■あまりおめでたくない?
新年あけましておめでとうございます。と言っても、本当はあんまりおめでたくはないんです。えっ、何のことかって?旅行業界を取り巻く環境の悪化で、思うような集客ができないのです。季節は冬、旅行シーズンも冬(シーズンオフ)。昨年末に苦肉の策で催行した「飛鳥」でのクリスマスワンナイトクルーズが、思いがけず集客も盛りあがり方も最高潮で、何とか有終の美を飾ったものの、それを機に急に風船が萎んだかのような、まさに閑古鳥状態が続いております。あれやこれやで落ちつかないご時世、旅行に行ってる場合ではない雰囲気が日本中に充満しているように思うのは、気のせいでしょうか。
「旅行が催行できなくて、旅行記が書けないんです」慰めてもらおうと思ったわけではありません、イヤミな上司に負けず劣らず悪名高き編集キャップに弱音を吐くと、「こんな時期に魅力的な旅行を企画して催行させるのがお前の仕事だ」とにべもない。「クリスマスクルーズが当たったのは、企画に魅力があったからだろう。脳みそを絞りに絞って企画を出して、旅行記を書け。骨は拾ってやる」イヤミな罵声は続きます。もうここまできたらイヤミを通り越してイジメですね。あーあ私は何か悪霊にでも取りつかれているのだろうか。いっそのことお祓いにでも行こうかな、と思った瞬間、閃いたのが「また今年も初詣をやろう」という安易なツアーの企画。毎年恒例の「成田山、川崎大師初詣」どこの旅行会社も思いつきそうな企画ができあがったのです。「あのなあ、おまえはオレが言った意味がわからなかったのか?」呆れ顔のキャップに「絞るほどの脳みそもないんで…」と開き直る私、結局シーズンオフには勝てませんね。
■あんたが悪霊だ!
旅行当日はお天気に恵まれ、最初の参拝は成田山新勝寺です。お客様に参拝と仲見世の散策を楽しんでいただく間、私はお客様の代理でお護摩のご祈祷をしてまいりました。家内安全、商売繁盛、交通祈願などなど、そしてお客様の大願成就と旅倶楽部の安全を祈願。本堂で大僧正様が護摩供養を行っておられます。メラメラと燃える炎は、様々な煩悩や穢れを焼き尽くすように見え、不浄な私でも救われたような気分になります。「イヤミな上司や編集キャップからの罵声を逃れるご祈祷は何かないかな…、そうだ!『悪霊退散』がいいかも知れない」厄年でもないのに厄祓いをし、一心不乱に不動明王さまの前でひたすら「悪霊退散、悪霊退散、くわばら、くわばら」と唱えていると、本堂の御護摩の前に立ち尽くす不動明王さまのお顔が、イヤミな上司や編集キャップの顔に見えてきたのはどういうわけでしょうか?
■バスガイド退散!
テレビのニュースだと、今年は例年以上に初詣の参拝者が多いそうですが、さぞかしお賽銭は…と思いたいところですが、お札はほとんどなく、せいぜい五百円玉がちらほら、あとは百円、五十円、十円、特に五円玉と一円玉が目立ちました。長引く不況が反映しているのでしょうか。そういえばどのバスガイドさんも口をそろえて「一番ご利益のあるお賽銭は五円ですよ」といってましたね。素直なお客様が多いのか、財布の紐が固いのか、ガイドさんの言ったことを忠実に守っているようです。お坊さんや神主さんが一番「退散」させたいのは、バスガイドさんかもしれません。
■ひつじ年とは言っても…
午後は川崎大師へ向かいました。皆さんはどうやらここでは参拝はさっさと済まして、大師名物の「くず餅」屋さんに向かうのが目的と思われました。TVなどでよく紹介される「せき止め飴」や「とんとん飴」を売るお店の店頭からは、不況に負けじと売り手の声が高らかに響いています。ところがお店を覗くと「とんとんとことん、とんとんとん」とリズミカルな包丁をさばく音は、まさに音だけで、その音をたてている若いお兄さんたちのその姿といったら倦怠感に溢れ、ダルそうにまな板を叩いているのです。『羊頭狗肉』とはまさにこのことで、いくら「ひつじ」年とはいえ、これは許しておけません。「おいおいせめて正月くらいもっとシャキとしろよ」と言いたくなるのは私が「おじさん」になった立派な証拠でしょうか。でも景気が悪い今だからこそ、せめて景気のよい働きぶりで、不況を追っ払って欲しいものです。大師さまの門前で商売させてもらっているという、目に見えないありがたいご利益をないがしろにするなんて、ああもったいない、もったいない…、これも「おじさん」の論理ですか?
夕方にバスツアーは終了。事務所に戻ると不動明王様より怖い閻魔大王の形相の編集キャップが「おい旅行記の原稿はどうした?」「はぁ、これから残業してでも…」厄祓いよりも、「やっかい払い」の方が私にとって効果的だったのかもしれません。
(森 本)
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