■卵を二個も産めません
「ひろたりあん旅倶楽部の旅行は平日出発が多いから、仕事がある身だと参加できないじゃない。たまには週末出発のコースも設定してよ」とのご要望が多く、今年から土日祝日の企画を増やし、平日はお仕事で土・日曜日しか休みが取れない方にも気軽にご参加していただきたいと思っているのですが、「相変わらず発想力が乏しいなあ」と呆れられながら、お客様に楽しんでいだだけるコースを設定するのは、たとえば養鶏場の鶏が卵を一日二個産むノルマを与えられる(鶏にとっては地獄のような苦しみだそうです)のと同じくらいプレッシャーがかかるのです。「へえ、おまえはそれを鶏から聞いたのかね。すごいな、鶏と話ができるんだ」「…」「でもな、卵を二個産めなんて言ってないだろう、魅力あるコースを一個だけ産めばいいんだよ」といつものイヤミな上司の助言。口は出してもアイディアは出さないこの上司「何を言っているんだ、あえて言わないだけだ。安易に答えを出したらおまえのためにならないだろ?」「ハイハイ、ごもっともです」
■Fさんに感謝
そんなわけで休日の旅行プランに悩んでいたら、同僚のF氏が「孫たちと潮干狩りに行きたいけどそんな企画作ってくんないか?」企画のヒントは意外なことにあるもので、「潮干狩りだけではインパクトが弱いなあ」とさらに考えたところ、手軽に潮干狩りが楽しめるのが千葉県の内房、千葉といえばマザー牧場があるじゃないか!「学校が休みの第二土曜日に設定すれば、ファミリー向けのバス旅行になるし、これはちょうどいいや」タイトルを「自然とふれあう富津岬潮干狩りとマザー牧場」とし、当日を迎えました。
■甘く見てはいけません
バスは第三京浜、首都高速を抜けて最初に訪れたのが富津岬海岸、ここで潮干狩りです。土曜日ということもあって海岸は人・人・人、こんなにたくさんの人がいたらアサリが取れなくなるかな?と心配しつつ、お客様を海岸へご案内しました。私は潮干狩りをすることもなく、岸でお客様の様子を見届けていたのですが、他のツアーの先客たちは、皆網にずっしりとアサリを採ってくるし、アサリより潮干狩り客の方が多いのではと思うほど混雑しているので、旅倶楽部の皆さんの収穫を非常に心配していました。しかしそれはまったくの杞憂に終わりました。食いしん坊集団として名高いわが旅倶楽部の皆様を甘く見ちゃいけません、海岸からあがってきたお客様たちは皆網が破れんばかりのアサリをぶら下げておりました。なかにはクーラーボックスいっぱいにアサリを採った方もいたほどです。
潮干狩りを終え、そろそろ皆さんおなかが空いてきた頃だろうということで、一路マザー牧場へ向かいました。昼食は牧場ならではのジンギスカンです。屋内での食事でしたが、外は晴天に恵まれ、野外で開放的な雰囲気の中での食事でなかったのか少々残念でした。もっともジンギスカンは好評でしたが…。
昼食のあとは出発までフリータイム。ヨーロッパを思わせるような緑が広がる牧場内で、羊の大行進やこぶたのレースなどのイベントを皆さん、思い思いに楽しんでいらっしゃいました。
■いわれなき噂に閉口
夕方になり、バスは帰路につきました。その途中、東京湾アクアラインの海ほたるで休憩していると「おーい森本さーん」との声が。声をかけてきたのはバス会社の顔馴染みの運転手さん。実はこの運転手さんは約十年位前に世間を一世風靡したバンドのメンバーのひとりで、いまだにサインを求める人も多いほどの人気者です。元アーティストの運転手さんは「あれ?今日はMさんはいないの?」「?」「だってあんたとMさんいつも一緒じゃないか。あんたたち仲がいいって社内でも評判だよ」冗談じゃない、おばたりあんバスガイドのMさんとの恋の噂はたてられたくありません。万一うちの奥さんの耳に入ったらどうなることか…。「それにしてもあんたも大変だね。お客様の世話だけでなくMさんの面倒もみないといけないなんて」ニヤリと笑って彼は去っていきました。美しい海ほたるからの夕日とは裏腹に、私の心は灰色となり、アクアラインの海底トンネルを抜けたら、景色はすでに真っ暗になっていたのでした。
(森 本)
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