■まさに「冬の季節」
二〇〇二年もまもなくおしまい。有終の美を飾るべく、魅力的な企画はないかと頭をひねりましたが、この時期は旅行のシーズンオフ、旅行業界にとって、まさに「冬の季節」です。どこの旅行会社も集客に頭を痛めるもので、わがひろたりあん旅倶楽部も例外ではありません。年末の買出しツアーはまだ早すぎるし、だからといって初詣は来年にならないと企画できない(当然ですね)し…、でも簡単にメゲル私ではありません。この一・二年、個人的に力を入れているクルーズ旅行、特に日本最大級の客船「飛鳥」での、横浜ワンナイトクルーズは、毎回好評をいただいてきました。十二月といえばもちろんクリスマス、それにクルーズを組み合わせれば、おしゃれな「横浜クリスマスワンナイトクルーズ」ができあがるというわけです。
当日の夕方、新しくオープンした横浜港大桟橋の客船ターミナルに到着。お申込みされたお客様は熟年の方のみならず、二〜四十代のご夫婦やカップル、中にはお孫さんを含めた三世代で参加されたご家族もいらっしゃいました。また週末ということもあって会社の社員旅行(忘年会?)、趣味のサークル旅行など、多種多様の方々が、海上での魅惑的なクリスマスを夢想しながら「思いっきり楽しむぞーっ」という感じで、乗船前から盛り上がっています。
■開き直る私
乗船手続後、お客様を船内へご案内。飛鳥での最初のイベントが出港前に7デッキで行われる「セイル・アウェイ・パーティ」です。お天気はあいにくの雨模様ですが「さあ、皆さん雨や寒さに負けず精一杯盛り上げましょう」と若い女性クルーが私たちを挑発します。陽気な音楽が流れる中、歌や踊りでドラマチックな出港の時刻を待つのです。本来なら、見送りの人たちに紙テープが投げられるのですが、残念ながら雨天の場合は中止です。それでも見知らぬ乗客同士が手をつないで踊ったり、肩を組んで輪を作ったりと、デッキの熱気が最高温度に達した頃、銅鑼が鳴らされ、飛鳥は定刻十七時に静かに離岸しました。
横浜の夜景が遠ざかる頃、夕食になります。メインダイニングルームでメニューを開くと、私に対して嫌がらせとも思える因縁の「体重が少し気になる方のメニュー」の文字が…。「ほら、森本さん向けのメニューがあったわよ」あたかもお約束のように、隣席のお客様が私に話しかけます。「え?私にピッタリのメニュー?『フォアグラのソテー・トリュフソース・キャビア添え・ヴェルサイユ風』なんてのがありますか?」そうとぼける私に「何言ってんのよ、ほら、これよ」とご丁寧に指さしてくださいました。「ああ、これは体重が『少し』気になる方のメニューだから私には無関係ですね。体重が『かなり』または『切実に』気になる方へのメニューだったら選びます」思わず開き直ってしまう私でした。
■ブレーカーが落ちた?
クリスマスムード満点の食事も済み、そろそろデザートかなと思っていたら、突然照明が消えました。「えっ、ブレーカーでも落ちたのか!」なんて一瞬考えてしまう私は、なんて庶民的な人間なのでしょうか。もちろんそれは大きな誤解で、飛鳥の小粋な演出です。今夜のディナーのクライマックス、「ベイクド・アラスカ」というイベントなのです。薄闇の中、チカチカきらめく花火が立てられたケーキを、給仕たちが持ってダイニングを歩き回るもので、外国船ではよく見かけます。飛鳥ではクリスマスクルーズ恒例のイベントとなっていて、船上の降誕祭に花を添えてくれるのです。
■子は親に似る?
夕食後、お客様たちはミュージカルなど、思い思いのショーを楽しみます。私は「仕事の一貫」として今回もカジノへ直行。「おい、それは仕事なのか」とイヤミな上司が水を注しそうですが、仕事上外国船に乗る機会がある添乗員が、ルールくらい知っておかないとお客様に失礼じゃないですか。「馬はロマンだ!」と言いつつも、毎回不毛な投資に余念のない上司に言われる筋合いはありません。同行のお客様とルーレットにスロットマシーン、ブラックジャックとカジノ「研修」三昧。結果からいうと、今回もツキをお客様に吸い取られたかのように十分で全財産を失い、かたやお客様方は勝ちまくっていました。親の性格の悪いところほど子どもが似てしまう傾向があるそうですが、このままでは私も上司に似て「カジノは仕事だ!」と言いつつも、毎回不毛な投資を続けることになりそうな予感が…。
約四時間、カジノに居座り続けた私は、結局三万円も損をしてしまいました、あ〜あ。イエス様をないがしろにして、ギャンブルにうつつを抜かす私のクリスマスは、「苦しみマス」となりました(失礼)。 それにしても、身銭を切らないと「勉強」は身につかないといいますが、立派な添乗員になるためにあといくら(不毛な)投資をすればいいのでしょうか。立派な添乗員への道は、果てしなく遠いのです。
(森 本)
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