■違うところを誉めてよ!
今回は海外旅行です。「おまえが行きたいから企画するんじゃないのか?」例によってイヤミな上司の鋭いツッコミに、一瞬声を詰まらす私ですが「自分が魅力を感じるようなプランじゃないと、お客様に勧めることなんてできないじゃないですか」「言い訳のうまさだけは誉めてやろう」「はぁ…」もっと他のことを誉めてほしいものです。
というわけで、ひろたりあん旅倶楽部の第五回目の海外旅行の企画をあれこれ考えてみました。ありふれた旅行ではなく、お客様が「あっ!」と驚くような斬新なツアーはないものか…、情報収集したところ、「あっ、これ行ってみたいなあ、もとい、お客様に行って欲しいなあ」と思ったのが海外クルーズでした。「クルーズなんてヒマを持て余しているお金持ちの道楽じゃない」とか「何日も船に乗っていたらヒマでしょうがないでしょ」クルーズ経験のない人からよく受ける質問ですが、一度体験するとそれが大いなる誤解だということがわかります。昨年クルーズ旅行をしたアメリカ人は約七百万人、それに比べ日本人はわずか四万人とまだまだ浸透していないのが現状ですが、ひろたりあん旅倶楽部が打破できたらとの思いで設定したコースが「豪華客船スーパースター・レオ号で行く香港・ベトナム・海南島クルーズ(入門編)」なのです。
■西武ファンなら大喜び?
今回参加されるお客様もほとんどの方がクルーズ「初体験」なので、大きな期待と少々の不安を胸に当日を迎えられました。各配車場所よりお客様をご案内し成田空港から一路香港へ、夕方出発の便だったのでこの日は香港国際空港からホテルへ直行し、翌日のクルーズ乗船に備えました。
翌日はまず香港の市内観光。香港観光の定番といえば香港島にあるビクトリアピークの周遊です。太平山頂から見る九龍半島のパノラマ、林立するビル群は、エネルギッシュな香港の象徴です。その後レパルス・ベイをまわり、これも定番、飲茶の昼食後、バスでスーパースター・レオ号(西武ライオンズファンが歓喜しそうな名前です)が停泊するオーシャンターミナルへ向かいました。
■戦艦大和より大きい?
港に着くや、停泊している船をご覧になったお客様から歓声の渦。「すごい、これが船なの?」中には「戦艦大和よりも大きい」との声もありましたが、戦艦大和を見たことがないので分かりません。ただこのスーパースター・レオ号はパナマ船籍で七万六千八百総トン、アジア太平洋地域の客船では最大級を誇ります。
海外でクルーズが爆発的な人気を呼んでいる最大の理由は、特別な旅行だというイメージを作らなかったことです。クルーズは寄港地までの移動、宿泊、食事、エンターテイメント、バーなどを内包した総合レジャー施設です。しかもバーでの酒代やエステ、マッサージ代金以外は全て料金に含まれているため、コスト・パフォーマンスに優れていることがクルーズの一番の魅力です。私、添乗員からみても治安が良さが何よりもありがたい。一度キャビンに荷物を運びこめばクルーズ客船自体が移動するホテルと化し、下船するまで荷造りする必要もなく、また船内は乗客だけのスペースなので、誰もが出入りできるホテルよりも安全なのです。
■「私、絶対迷子になる!」
出国審査を終えてから乗船し、吹き抜けのロビーでまずはウエルカムドリンクで一息ついていただきました。「大きなホテルの中にいるみたいでとても船の中とは思えないわ」と高い吹き抜けを見上げるお客様、この華やかさがこれから始まる非日常の世界を予感させてくれます。今回皆様にご案内したお部屋はプライベートバルコニー付のお部屋で、とても開放感に満ち溢れ「すごい」「すごい」の連発。お部屋でしばしくつろいだ後、日本人クルーによる船内の説明会とシップツアー(船内見学)を行ないました。シップツアーは駆け足でも一時間は要し、この船の大きさを改めて実感しました。私が「だいたいどこに何があるかわかりましたか?」と尋ねると「あまりにも広すぎてどこに何があるのかさっぱりわからないわ」「私絶対に迷子になるわ」おそらく、船内全体を把握する頃にはもう下船ってことになりそうです。
■七万六千八百総トンの貫禄
お待ちかねのクルーズでの最初の夕食。せっかくだから雰囲気のいいレストランにご案内しようと思い、フランス料理店「マキシム」でのフルコースディナーをご用意しました。店の入口でお待ちしていると、皆様見違えるほどおしゃれを楽しんでおりました。今日はガラディナーではないのにとは思いましたが、決める時は決める、さすが旅慣れているなと感心しました。
優雅なフランス料理に舌鼓を打ち、また楽しい会話に花が咲きました。ただ皆様、青葉区都筑区の方ばかりですから、話題は「中川駅そばのどこどこのパン屋さんがおいしい」とか「藤が丘のビックヨーサンの野菜は激安だ」とか、ずいぶんとローカルなものが多く、その点は優雅とは言いがたいですが、地元の話でこんなに盛り上がるのもアットホームな「ひろたりあん旅倶楽部」ならではのことです。私たちが華やかな雰囲気の中にも、笑い声が絶えないひとときを過ごしている頃、実は船の外は南国特有のスコールでかなり荒れていたのですが、少々の嵐ではびくともしないのは、さすが七万六千八百総トンの貫禄でしょうか。
■軽いのは頭だけ?
