■「保険はおりませんよ」
今回の旅行はまさに私の正念場ともいえる企画で、晴れれば絶景の立山・黒部、最近不発の「花紀行」
のリベンジ企画として砺波のチューリップフェアも例年なら最高の見頃という情報だし、汚名返上の絶好の機会です。
バスは東名・名神道をひたすら走りぬけ、北陸道の金津ICを降りて福井県の東尋坊に到着。東尋坊は言わずと知れた景勝地で、風景は絶景ですが、「自殺の名所」というありがたくない異名に恥じない(?)くらい、厳しい荒波と断崖が私たちを待ち受けていました。当日は快晴とは呼べないものの、四月の北陸にしては暖かな陽気でした。東尋坊の現地ガイドの方が「今日の波はかなり穏やかなんですよ。でも東尋坊の高波をなめたらいけないよ。先日穏やかな天気だったのに、突然、高波にさらわれた人がいたんだよ」と言ってる矢先、危険な岩場に近づこうとする方がいて、ガイドさんは即座に大きなメガホンで「危険だよー」と注意するのですが、聞こえない様子。よく見たら我が「ひろたりあんバスツアー」のメンバーで、スワ一大事と思い、私もメガホンを借りて「高波にさらわれても旅行傷害保険の一千万円はおりませんよー」と言った途端、あわてて岩場から離れて集合場所に戻ってきました。やれやれ。
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■「申告は済ませたわよ」
バスは夕方には金沢市内に到着し、ホテルのご案内をしているとき「客室内の冷蔵庫のお飲み物は『自己申告』でフロントにてお支払いください」と私が言いますと、「もう申告しました」と一人の女性の声が。「?」まだホテルにチェックインすらしていないのに…、すると「三月十五日に終わらせましたわ」要するに『確定申告』と『自己申告』のダジャレなのです。この女性は「ひろたりあんバス旅行」のムードメーカー、Nさんでした。よほど前回の日帰りバス旅行でK課長のオヤジギャグに洗脳(?)されたのでしょうか、3日間ともオバタリアンギャグの連発で、旅行を盛り上げてくださいました。長距離のバス旅の疲れを感じさせなかったのは、ドイツ製のバス以上に車内の雰囲気がよかったからに違いありません。
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■「不吉な予感が的中」
二日目は世界遺産白川郷と砺波のチューリップフェアの観光です。この日はあいにく雨模様でしたが、白川郷に到着した途端、雨雲がとれて日がさしてきました。もちろんお客様の日頃の善行の賜物です。皆さん二時間程度の散策と昼食を思い思いに楽しまれていました。「しだれ桜がとてもきれいね」と春の遅い白川郷は桜が満開。「これで身延山のしだれ桜の罪滅ぼしになったわね」と一瞬三月のバスツアーの「身延山のしだれ桜と実相寺のらっぱ水仙」が脳裏に浮かび、砺波のチューリップも、あのニラみたいならっぱ水仙の二の舞にならなければ…と祈る気持ちで砺波のチューリップフェア会場へと向かいました。会場についた途端大雨が降りだし、不吉な予感が…それは見事に的中して、肝心のチューリップは百万本のうちの十分の一しか咲いていません。「例年なら盛りが過ぎた頃ですが…」と職員の方。最近ことごとく「花」に嫌われる私「花より団子なんて、つい言っちゃうからかなあ」と反省していると、一人のお客様から「チューリップが十万本も咲いていてよかったわ」と慰めのお言葉。「十万本のチューリップなんてそうは見られないわよ」旅を楽しむことは人生そのものを楽しむこと、常にプラス思考で物事を考えることで「ゆとり」が生まれることを教わりました。このお言葉をいつも私を罵っている非情な上司に是非聞かせてあげたいくらいです。
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■「ダイエットしなくてもいいの?」
三日目はこの旅行のハイライトと言える「立山・黒部アルペンルート」です。出発の一週間前から「この日は晴れます」とお客様に言いふらしていた私にとって、当日雨が降ろうものなら「うそつきの森本」のレッテルが貼られるのは目に見えてますが、その『賭け』に勝って室堂の「雪の大谷」は雲ひとつない快晴。サングラスを持ってこなかった私は、地中から這い出たもぐらの如く目を開けていられず、こんなところが太陽を敵に回す「雨男」の面目躍如(?)でしょうか。連休中なのでかなり混雑していたのですが「こんなとき森本さんは頼れるわね」という声。「だって森本さんがやせていたら、どこにいるのかわからなくなるもの。だからダイエットしないでね」ですって。一瞬めまいがしたのは、太陽のまぶしさと標高二千三百mの酸素の薄さのせいだけではなかったと思います。
(森本)
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