないですよね
三日目は東山付近中心のご案内。清水寺付近でバスを停め、清水寺へ向かう人、清水坂でお土産を買う人など、それぞれきままに過ごしました。「私たちは別のところへ行きましょう」ガイドさんと向かったのは、豊臣秀吉の冥福を祈る北政所「ねね」ゆかりの高台寺です。「徳川家康はねねに特別な思い入れがあったので、寺観は壮麗をきわめたのです」ねねと家康は不倫関係だった?なんて下卑た想像に思いを馳せるバカな私でしたが、小堀遠州作と伝えられる庭園と紅葉は本当に見事でした。
高台寺を出ようすると、どこかで見た年配の男性と女性が腕を組んで仲良く歩いています。「あなたたちに感化されてすっかり仲良くなってしまったわ」それはとても結構なことですが、不倫じゃないですよね。
お茶所、食事処が点在する高台寺から三年坂、二年坂、石塀小路にかけては、人影も少ない情緒ある石畳で、清水坂の喧騒が嘘のようです。その清水坂をあとにして、次は禅林寺での昼食と南禅寺をご案内しました。南禅寺といえば高さ二十二mの三門で、石川五右衛門が「絶景かな、絶景かな」の名セリフで有名です。「春の眺めは値千金とは小さなたとえ、この五右衛門が目からは値万両」と続きますが、秋の眺めもなかなか「高価格」でしたよ、私たちはゆっくり絶景を楽しんだというわけです。
■愛のあふれる(?)三日間
バスは帰路に就きました。えっ、今回、ひろたりあん旅倶楽部専属運転手Kさんの出番はないの?ご心配なく、帰路のバス車中はKさんの晴れ舞台と決まっております。役割分担とチームワークは万全、司会進行はガイドさん、運転はKさんを心から師匠と崇める交代要員カネゴン、そしてマネージャーは森本という立派な組織図ができあがるのです。「敏腕マネージャーの手で、カネゴンのお嫁さんも仲介してあげてよ」お応えしましょう、カネゴンは年中無休で彼女を募集中です。そんなカネゴンに愛の手を。抜群のチームワークで車中はとことん盛り上がり、最後にKさんとガイドさんがデュエットで「三年目の浮気」を歌い、盛り上がりは最高潮に達しました。Kさんが「人妻に浮気するななんて言われたくないよな」すかさずガイドさん「妻子持ちに浮気をするなって言うのは複雑な気持ちだわ」この掛け合いに車内は大爆笑。今回は愛が満ち溢れる三日間でした。
(森 本)
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