船上での一夜が明け、海南島到着まで午前中はフリータイム。船内で皆さん思い思いに楽しんでいました。私がデッキを歩いていると数名のお客様とばったり「これからこのデッキでダンス教室があるの、森本さんも一緒に踊りましょ」日頃なら「多忙」を言い訳に、自分の運動不足による「真実」から目をそらす私ですが、せっかくの機会だからということで軽快な(?)ステップをお客様に披露したわけです。こんなこと書いたら上司は「何が軽快だ、おまえの場合、軽いのは頭だけだ」と言われかねません。遥か彼方にいるイヤミな上司は放っておいて、船は最初の寄港地、海南島・三亜に到着しました。
■シルバー専門のホスト?
我々が乗船している「スーパースター・レオ」は大きすぎて、三亜の港に着岸できないのでテンダーボートでの上陸です。
海南島・三亜は常夏の島、「東洋のハワイ」と言われるほど人気リゾートアイランドです。港で待機しているバスに乗り込み、浜辺に巨岩が広がる天涯海角(地の果て)のビーチへご案内しました。バスを降りると「うわーなんだこの暑さは」雨季にもかかわらず天気は晴天。それはいいのですが、気温三十五度はあろうかと思うような、うだるような暑さでした。
「この島は天然のサウナだから森本さんにとって最高の環境よね。しばらく海南島にいたらダイエットができてスリムになるわよ」とお客様のありがたいお言葉、上司といい、どうして私の周りにはイヤミな人が多いんでしょうか。「私がしばらくこの島にいたらこのツアーがどうなるか、保証しませんよ。それに私がスリムになったら、添乗員をやめてホストクラブで仕事しますよ」「あらそれも困るわね。でもいまさらホストクラブなんて無理よ、もういい歳なんだから。あっ、高齢化社会だから、シルバー世代専門のホストだったらなんとかなるかもよ」「…」 私と親子ほど年齢の離れている方に「おじさん」呼ばわりされるなんて少々(相当?)心外ではありますが、冗談の言い合いで海南島の暑さを吹き飛ばすのも一つの方法です。
■ダイエット効果のある市場
次に三亜市内を散策しました。現地ガイドの韓さんに市場に案内してもらいました。市場の中は昼にもかかわらず暗く、なぜか異臭が漂い、お客様もあまりの臭さに閉口した様子です。私が韓さんにこの異臭は何かと聞くと、実は市場の二階が家畜の堵殺場なんだそうです。もちろんそんなことはお客様には言えません。「中国人は空を飛んでいるものは飛行機以外、四つ足のものはテーブル以外のものは食べるよ」とどこかで聞いたようなジョークを交えながら皆さんを案内するのですが、確かに食材は新鮮でしょうが、異臭と家畜や鳥類のギャーギャーという叫び声に、食欲が一気に萎えてしまった私は気が弱いのでしょうか?ここにいたら確実にダイエットはできそうですが…。
バスは市場を後にして、三亜市内を一望する「鹿回頭公園」に到着。南シナ海の沖に浮かぶスーパースター・レオ号の偉容が見え、あらためてその大きさを実感したのです。
■パワフルなベトナム美女たち
日暮れ時には船に戻り、この日の夕食は、各自自由食。大半のお客様は日本食が恋しくなったのか、和食レストランにいらっしゃいましたが、私は屋上のプールデッキでのバーベキューパーティーです。外国人客に混じっての、陽気な音楽の中での洋上バーベキューは極上でした。
夜が明けて、朝7時にベトナム・ダナン港に着岸し、ダナン市内の観光です。ベトナム戦争の爪痕を残すこの街は、国内最大の米空軍基地でした。私たちは、当時の面影を残す廃車となった戦車や大砲などが展示されているホーチミン博物館で平和について考え、チャンバの遺跡から出土した石像など、チャム芸術の集大成ともいえるチャム博物館を廻り、ダナン市内最大の市場へ歩を進めました。
