■太鼓腹?
今回は今年初のハイキングツアーとして尾瀬をご案内いたしました。長〜い冬がようやく終わり、残雪はあるものの、新緑が美しく、爽やかなハイキングを満喫できる季節が尾瀬にやってきました。
尾瀬ハイキングは毎年初夏と秋に企画しますが、あるお客様からお問合せがあり「おたくの尾瀬ハイキングに参加したお友達から聞いたんだけど、相当きついコースを歩かされたっていうのは本当?」お友達から相当脅されたようです。「私どもがツアーとして企画する尾瀬ハイキングコースは入門的なコースですよ」たぶんお友達は、コースの難易度を大幅に誇張した上で、それでも頑張った私ってすごいでしょ、と自慢したかったのだと思います。「入門コース?それもそうよね、企画して案内する側の森本さんの体型を考えたら、きついコースは組めないわよね」「…」私はお客様の安全と健康管理を第一に考えているだけです。自分の体型的な不自由さを考慮して、企画しているわけでは決してありません。ただ、私が企画したハイキングコースであれば、どんな方でも大丈夫!と太鼓腹…もとい太鼓判を押せますけれど…。
■「私だけではないみたい」
催行日当日、お客様をお迎えした後、関越道をひた走り一路尾瀬へ向かいます。高速道路を走行中、小雨がぱらついてきたものの、尾瀬に近づくにつれ薄日が差してきて、鳩待峠につく頃には申し分のないお天気、いざ尾瀬ハイキングの始まりです。
今回のハイキングは、鳩待峠から尾瀬ヶ原の入口である山の鼻までの片道約三、三キロの道程を往復するコースです。
入山するとすぐに石畳を下ります。「あらここは下り階段だから楽よね」このお客様は肝心なことをお忘れです。「人生楽あれば苦あり」というのは世のならい、行きに下れば帰りには上らなければならないのは当然の帰結であります。実はこの階段は初心者ハイカー泣かせとして有名なのです。日帰りで尾瀬ハイキングを楽しむには、標高一五九一mの鳩待峠を起点とするしかないので、この道程を往復せざるを得ないのですが、尾瀬ヶ原との標高差は二〇〇m近くもあるのです。慣れないハイキングで疲労のピークに達し、最後のラストスパートというところで、この長〜い上りが手ぐすねひいて待ち受けているのです。
しかし、そんなことにまで思いが及ばないお客様の足取りは軽く、ひたすら尾瀬ヶ原に向かって歩を進めていきます。木道から眺める湿原には、コミヤマカタバミ、ニリンソウ、サンリンソウ、ムラサキヤシオツツジなど、尾瀬ならではの自然が息吹いています。
途中、川上川のせせらぎが木道に近づいてきました。「あら、きれいな水ね、休憩がてら川遊びでもしたいわね」その気持ちはよくわかりますが、私は黙って近くの看板を指差しました。そこには「川に立ち入らないでください」と書かれてあります。「こんな衝動にかられるのは、私だけではないみたいね」と納得顔のお客様でした。
■排気ガスから逃れて
一時間足らずで目的地の山の鼻に到着。水芭蕉の花がところどころ咲いて、まさに唱歌「夏の思い出」さながらの風景です。でもほとんどのお客様は、広い尾瀬ヶ原湿原のさらに奥へ向かって歩いていかれました。「ふだんもこんなにたくさん歩くのですか?」と尋ねたら「空気がとってもおいしいからね。排気ガスが充満している都会じゃこんなに歩けないわ」とご満悦。私も排気ガスのようなイヤミな上司の毒舌から逃れられて、すこぶるご満悦です。
■一qにつき…
あっという間に滞在時間が終わり、鳩待峠のバスターミナルへ戻ります。「ラスト一qの長〜い階段は手強いですから、ペース配分に気をつけてお帰りください。集合時間にはくれぐれも遅れないように」とお客様に忠告した、私森本が、たかだか初心者コースの長い階段に根をあげるとは…。私が設定した集合時間に自ら遅れるなんてみっともないと、意地を張って坂を上りましたが、汗だくの状態になるのに時間はかかりませんでした。シャツを脱いで上半身裸で歩きたいという欲望と闘ううちに、ようやく鳩待峠のバスターミナルが見えてきました。汗だくで脱水症状寸前の私を見てお客様はびっくり。「こんなに涼しいのになんで汗びっしょりなの?」そんなわかりきった質問をしないでください。私の体型を見れば一目瞭然じゃないですか、と逆ギレする始末、なんとも情けない私でした。
それでも日頃運動不足の私も、恐らく十q近くは歩いたかな?一qにつき一sくらい体重が減るんだったら、汗だくになった甲斐もあるのですが…。
(森 本)
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