■それは誤解です
「森本さんはシーズンオフでも事務所にいないのね、上司の方から逃げ回っているの?」とよくお客様から言われるのですが、それは誤解です。添乗のないときは、次の企画の準備に充てておりまして、時には現地に下見に出かけることもあるわけです。決して私にイヤミを言うのが生きがいだという上司から、逃げ回っているわけではないことを声を大にして申しあげます。
寒い時期のコースは制約されるので、今回は結局昨年と同様に、伊豆の河津桜と梅、椿のお花見紀行ということでご案内したのですが、なんと約三百五十名の方が応募されたのには驚いたと同時に、責任の重大さにプレッシャーを受けました。昨年、河津桜、下賀茂の桜ともども開花の遅れで、参加者の皆さんに失望を味わわせてしまったイヤな記憶がよみがえってきます。どうも私はプレッシャーに弱い性格らしいのです。
■以心伝心
当日はバス8台ということで2コースに分かれて出発しました。私は1号車に乗り込んだのですが、出発時間の十分前に参加される予定のお客様が「急用で参加できなくなったから代わりを呼んだの。すぐ来るから待っててね」と言ってその場を去ったのです。実はそのとき私は直感で誰が来るかわかっていました。五分後、「森本さま〜(ご丁寧にさま付きで呼んで頂いてます)」、私の直感通り遠くから聞こえる覚えのある声はやはりNさんのものでした。彼女は先月の益子のいちご狩りで、農園のおじさんに「今回はあの夫婦は来ていないようだね」と尋ねられ、「普通百個以上も食べる人はいないからねえ」と、前年のいちご狩りで強烈なインパクトを残したご夫妻の奥様の方です。最近旅行記のネタが乏しく困っているので、たまには参加して旅行を賑わせてくださいと、前回の同行記で呼びかけたばかりだったので、以心伝心とはこのことをいうのでしょうね。Nさん効果で車内は突然明るくなり、彼女の最終兵器である「おばたりあんギャグ」が連続的に炸裂し、今回のバスツアーが珍道中になったのは言うまでもありません(1号車だけですが)。
バスは東名道の沼津インターを降りて、一路修善寺梅林に向かいました。ここでは一月下旬から三月まで梅まつりが開催され、熱海梅園と並び賞される伊豆の梅の名所として人気があります。風が少し冷たかったのですが、梅も見頃の時期を迎えていて、春がすぐ間近まで到来していることを私たちに教えてくれました。
■雨より冷たい…
次にご案内したのは今回のバスツアーのハイライト「河津桜まつり」会場です。今年は例年以上に冷え込む日が多かったそうで、桜の開花が一週間から十日遅れたのですが、それでも昨年と違い七分咲きで、その色濃い桜の繚乱ぶりにバス車中は大歓声、三百五十名の皆様に対する「責任」をようやく果たせてほっと胸をなでおろしたのです。ところが喜びもつかの間、突然雨が降りはじめたのです。急いでバスに戻り、雨がやむのを待ちましたが、出発時間になるまで雨はあがりません。かつて私に「雨男添乗員」の異名があったことをご存知の、三百五十名のお客様の手のひらを返したような冷たい視線は、冬の雨以上に冷たいものでした。
■おかわりは?
河津をあとにして、椿の小室山へ向かう途中、海産物店でのショッピングに立ち寄りました。このお店では海産物をはじめ伊豆の名産が所狭しと並んでいました。ここでもNさんが、ユーモアいっぱいの発言で、周囲を爆笑の渦に引き込んでいました。どうやら焼きたての干物の試食コーナーで、干物ならぬ「おにぎりのおかわりください」。本日の昼食はおにぎり弁当だったのですが、「だってこんなにごはんのおかずが試食できるなら、おにぎりを残しておけばよかったわ」さすがNさん、主婦魂は健在でした。食いしん坊が多いひろたりあん旅倶楽部のメンバー、昼食時に試食がたくさんできるお土産屋に立ち寄るという行程をこれから考えていかなければなりませんかね。でもあまり露骨にやるとお店の人にひんしゅくを買ってしまいそうですが…。
最後の観光地は小室山の椿観賞でしたが、椿はほとんど散ってしまい雨も降り続いていたので、早めに切り上げて帰路に就きました。ところが横浜青葉インターは雨が降った気配が全くなく、自分のプレッシャーへの弱さを再認識した旅でした。
(森 本)
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