ベトナムの暑さも海南島とほとんど変わらず、あるお客様から暑さしのぎに扇子を頼まれました。私が現地の売り子から扇子を買うと、いつのまにか十人位のベトナム人女性にとり囲まれました。「ベトナム女性は男を見る目があるなあ」なんて、にやけている場合ではなかったようです。「私からも買って」と扇子を片手に攻撃してくる勇敢なべトコンの子孫たちは、「いらないからあっちいけ」と言っても私を放さず、なかにはどさくさ紛れにポケットの現金を盗もうとする始末。命からがら(?)逃げ出してバスに戻ると、「あ〜ら森本さん、若い女性にもてるわね」と冷やかされました。私もすかさず「眼が醒めるような美人は誰一人いませんでした。それに比べて皆様は洗練された、あふれんばかりの美貌の持主ばかりで、私はあふれんばかりの脂肪の持主」と私の洗練された(?)ギャグは異国の地でも喝采を浴びました(かな?)。でもすみません、ウソをつきました。アオザイの似合うベトナムの女性たちは、みなスタイルが良く、美人でした。
■ドラえもんの七五三?
お昼過ぎに船に戻り、香港に向けて出港しました。今宵はクルーズ最大のイベントであるガラ・ディナー(フォーマルディナー)です。お客様もセミ・フォーマルにドレスアップして、グランドセントラム(吹き抜けのロビー)に集合。「ディナーの時はタキシードや派手なドレスを用意しなくてはいけないの?」スーパースター・レオ号は熱帯地域を航行するので、必ずしも正装を強制していません。第一私が正装したら「欽ちゃんの仮装大賞〜ドラえもんの七五三っ」にでもなりかねないので無難にスーツ姿です。
■「ケーキ・アラスカ」に拍手喝采
船長との記念撮影のあと、メインダイニングへ向かい、華やかにガラ・ディナーの開宴。
フルコースディナーを堪能し、デザートが始まった頃、突然ダイニングの照明が消えました。するとローソクならぬ花火が立てられたホワイトケーキを持った、数十名のウェイターが場内に登場、花火(線香花火をちょっとだけ派手にしたような感じ)のチカチカとした灯りが、(ケーキだけに)景気のいい音とともに、場内を幻想的に包み込みます。実はこれ「ケーキ・アラスカ」という、このクルーズのガラ・ディナーにはお決まりのイベントで、この華麗な趣向に、場内に拍手の嵐がまき起こりました。
■「無欲の勝利です」
ガラ・ディナーも終わり、お客様数名から「カジノ」のお誘いをいただきました。ギャンブル運のまったくない私にとって、本当はお断りしたいところですが、せっかくの機会だし百ドルまで損してもいいやと決め、ルーレットやスロットマシーンに興じました。あっという間にスリリングな三時間が過ぎ、気がつくと百二十ドルも儲けていました。「馬はロマンだ!」と言いつつ、欲の皮を突っ張らせては営々と不毛な投資を続ける上司を前に「無欲の勝利です」と答えてみましょうか。もっとも、これで今回の旅でのツキを使い果たしたのではないか、不安になる貧乏性の私です。
「カジノ」のあとは足裏マッサージ、タイ式マッサージ、スウェーデン式マッサージとマッサージのフルコース(軍資金はあります)で仕事の英気を養いました。翌日の香港到着で、楽しかったクルーズの旅も終了です。
まだまだたくさん伝えたいことがあるのですが、紙面が尽きてしまいました。同行記を読む側でなく、次回企画するひろたりあん旅倶楽部のクルーズ旅行に参加していただく側になっていただければ、私の伝えたかったことがきっとわかっていただけると思います(私もかなり宣伝が上手になりました)。
(森 本)
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