■単純な私です
何なんでしょうね、この暑さは。行楽シーズンとはいえ、この熱帯化した日本の、どこへ行けば快適な旅行を楽しめるのか、うだった頭で考えあぐねていたところ、あるお客様が「今年こそ上高地に行きたいわ」確かに、上高地なら避暑には最適です。でもね、私は特に天候において、上高地と相性が非常に悪いんです。一昨年は催行日直前の土砂崩れで釜トンネルが通行止め、急遽行き先を変更したところ、大雨にあい、バス乗り放題の旅となってしまいましたし、去年は去年で大粒のヒョウに襲われて散々だったので、「今年はどんなアクシデントがあるのかな?保証できませんよ」と言うと、すかさずそのお客様「あら私が参加した日は、いつも晴れてるわ。私がいれば大丈夫だから企画してね」お客様になだめられてコースを決めてしまうなんて、なんと単純な私でしょうか。
■大統領じゃない、首相だ
当日はバス二台でご案内しました。第一配車でバスに乗り込むと、「よう、森本ちゃん元気?」この運転手Kさんは今をさかのぼること約十数年くらい前に、一世を風靡した人気バンドCのメンバーの一人で、いまだにサインや記念撮影を求めるほどの超人気者です。「この頃、オレのサインの株が赤丸急上昇中なんだよ」最近お客様から「小泉首相に似ている」とよく言われるんだそうです。高支持率の小泉首相ですが、K運転手のお客様からの支持率も負けてないようです。「歌って、踊れて、モノマネができる運転手さんなんて貴重な存在ですよ、よっ大統領!」「大統領じゃないっ、首相だよ!」「…」
陽気なKさんのハンドルさばきで、バスは中央高速をひた走り、一路上高地へ。松本ICを過ぎて、上高地の入り口である釜トンネルに入ったら「あらパンクかしら?」すかさず運転手Kさんは「お客さん、このトンネルは狭くて危険だからバスのエアサスペンションを下げたんだよ。こんなところでパンクなんて冗談じゃない」もちろん私も「冗談じゃない、こんなところでまたハプニングが起こったら、世間の白い目が怖い」と思いました。三度目の正直で絶景の上高地が拝められるのか、それとも二度あることは三度あるの例えどおり、またアクシデントが待ち受けているのか、ドキドキしながら釜トンネルを抜けると天気は快晴。最高の上高地を拝むことができました。
■上高地専任?
「これまでで最高の天気ですね」と言ったのが「ミスター上高地」と呼ばれているもうひとりの運転手さん。彼の名字は読んでそのまま「山路」さんで、バス会社から名字に相応しいからとの理由で上高地専任を命じられ、今年だけでも五月から十往復は上高地を訪れているそうです。「今年はあと二十回以上行く予定です」とのことで、そんな心強い援軍を得てのこの晴天だったのでしょうか。
四時間の上高地散策を楽しんでいただいたあと宿泊先の飛騨高山温泉へ向かいました。お客様の夕食が終わり、ほっと一息ついてKさんをはじめ、運転手さん、ガイドさんとささやかながら慰労会を兼ねた夕食をとりました。いろいろな話題が飛び交った後、ふとKさんが、「ひろたりあん旅行はいいね。オレ気に入ったよ」とうれしい発言。そして私がいつも持っている旗にサインをしてくれました。長距離の運転にもかかわらず、疲れを見せずに楽しく食事に付き合ってくれるKさんたちも、ひろたりあん旅倶楽部の愉快な仲間です。
■指名料は取るんですか?
翌日は高山市内で朝市や古い町並みの散策を楽しみました。高山を出てから、平湯温泉近くで雨が強く降り出し、新穂高ロープウェイからの絶景はおあずけを食らいました。これだけがなんとも心残りです。
帰路の途中、車内で「次回は東北三大祭り、青森ねぶた、秋田竿灯、仙台七夕です」と紹介すると、Kさんが「森本ちゃん、そのコース行きたいからオレを指名して」キャバレーのおねえさんじゃないんだからってば…「それで指名料はいくらですか?」
それはさておき「ひろたりあん旅倶楽部専属運転手(?)」がここに誕生したわけです。えっ?Kさんは何というバンドに所属していたのかって?知りたい方はひろたりあんバス旅行に、色紙を持参の上、ご参加ください。
(森 本)
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