■ひろたりあん通信旅行版
10月5日〜10月7日
   「『飛鳥』横浜大阪ワンナイトクルーズと京都フリータイム」
■いよいよ芸能界デビュー?
 ある日、私宛に一通のファックスが届きました。発信元は、大阪の「吉本興業」さん。「横浜にへんてこな添乗員がいるから、旅行漫談でもやらすか…」なんて依頼かな?いよいよ芸能界デビュー?なんて話があるわけはなく、吉本さんは、そこまで切羽詰ってはいません(少し残念)。用件は、「集客頼んまっせー」。来月、大阪・京都・奈良を廻るツアーで、吉本新喜劇を組み入れているため、私にゲキを飛ばしたものと思われます。さすが「吉本」さんは商売熱心ですね。

■「愛のクルーズ宣教師」
 それはともかく、先日郵船クルーズさんのセールスの方とお会いしたところ「秋といったら京都ですよ、飛鳥で京都へ行きませんか?」という提案を受けました。「あれおかしいなあ、京都に港なんかあったっけ?」淀川や鴨川は豪華客船「飛鳥」が遡れるほどの大河だったっけ…?そんなはずはありません。「大阪で船を降りてバスに乗り換えたら、一時間で着きます」「帰りも飛鳥で?」「いえ、そのあとは九州へ向かいます。 写真 横浜への帰りの手配は、有能添乗員の森本さんにお任せするのが一番安心です」「…」要するに、日本一周する飛鳥に便乗するという旅行です。おだて上手の相手の術中にまんまとはまった、おだてられ上手な私ですが、待てよ、案外イケるかも…とコーディネートしたのが「『飛鳥』横浜大阪ワンナイトクルーズと京都フリータイム」です。

 日本でなかなか浸透しないクルーズ旅行の魅力を、皆さまに広めることを使命と考える、自称「愛のクルーズ宣教師」の私ですが、今回のワンナイトクルーズは横浜を出港し、東京湾から太平洋を航行し、紀伊水道を通過して大阪港まで、新幹線「のぞみ号」なら二時間十五分で行ける距離を二十三時間かけていく「優雅」(物好き?)なコースです。食事は「駅弁」ではなく、美味しいフランス料理のフルコース、ブロードウェイさながらのショーを楽しみ、ゆっくりデッキで潮風に吹かれてのんびり読書…時間に追われる現代人が見失いがちな、心のゆとりを取り戻す旅、週末の三日間に設定した企画です。

■「飛鳥」は「演出」上手
 当日は天候に恵まれ、十五時に横浜港大桟橋を出港。自称「愛のクルーズ宣教師」は、クルーの皆さんとも顔なじみです。「非日常」を究極にまで脚色する「飛鳥」は、常に斬新な企画でゲストを楽しませてくれますが、最近では「ミステリークルーズ」という旅を催行したそうです。これは浅見光彦シリーズで人気の推理作家、内田康夫さんが「飛鳥」を舞台に「貴賓室の怪人」という作品を出版されたのを受けて、ご本人とテレビや映画で浅見役を演じている俳優の榎本孝明さんを招いて、「優雅な船旅」をクルーや乗客を巻き込んだミステリー劇に仕立てるという芸の細かいもの。

写真 「それは面白そうですね」すると顔見知りのクルーの方が「森本さんの旅行記も社内では有名ですよ。『飛鳥』のことを違った視点で面白おかしく書く人はいませんよ」おだてられ上手な私はすぐ調子に乗って「内田さんの小説より面白いですかね?」するとクルーの顔がにわかに強張り「うーん、それはちょっと…ねぇ」と歯切れが悪くなります。「じゃあ、吉本新喜劇と比べたら…?」「うーん…」しばらくうなっていましたが、こそこそっと持ち場に戻っていきました。「旅行記が面白い」という発言は、私の気分をよくさせるための「演出」だったようです。

 浅見探偵の出番となるような劇的な事件もなく「飛鳥」は静かに大阪港・天保山に到着。下船後、一行は京都市内のホテルへ直行。今回は「京都フリータイム」なので、チェックインのあとは翌日の新幹線の出発時間まで自由行動です。それまでは私の出番はありません。祇園の街に繰り出した方や有名料亭に行かれた方、秋の京都観光を満喫された方、中にはホテルでのんびりされた方など様々ですが、人の数だけ京都の楽しみ方があるのだなと実感しました。

■浅見光彦探偵に挑戦状!
 私はといえば、来月の旅行に備え、視察と商談を兼ねて大阪へとんぼ返り。まず向かったのが吉本新喜劇の聖地「なんば花月」です。ただ誤解を招くといけないので先に弁明しますが、私が新喜劇を観賞したのはあくまでも仕事の一環です。決して息抜きではなく、業務に対する忠実さのあらわれです。涙が出るほど大笑いしたのは、吉本の芸人さんの「芸」への忠実さに対する「敬意の表明」です。確かに私の旅行記より数十倍も面白い。

 劇場から出たところで携帯電話が鳴りました。相手はもちろんわがイヤミな上司で「どうだ、京都は?ちゃんとお客様のお世話をしているか?」「もちろんですとも、責務はきちんと全うしております!」上司は京都観光が各人フリーということを知りません。どうです、この私の完璧なアリバイ工作は!浅見名探偵、あなたなら崩せますか?
                                   (森 本)
▼2002・10・2へ

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